診断時:83歳
インタビュー時:85歳(2008年6月)
首都圏在住の医師。70歳前後に前立腺肥大で経膀胱的前立腺切除術を受けた後、80代に入って肺がんと大腸がんが見つかったが切除術を受けて完治。2006年に前立腺がんの診断を受けたときも、高齢のため経過観察か保存療法を勧められたが、がん細胞が残っているのはイヤなので手術を選択。術後は尿漏れの心配からおむつを着用しているが、特に困ったことはなく、今も透析クリニックの院長として多忙な日々を過ごしている。
語りの内容
実は私には、がん細胞が残っているということは非常に嫌で、まあ、病気と仲よく暮らそう、(自分の)患者さんには、腎臓の病気の人によくそういうことを申し上げるんですけども、自分のがんのときに、がん細胞と仲良く暮らすというのは「江戸っ子の俺に性にゃあ合わねえや」と。まあ私は割合にそういう点で偏った人間で、好きじゃないという人とは付き合いたくないと、了見の狭いわけでもないのですが、がん細胞とは付き合いたくないから、とにかくがん細胞は嫌。だから全部取ってほしい。で、「80歳以上の人の生存率は、手術と他の療法との差がないのは、それは昔の統計であって、今は100歳まで生きる人がたくさんおられるんだから、100歳まで生きた人にがんを切らなかった人と切った人との差がなければ、それは私も承服するけど、ただ単に10年生存率が変わらないというんであれば、それはよくわかりませんから、とにかく私は切ってください」と。「それでは、初めての経験だけども、まあ先輩を立てて切りましょう」ということで、取り除いてくださったんです。
インタビュー12
- 生検は確率の問題。世の中に100%という化け物はなく、運と思わなければしょうがない。あきらめるのも人生だ(テキストのみ)
- 医師として自分の患者には病気と仲良くと話していたけれど、自分ががんになったときは、がんと仲良くするのは性に合わなかったので手術を希望した(テキストのみ)
- 腹圧が上がると尿漏れが起こるので、咳とかくしゃみをなるべくしないようにしている
- 高齢者だから水は制限しない方がよいので、特に制限していない。漏れたときの下着や衣服の換えを持ったり、一定の時間でお手洗いに行くようにしている(テキストのみ)
- 忙しいから、そんなにしょっちゅう気にしてはいられないが、電車の中とかで思い出したら、括約筋を鍛える運動をするようにしている
- がんを全部取ってもらいたかった。手術にあたって勃起神経を切ると聞き、前立腺は前が立つ腺だから、取れば勃起しないのは当然でしょうと冗談で返した(テキストのみ)
- 尿漏れは不便だが、勃起しなくなったことを不便に思ったことはない。 女性を美しいと思えるのでプラトニックラブのようだ
- 全摘 術後、継続的にPSAを測っている。症状はなくとも値が高くなったら注意が必要なので、2~3ヶ月に1回測ることは大事だと思う(テキストのみ)
- 若い頃巡り会ったメーテルリンク「青い鳥」という本が、今がんと向き合う心の支えになっているのかもしれない(テキストのみ)