診断時:59歳
インタビュー時:61歳(2012年6月)
男性・首都圏在住。医療関係の仕事に従事。2008年に職域健診で受けた便潜血検査で陽性反応が出たが、自覚症状もなく、仕事の忙しさや面倒との思いから精密検査を受けなかった。しかし、2010年に体調の異変に気づき、貧血検査をしたところ、通常の半分の値しかなかったため、すぐに精密検査を受け、大腸に進行性のがんが見つかった。腹腔鏡手術と抗がん剤治療を受ける。現在は仕事や趣味に多忙な日々を送っている。
プロフィール詳細
医療関係の仕事に就く辻さん(仮名)は、毎年職場の健康診断を受けてきた。2008年に便潜血検査で陽性反応が出たものの、忙しい、面倒、恥ずかしい、がんになるはずがないとの思いから、このときは精密検査を受けなかった。実際、便通異常などの自覚症状は何もなく、おそらくは痔による出血だろうと考えていた。
その後も便潜血検査では陽性反応が出たが、やはり精密検査は受けず、2年余りの間放置していた。だが、2010年の8月、毎年行っている山登りで体調の異常に気づく。いつもは3回の休憩で頂上に着くのが、この年は倍の6回休憩を入れないと登頂できなかった。これはおかしいと思い、帰って早々に貧血検査を行ったところ、成人男性の平均の半分ほどの値しかなかったため、すぐに精密検査の予約を入れた。
その3日後に受けた内視鏡検査で、大腸に腫瘍が見つかってしまう。病変が広範囲に確認されたため、すぐに手術をすることになった。がんができた場所は盲腸近辺で、腹腔鏡手術の対象になるかは微妙だったが、できるだけ早く仕事に復帰したかった辻さんは、医師に無理やりお願いをして腹腔鏡で手術を受けた。
手術はうまくいき、術後の回復も順調だったため、1週間で退院できた。ただ、詳しい検査の結果、がんはステージⅢbまで進行しており、リンパ節などへも転移していたため、抗がん剤治療が行われることになった。既に仕事に復帰していたこともあり、治療は基本的に外来で受けた。抗がん剤治療のやり方は昔に比べて格段に進歩しており、患者のQOLもずいぶんと改善されていることが実感できたが、食欲不振や吐き気、手の神経の痺れ、顔の冷感過敏などさまざまな副作用があり、それについては我慢の連続だった。
最初に便潜血検査で陽性反応が出たときに精密検査を受けておけば、もう少し早期の段階でがんが見つかったのに、という思いはある。ステージⅢbということで、自分の将来についても楽観はしていない。時々眠れなくなることもあるが、とにかく悔いが残らないよう、今できることを全部するという気持ちで、趣味などにもこれまで以上に熱心に取り組んでいる。そうした意味では、前の10年より多少充実はしているようにも感じている。ただ、全体としてみたときに、やはりがん患者への治療後のフォロー体制は不十分であり、国にはがんになった後のアフターケアにも力を入れてほしいと思っている。
がんは自分で防ぐのが難しい病気であり、やはり検診で早期に発見することが重要になるが、大腸がんに関しては、便潜血検査で陽性反応が出ても精密検査を受けない人が多いというのが現状である。そこには、羞恥心や面倒さ、経済的なコストの問題などがあって、解決は難しいのかもしれないが、例えば、身近な人が大腸がんになったと聞けば、少しは自分も気をつけようとなるので、そういう人たちの経験談を聞ける機会を作っていくのが一番いいのではないかと思う。
その後も便潜血検査では陽性反応が出たが、やはり精密検査は受けず、2年余りの間放置していた。だが、2010年の8月、毎年行っている山登りで体調の異常に気づく。いつもは3回の休憩で頂上に着くのが、この年は倍の6回休憩を入れないと登頂できなかった。これはおかしいと思い、帰って早々に貧血検査を行ったところ、成人男性の平均の半分ほどの値しかなかったため、すぐに精密検査の予約を入れた。
その3日後に受けた内視鏡検査で、大腸に腫瘍が見つかってしまう。病変が広範囲に確認されたため、すぐに手術をすることになった。がんができた場所は盲腸近辺で、腹腔鏡手術の対象になるかは微妙だったが、できるだけ早く仕事に復帰したかった辻さんは、医師に無理やりお願いをして腹腔鏡で手術を受けた。
手術はうまくいき、術後の回復も順調だったため、1週間で退院できた。ただ、詳しい検査の結果、がんはステージⅢbまで進行しており、リンパ節などへも転移していたため、抗がん剤治療が行われることになった。既に仕事に復帰していたこともあり、治療は基本的に外来で受けた。抗がん剤治療のやり方は昔に比べて格段に進歩しており、患者のQOLもずいぶんと改善されていることが実感できたが、食欲不振や吐き気、手の神経の痺れ、顔の冷感過敏などさまざまな副作用があり、それについては我慢の連続だった。
最初に便潜血検査で陽性反応が出たときに精密検査を受けておけば、もう少し早期の段階でがんが見つかったのに、という思いはある。ステージⅢbということで、自分の将来についても楽観はしていない。時々眠れなくなることもあるが、とにかく悔いが残らないよう、今できることを全部するという気持ちで、趣味などにもこれまで以上に熱心に取り組んでいる。そうした意味では、前の10年より多少充実はしているようにも感じている。ただ、全体としてみたときに、やはりがん患者への治療後のフォロー体制は不十分であり、国にはがんになった後のアフターケアにも力を入れてほしいと思っている。
がんは自分で防ぐのが難しい病気であり、やはり検診で早期に発見することが重要になるが、大腸がんに関しては、便潜血検査で陽性反応が出ても精密検査を受けない人が多いというのが現状である。そこには、羞恥心や面倒さ、経済的なコストの問題などがあって、解決は難しいのかもしれないが、例えば、身近な人が大腸がんになったと聞けば、少しは自分も気をつけようとなるので、そういう人たちの経験談を聞ける機会を作っていくのが一番いいのではないかと思う。
インタビュー18
- 大腸がんの手術を受ける約3年前から便潜血検査が陽性だったが、忙しい、面倒、ヘモ(痔)だろうという思いこみ、自覚症状のなさなどにより放置していた(音声のみ)
- 女性にお尻を見せてもいいけど、男性には見せてはいけないという家訓を勝手に作った。それを言い訳にして精密検査を避けてきた部分もある(音声のみ)
- 貧血検査の数値も通常の半分で、腹痛もあり、便潜血検査も陽性だったので、ある程度予測はしていた。病名を聞いたときも「ああ、がんか」という受け止め方で済んだ(音声のみ)
- ステージⅢbの診断を受けたが、3年前に受けていればステージIIくらいで見つけられ、5年生存率も上がっただろうと思う(音声のみ)
- 腹腔鏡の対象になるか微妙な位置だったが、早く復帰したかったのでお願いした。実際、体力的にはとても楽だった(音声のみ)
- 化学療法は12クール行うことになっていたが、食欲不振や吐き気、冷気の過敏症といった副作用があり、ダメージが強いので10クールで終わりにした(音声のみ)