大腸がん検診の語り

インタビュー05:プロフィール

岡田さん(仮名)は大腸がん検診(便潜血検査)を夫の会社の検診や自治体検診で受けてきた。大腸内視鏡検査は3回受けた。1回目(2001年頃)、たまたま胃の調子が悪く病院で胃の内視鏡検査を受けたとき、便潜血検査も受けたらどうかと勧められ受検した結果、陽性となった。次に大腸内視鏡検査を受けたが、過去に2回帝王切開で開腹していたためか、内視鏡が入れにくく、途中でやめてしまった。その後、バリウムを入れて検査(注腸検査)をした。結局、肛門付近に痔があったことから、便潜血検査が陽性の原因は痔のせいだと言われた。
今年(2011年)の初めに受けた便潜血検査で陽性と出た。紹介された一般病院で大腸内視鏡検査を受けた結果、2cmのポリープがあることがわかり、後日手術を受けることになった。悪性かどうかは、組織を取って病理検査をしないとわからないと言われたので、その可能性も考えて、父が大腸がんの手術をしたがんセンターに転院した。
そこでもう一度内視鏡検査を受けたが、痛みが全くなかったのは驚きだった。ポリープは(直径)4cmで平べったい形をしているのがわかり、開腹手術か腹腔鏡下手術(ガスでお腹すなわち腹腔内を膨らませて内視鏡で見ながら行う手術なので、内視鏡手術と同じ意味)かの選択が示された。さらに国から先進医療に指定されている「内視鏡的大腸粘膜下層剥離術」についての説明も受けた。これは内視鏡の先端から特殊なナイフなどの器具を出して、病変の周囲を切開してから、病変の下の粘膜下層をはがし取る方法で、従来の内視鏡手術に比べ、確実に一括切除ができて、根治が望めるが、自分の場合は腸のひだの上にあるポリープのため、この方法では取りづらいということだった。これまでの開腹手術で腸の癒着があり、入院期間も考えて従来の内視鏡下の手術にした。検査後に先進医療の説明を受け、1週間後に治療法を決めるまでの間に、インターネットの医療相談サイトにアクセスして、先進医療と従来の方法との違いなどについて質問し、知識を得た。
手術の様子が見たかったので鎮静剤は希望しなかった。内視鏡を入れるとポリープが見えたが、そこからは出血していないということだった。また、10年くらい前からそのポリープがあることも聞き、10年前の出血の原因は痔ではなくポリープだったのではと疑った。そう考えると、大腸がん検診は集団としての死亡率は下げるけれども、実際には、見逃されていたり、運よくわかることがあったりして、必ずしも個人の死亡率を下げるわけではないと思った。
また、内視鏡を入れた状態で、「今日なら先進医療ができるがどうするか?」と術式を再度聞かれたのも驚いた。腸は動くから、今日なら器具を入れやすいということだった。ネットで得た知識もあり、穿孔のリスクは若干高いものの、処置がしやすく、がんかどうかの確定診断もできる先進医療を選んだ。
結局がんではなく、今回のポリープががんになる可能性は20%程度だが、切除した方が良いと言われた。手術を受けたことが良かったのかどうかは自分が亡くなるまでわからないと思うので、そのことを率直に言ってくれた医師は正直な人だと好感を持った。
すべてのがん検診が有効だとは思わない。10年前からも便潜血検査はほぼ毎年受けているが、がん検診一般については疑問がある。夫は毎年肺がん検診を受けて異常がなかったのに、突然肺がんと診断され、手を尽くしたが亡くなった。主治医や放射線専門医、かかりつけ医も、肺がん検診が有効だとは言わなかった。けれども、がんの種類によっても違うので、大腸がん検診は身近に検診で見つかった人がおり、簡単にできる検査なので、受けている。