投稿者「dipex-j」のアーカイブ

臨床試験・治験の語り

自分の病気の治療法になりうる再生医療については家族と普段から話していたが、臨床試験で受ける手術については「ちょっと怖いね」という話をしていた

―― ご家族の話出てきたんですけど、ご家族はそもそも(臨床試験の)説明会に参加ぐらいのときから、どういう反応を示されていました。

うーん、特に、わたしと一緒に、特に何も言っていなかったような気がします。

―― じゃ、こういう臨床試験あるっぽいんだけどっていう相談っていうのも、事前に親御さんにしたりとか。

はい。再生医療に関しては、いろいろ普段から話していましたし、わたしが興味持っているっていうことも一番理解してくれていたので、新聞に出たら切り抜いて置いておいてくれたりとかしていたので、一緒にわたしも(臨床試験の説明会に)行っていたんですけど。でも、やっぱり「外科的な手術は怖いね」とかいう話をしたりとか。それに、鼻の粘膜は、何が効くか分からないので「そのまま切り刻んで入れるっていうのは、何か、ちょっと怖いね」っていう話はしていたと思います。

―― じゃ、その大阪のほうの大学病院の1度目の受診のあと、まあ、不安のほうが大きくなった。どんどん、不安しかなくなってきた。

あ、そうですね。

―― で、それをご家族の方にも伝えた。

はい。

―― ご家族の方は、みんな、うーん、それはっていう感じが、はい。

ああ、そうですね。

臨床試験・治験の語り

息子は私のしたい通りにすればいいという反応だったが、娘は涙ぐみ、どうしてそんなことをするのかと大反対だった

先生は「うちへ帰って家族の人とよく相談して、今度あれ(=返事)してください」って言われて。そして、1人暮らしだから息子に電話したら、「お母さんがしたいと思うほうにしたらいいよ」って。うん、「お母さんがしたいと思えば、すればいいし、嫌だと思えば断ればいいんだから」って。「お母さんのしたいとおりしたらいいよ」って。

で、娘に話したら「どうして、お母さんがそんなことするのさ、そんな、そんなお母さんじゃない人にしてもらえばいいでしょう」って。頭から、もう、何ていうの、涙ぐんでいるんだわ。「そんなことお母さんがどうしてするの」ってね、言われてね。「いや、だけどね、誰かこれしないとね、その薬がね、役に立つかどうか分からないんだわ」って。それで(娘に)、「これは、いいと思うからって、先生がね、言ってくれているんだから、いいと思うよ、そんなんね、あのー、悪いことすすめないんだから、先生は。だから、いいと思うから、お母さんはしたいと思うからね、する」って言って(参加することにした)。娘は大反対だったの。

臨床試験・治験の語り

歯科医の息子が病気説明と治験説明のときについてくれて安心した。治験参加を迷っていたときに背中を押してくれたのも息子だった

―― 息子さんとかは、その当時(=治験の説明を受けたとき)の話とかは覚えてらっしゃるんですかね。

息子は覚えていると思います、はい。息子は歯科医ですから。一番最初、わたしが病気になって、その病気の説明を、総合病院の先生に「こういう病名です」って説明受けたときも、わたしは頭が真っ白になっちゃうわけですよ。白血病なんて思いもかけない。「えー、何でわたしが?」っていう、そういう思いがあってね。だから、分かったような分かんないような先生の説明(でした)。でも、帰りの車の中で「あんまりよく分かんなかった」って(息子に)言ったら、「うん、大体分かっているから、帰ってから説明するよ」なんてね。それで助かりました、はい。

―― 治験のときはいかがでした。

治験のときですか。ええ、治験のときも、その説明も2回して、一緒に息子が来てくれて。やっぱり自分で分かんなかったのを、帰ってきてから「ここが分かんなかったけど」なんて言うと説明してくれたんで、そういう点は、わたし安心だったと思います。
で、最終的にやっぱり迷いってたくさんありましたけど、背中を押してくれたのは息子です。「もう、やってみる価値があるから。もしも嫌だったらいつ止めてもいいって先生は言ってくださっているから、そしたら止めればいいじゃないか」と。「だから、お母さんやってみたら」っていうふうに一生懸命言ってくれたんで決心したわけです。

臨床試験・治験の語り

母は他に治療法がなく、息子の自分が代わりに情報収集を行っていたが治験で新しいものはないかと聞かれたときに「ない」と答えるのは辛かった

やっぱり、いちいちそれ(参加できる治験がないこと)を母に言うのは、辛かったですね。……母自身は、何もできない……じゃないですか。もう、……死に向かって…いく、なるべく痛みを少なくして、……ホスピスに入るっていうことが、もう、母の頭の中ではいっぱいであって。……「治験があれば…いいな」っていうふうには言っていましたね。「何か新しいもの(=治験)ない?」って聞くんですよね、わたしに。…「きょう、…どっか(参加できる治験は)なかったの」とか、そういうことを……聞くんですけれども。わたしが答えるのは、「うん、きょうもなかったよ」っていう……感じでしたね。うーん。だけど、母は母なりに、……うーん、……頑張っていたっていう言い方は、ちょっと当てはまらないかもしれないですけれど、……何とかならないかなっていうふうには思っていたと思います。わたしには、言いませんでした。母は、…そういう弱音をはく人間じゃなかったので、すごい、気丈にふるまっていましたね。わたしの前ではね。うん。

臨床試験・治験の語り

両親は高齢で病気のことをあまり話していなかったので、治験に関しても新薬を試してみるぐらいしか言えなかったが、友人には一緒に治験の説明を聞いてもらった(音声のみ)

―― 治験のことに対して、周りの方とかご家族とか、さっきご友人ていう話、ちょっと出ましたけど、相談とかはされていたんですか。

もう両親ともにね、高齢なので、そういう「がん関係の難しい話は、もうお母さんたちには分からない」って言って。それと、やっぱり、(娘が慢性骨髄性白血病であるということへの)ショックが大きかったみたいで。だから、あんまり私のほうから、いろんなことは言えないし。その(これまで治療してきた中で)副作用が出ても、あんまり話せなかったというか抑えめにしていたので、治験に関しては、何か新しい薬があって、それをやってみるかもしれないっていうぐらいしか言えないし。それに祖父が肺がんで亡くなったんですよ。そのときに、治験なのか何なのか、わたしはまだ小さいころだったのでよく分らないんですが、学術的なところに参加していたので、父は、そういうのに関しては、ものすごく嫌がる人だったので、余計話せなくて。新しい薬があって、それ試してみるかもっていう程度で。
お友達は、一緒にその治験の説明を聞いてくれていたんですけど、(説明を聞いた)帰り道には「(薬の選択肢が)あと二つしかないんだったら(=治験以外の薬の選択肢が二つと医師から告げられていた)、治験やってみるのも手かもしれないね」とは言ってくれていたんです。「治験をね、やってみようかと思って、前向きのね、返事を(治験を提案してきた医師に)してあげた」って言ったら、「えー、治験やるの?大丈夫?」って心配して。その「副作用とかね、まだ全部分かっているわけじゃないし、病院でね、(何かあったら)対応してくれるって言っても。こんなこと言うと、余計不安になっちゃうから、あんまりもう言わないけど」って言って。ただ「気をつけてね」って言われましたね、はい。

臨床試験・治験の語り

治験に参加することを事前に伝えたのは主治医ぐらいで、妻には事後に伝えた

別に相談ということはしてないんですけども、まあ、ただ、自分の(普段通っている)病院のですね、主治医の方には(治験に参加するという)話をして、その方も「それ(=治験)をやってくれるならありがたいね」という、そういう同意を得ています、ええ。相談したとすればその人ぐらいです。

―― そうすると、ご家族とか、そういう方には…。

うーん、家族には話したか、話さないか、あんまり記憶もないぐらいなんですけども、まあ「そういうの(=治験)やるよ」ぐらいのことは言ったんではないかと思います、ええ。

―― そうすると、周りの方の、主治医の先生にはご相談されたということですが、周りの人にはあまり特に聞かずに、ご自身で?

そうですね、ええ。自分のことですから。まあ、家内には言ったか…。「そういうの(=治験)やることにするよ」というのは言ったかもしれませんけれども、まあ、ただ言っただけという感じで、同意を求めるとかですね、そういうつもりで言ったんではなかったと思います。

臨床試験・治験の語り

第2相試験で効果がない薬を使うグループに入っている間、回復していた皮膚の状態が再度悪化してしまったのに、ステロイドが使えず我慢するのが苦しかった(音声のみ)

しばらく、(プラセボが含まれている第)2相(試験)が終わったら本当(実薬)の3相の長期(投与試験※)が始まるから、長期投与が始まったら、あの、どんどん皮膚が良く、驚くほどに良くなるのでっていう。で、もう、とにかく2~3カ月ぐらいちょっと今の間は我慢して頑張ってって。その間にやっぱり、紫外線(を用いる治療)で(皮膚の状態が)回復せっかくしたのにぶり返したんですよ、思いっきり。そのほうがね、それに我慢するんが、ちょっとね、苦しいてね、3カ月間。で、一切、そのー、ステロイドとかをね、併用できるのがね、去年の11月からなんですよ。それまで約2年半、3年か、あの、打てない、あの、一切塗れなかったんですよ。どういうかぶれにも塗れなかったんですよ。だから、あの、その(プラセボが含まれる第2相試験の)間、あの、ステロイドが一切使えなかったのはちょっとね。

臨床試験・治験の語り

初回の吸入の時から頭痛と血圧の低下がひどかったので、本来7~8回やるべき吸入を6回に減らしてもらった(テキストのみ)

(治験のための入院を)3日の予定でしました、検査しました。で、投与開始しました。これが、結構きつかったんです。

―― 病院でですよね、入院中。

はい、吸入の、セットの仕方とかもトレーニングを受けて。これをこうやって清潔に保って、ここアンプル(※)をぴっとやってっていうのを、一緒にちゃんとトレーニングをしながらやってもらって。で、投与し始めて、やっぱり、思いのほか、頭痛が、かなりの頭痛がして、割れるぐらい痛いって感じで、あと、血圧も上が66とかっていう、それは、ちょっとないんじゃないっていうぐらいの血圧だったんだけど。びっくりもしていたんですけど、病院の先生とか看護師さんとかも。でも、多分、慣れれば上がっていくからっていう感じで、「ちょっと我慢して」って言われて。
顔も赤ら顔になるし。これは、血管拡張剤だったら、みんな、そうなんですけど、顔が真っ赤になるっていうのが。で、あと、味覚とかも、何か吸入投与後は、ちょっと変な感じで、物があまりおいしく食べられないし、やだなと思って、でも、(肺の)圧が下がればいいのかとか思って。でも、結構、本当に、頭痛激しくて、その、血圧下がるのが激しく、で、味覚もあまりないから食欲もでないみたいな感じなものが、1回あるじゃないですか。で、次のがもうすぐくるんですよ。収まったな、ああ、頭痛、やっと収まってきたと思うと、また次のをやらなきゃいけない。

―― 2~3時間に1回ぐらいって言っていましたもんね。

そう、そう、そう、それを、もう、何か、1日やっとの思いで、もう、へとへとの思いで、……6回やって、で、「できれば7回やってね」って言われていたんですけど、その、頼みますから6回にとりあえずはしといてくださいって。その。

―― それは、投与開始初日の話ですか。

そう、そう、そう。で、でも、「ほんとは、7回8回、で、最大9回までやらないと、薬効がないので」って言われて、「治療域に達しない」って言われて。弱いから吸入だから。で、その何回かの吸入を、続けていって。また、治験だったから、それこそ、医療廃棄物もあれ出るから、アンプルだから、結構管理も大変なんですよね。チェックして、この何本と、こう、……ここに何本、アンプルが入って、じゃ、捨てましたみたいなのをチェックして。経口の時よりは、全然もう、ほんとに煩雑で、もう、何か、あ、機器もすごい高いのらしく、1個30万とか、40万とかそのぐらいするみたいな器械を、とりあえず2個もらって、で、洗浄したりだとか、そういうケアとかも結構大変だったんですけど。今は、それこそ、働いていないからできるかっていう感じでやっていて。それをしばらく続けていたんですね。

※アンプル:一定量の薬剤液を密封した小さいガラスの入れ物

臨床試験・治験の語り

治験参加中に副作用と思われるサルコイドーシス(※)を発症して、治験を続けたかったが、基準に反するということで中止になってしまった

―― で、サルコイドーシスになったって分かったときに、結局どうなりましたか、治験は。

いやもうできませんって言われた。

―― その、もうちょっと具体的に何か、理由っていうか、説明されました。

いや、もう、具体的にっていうか、やっぱり、サルコイドーシスっていうのは、記憶にないような、そんな怪我なんかしたことにないよっていうようなものでも、昔、ころんでここすりむいた、それでも忘れているし、すりむいたの何回もあるでしょう、子どものころ。そういうところの、治っているところに、そういうの(サルコイドーシスの皮膚症状)がここに出てきているんだから。だから、せき出るのも、ここにいつも影があるよとか。もし心臓の病気している人だったら、心臓にそれがきたり、目の病気した人は、目にきたりしたらもう失明するとか、心臓だからもうすぐ駄目になるとか。で、そういう恐ろしい病気なんですって、サルコイドーシス。だから、先生、いい、私、我慢できるから(治験を)してって言っているんだけど、いやあ、もう、それは(治験で定められた基準の)違反になるから、そんなことできません(と医師に言われた)。

―― 例えば、そのサルコイドーシスになったのが、治験でやっていた注射の副作用だったとか、そういうことは。

いや、そう言われました。

―― あ、副作用だと思うっていうふうには、先生から、はっきり。

そう、そう、そう。

―― その、全然別でできた病気っていうわけじゃなくて。何か、その。

副作用で。

―― じゃ、副作用が出てしまったのでもう続けられませんと。

そう。

臨床試験・治験の語り

治験の薬を飲んだ直後にぐったりしてしまい、めったにない低血圧になったので担当医には続けてほしいと言われたがもう飲みたくないと断った(音声のみ)

「それでは(治験に参加します)」っていうことで、(治験の薬を)いただいてきて、2週間分いただいたんでしょうかね。まず、2週間試してみましょうっていうことで。翌日から、朝、食後3回ですか、朝飲んで食後飲みまして、で、10時ごろですかね、2時間ぐらい経ったあと、買い物に行こうと思うんですけどね、何か倦怠感とか脱力感というのかね、ぐたあーとしてしまいましてね、で、買い物どころじゃないんですよ。

で、おかしいなと思って。血圧が下がるっていうから、すぐに、わたし、血圧が日頃高いものですからね、朝夕、血圧測っているんですよ、自分で。で、先生、かかりつけのドクターは、何ですか、あまり強い薬を使うことを非常に好みませんので、ゆるやかだけれど、年齢的にあまり下げると、非常に、よくないことがおこるから、可能性があるからねっていうことで、そう、140前後っていうところを、で、わたしも、それでいいわと思ってね、飲んでいたんですけれども。

それで、血圧をそのときにね、倦怠感もあって、だらーんとしてしまったもんですから、血圧をすぐに計りましたら115だったんですね。だから、わたしにとっては、めったにない血圧だったので、いやあ、これも(治験の薬が)原因なのかなと思いまして、すぐに病院に電話いれまして、「実はこうこうこうなんですけども、ちょっと気になりますから電話しました」と言ったら、「もう、止めていいです。止めてください」って「お薬飲むのは止めてください」って、出た担当の看護婦の方が言われましてね。で、「明日、タイミングよく、そのドクター(治験の担当医)外来で来ていますから、来てください」って言って、「朝一番に、診ましょう、相談にのりましょう」って言われて行きましたんです。

そしたら、先生が、「いやあ、1回目はそういうことあるけれども、次からは、あまりそういうこともなくなると思うから、飲んでくれないか」って言われたんですよ。でも、私、夜中に(トイレで)2~3回起きるのと、このしんどさと、きのう経験したしんどさと比べたら、「もう、わたし飲みたくありませんから」って言ったら、「そうかなあ」なんて、だいぶね、おっしゃっていましたけど。「まあ、これは、ね、患者が希望しなければ止めることもできるんだから、じゃ、そうしましょう」とこう言われたんですよね。それで、「じゃ、お願いします」っていうことで止めてしまったんです。