投稿者「dipex-j」のアーカイブ

臨床試験・治験の語り

前立腺がんを治したくて、飛行機代も含めて1クール80万円ぐらいかかるワクチン療法の臨床試験に参加したが、費用に見合った効果が見えなかったので3クールでやめた

―― 費用面で、この臨床試験に参加していくっていうのは結構負担じゃないかなって思うんですけど、そのあたりについてはいかがですか。

えっとね、1クール、旅費(飛行機代)なんかも入れて80万ぐらいかかるんですよ。でも、それは治ればいいなって思ってましたから。ただ、人によって異なるでしょうけど「そんなには出せない」と(思う人もいるだろうし)。2ヶ月で160万とかね。誰だって、ある程度限界ありますよね。それと、見える効果ね。「あー、治ってる」っていうんだったら、「もう80万出そう」とかそういう気にはなりますけどね。だから、わたしの場合は、3クールでやめました。

―― やめるタイミングっていうのは、先生と相談するんですか。

ええ。相談っていうか、先生に診てもらう前にもちろん自分で決めないといけない。なんか先生のほうはね、3クール目の次は4クール目とか、おそらく5クール目とかあるんじゃないですかね。そういう(続ける)人もいるんじゃないかと思うんですけど。

―― やめるタイミングっていうのは、ご自身でどういうことを考えてやめられたんですか。

それはね、うーん、もうお金そんなに使えないって(思った)。効果がそんなによく見えないのにね、ここがうまく説明がつけばいいですけど。なんか、「免疫力が上がってますよ」って。「PSA(=前立腺がんの腫瘍マーカー)どんどん下がってて、もう0に近いですよ」とか。「もう1回やったらだいたい0になりますよ」とかね。そうすれば、もう1クール増やす、追加するってことあるでしょうけど。だから、わたしの場合は3クール目で終えようと。もうそれは2クール目が終わったあたりから、だいたい、こう、あんまり(効果が見られなかった)。現実的には一番の関心事ですよ。お金かかるから。

臨床試験・治験の語り

リウマチで曲がらないぐらいに手が腫れていたのに治験薬の濃度を増やしていくうちに治まったので、本当に嬉しくなり、この薬に一生お世話になると思った

最初は、その(治験の)薬、濃度が4ミリから始まったんですけど、また2週間たって4ミリとかって(増えていった)。それを6週間ぐらい続けて、それから今度8ミリに、何ともないので変わったんですけど。8ミリに変わるころになったら本当に良くなったんですよ、私も。まず痛みが取れて軽くなったし、それから、手がもう曲がらないぐらい腫れてたんですけども、その手の腫れが治まってなぜか普通の人の手みたいになって。一緒に治験に同時に入ったお友達がいたんですけど、そのお友達と「もうリウマチから解放されたみたいね」っていうぐらい良くなった。だから、もう本当にうれしくなって。

―― 途中でやめたくなったとか、すごく不安になったりとかしたことはありましたか。

ないです。全然ないです。それは、もう明らかに効果が出てきたから。もう私にはこの薬がなかったら駄目だと思ったから。ずっと信じて…。こんないい薬があったのかと思うぐらい…信頼したし。それから、周りのスタッフさんも優しかったし、担当の先生もよく説明してくれたから、全然不信感ていうのはなくて。「この薬、一生私はお世話になる」と思っていました。

治験に入るときに、4人くらいずっと同じ(入院)仲間がいたんです。男の方ももちろん含めて。で、その人たちとよく病室で話したのは、「みんな風邪引かないように注意して、この治験に協力しようね。一人でも脱落者がいると駄目になるかもしれない。この薬は駄目になるかもしれないから、頑張ろうな、頑張ろうな」っていうことです。最初(この治験を)やったのは、あちこちの病院に入ってたらしいけど、8人だったらしいんですよね、私が入ったころは。本当に具合の悪いそういう患者さんに使い始めたのは。だから、その8人の中で、1人でも心臓が具合が悪くなったとか、何か脱落者がいたら、もうこの薬のまた開発は遅れるかもしれないから、みんな、もう、うがいして「頑張ろうな、頑張ろうな」って、言い合ってきたんですけどね。

臨床試験・治験の語り

前の薬で辛い状態だったが、治験薬を飲み始めて2か月後の検査で、値がよくなったのがとてもうれしく、前の主治医に報告しに行った。やめるということは全然考えなかった

(治験の)お薬飲みまして、もう、自分じゃ気が付かなかったんですけどね、1週間目に、息子も孫もびっくりして、「あ、顔が変わったよ」と。もうあっという間に(それまで飲んでいた別の薬のせいでむくんでいた)顔が元に戻ったんです、はい。だから、こんなに違うっていうのは効いているのかなと。それで、わたしたちの病気(=慢性骨髄性白血病)の特長の、フィラデルフィア染色体(※1)というのが、20分のいくつというふうなかたちでデータが出るんですけどね、最初、20分の20なわけです。20個のうち(異常なものが)20ですって。それが、グリベック飲んでいると、どんどん普通減るんですって。でも、わたしは、3回目(の服用)でも18までしか減っていないわけですよね。ここでやっと8になっていてね。それで、どうしても、1回1までなっても、また上に上がってきて。
ところが、そのニロチニブ(=当時、治験で飲んでいた薬)飲み始めましたらね、もう次の検査で20分のゼロになったんです。やっぱり、うれしかったですね。3月に飲み始めて、5月にそうです(=20分のゼロになった)。ですから、もう(治験参加を)止めるなんていうことは、全然考えなかったです、ええ。

―― これは20分のゼロが一番いい状態ということですか。

この検査ではそうなんですって、ええ。ああ、もっともわたし言われました、最初に。慢性骨髄性白血病の中でもメジャーとマイナーがあって(※2)、わたしはマイナーのほうですって。で、ずうっと急性に近い慢性だったの。総合病院の先生は「(グリベックを飲んでも値がよくならないのは)そのせいかな」なんておっしゃられたんで、「うーん、困ったね」って。「なかなか減らないね」っていう感じだったんですね。で、(一度だけその値が)1になったんで、先生も喜んでいたら、次の検査でもう上がってきちゃったんで、それこそ、治験者(被験者)になってみたらどうかって、もうそのころ話がありましたから。ええ、そんな感じで、もう、……治験者(被験者)になってから20分のゼロになったのは、一番うれしかったです。ですから、そのゼロだって分かった日にうちに(治験先の病院から家に直接)帰らないで、そのまんま、その総合病院まですっとんでいきまして。前の主治医だった先生が診療終わるのをね、もう、1時間ぐらい待ってました。「先生、きょう、こういう(検査)結果でした」て報告したときは、うれしくてうるうるしていましたね。その先生もすごく喜んでくださって、「よかった、よかった」と。はい。

―― 数値が下がるのを見て、やっぱり治験続けていこうかなっていうふうに。

ええ。下がるのを見なくても、とにかく前の薬で大変辛い状態でしたから、こういうね、見ても分かるようにね。ですから、止めるという気は全然なかったです、はい。

※1 フィラデルフィア染色体:慢性骨髄性白血病に見られる染色体の異常。
※2 慢性骨髄性白血病はメジャー、フィラデルフィア陽性の急性リンパ性白血病はマイナーと呼ばれる。

臨床試験・治験の語り

治験を行っている会社から自分の口座に定期的に振り込みがあるのを見て、お金をもらっている以上は余計なことを言ってはいけないと思った

―― 費用とかはかからないわけなんですよね。

診察や何か行ったたんびには払ってましたけども、でも、そのかわり、あちら(=製薬会社)からは、毎月、毎月じゃないわね、定期的に口座のほうへね、やっぱり振り込んでくださるんですよ。それをいただいて、会社のほうからじかに口座のほうへ振り込んでくださるんで。(お金を)いただいているのと、治験のその契約っていうのがあるから、やっぱりいただいてる以上はよけいなことは言えない。そして、また、言ってはいけないというかな……。度を越して、会社のほうへ立ち入るってことはしちゃいけないことだと思って。お金の振り込みがなければ、あるいは言ってたかもしれませんよね。でも自分の口座のほうへ振り込まれますからね、自動的に振り込まれるから、結局お金をいただいている以上、することはして、それ以上は立ち入っちゃいけないっていう気持ちのほうが強かったですね。

―― 毎回診察に行ったら、一応病院で払うお金は払う。

自分で払って。足代も出ませんし、全部自分持ちです。はい。

―― それを一応上回るぐらいの額はもらえるんですかね。

うーん、上回るかどうかは分からないんですけども、まあ…、お小遣いでもって、(病院に)行くのに交通費とかそういうものをね、お食事代とか。そのくらいのものは、出していただけたような気がしますね。はい。

臨床試験・治験の語り

交通費を補う目的で1回ごとに7,000円の謝金が振り込まれたが、自分は他府県の病院に遠距離通院していたので、マイナスだった(テキストのみ)

―― その治験参加中ですね、製薬会社から金銭的な何かっていうのがありましたか?

はい。交通費が支給される形だったので、まぁ、私の場合、遠いのでマイナスにはなりますけど。(笑)

―― ああ、もう規定額が。

規定額が決められているので。はい。

―― じゃ、それは交通費として支給されてましたか?謝金っていう、何か名目付いてましたか?

あ、謝金っていうような明細で、最後はいただいたような気がします。はい。

―― 振込とか?

振込で。はい。

―― そういうお金が出るっていうことは知ってましたか?

はい。最初に説明受けました。

―― それは説明文書の。

そうですね。同意。

―― 同意文書の時に書いてあったんですね。

はい。

―― あの、野暮な質問かも知れませんが、謝金出ませんってなってても、治験には参加してましたか?

はい。そうですね(笑)

―― それは、おいくらぐらいいただけるものなんですかね?

それは1回7,000円でした。

―― 1回行くごとに7,000円?

そうです。はい。

―― 足りませんね。(笑)

そうですね。(笑)遠いので。はい。

臨床試験・治験の語り

通院ごとに1万円が支給されるとは聞いていたが、税金を引かれることもなく額面通りにもらえたのでへそくりのようでありがたかった(テキストのみ)

わたしの場合には、最初のスクリーニングのときに1回、あとは、4週間なので1週間ごとに通院して、一応先生に診てもらって、かつ、(症状を記録する)日記の状態なんかを示すわけなんですけども、そのごとに1回1万円もらえたので、これはすごいありがたいことでしたね。

―― そういうことも、事前にコーディネーターから説明があったんですか。

聞いていました。ええ。これで参加して、結局、その5回通院して5万円ですから、これはそれなりにありがたかったですね。この5万円も、ほんとあとで僕もありがたかったんですけど、普通はこういうかたちでお仕事すると、通帳に振り込んで、普通の仕事もそうですけど、源泉つけて10パーセント除いてきますよね。そういうもんだろうなと思ったら、全く違って。

―― 本当に(通院)1回1万が、額面通りくるという。

そうなんです。僕は、それは、本当、最後になってびっくりしました。つまらないですけど、サラリーマンっていうのは、仕事一生懸命やって、残業しても、全部振り込まれて奥さんが管理しているので(笑)。
今回の(5回通院した分の)お金ももし5万円入ったら、全部これ奥さんのものかなと思ったら、一切そういう記録がなくて5万円(が現金で直接)僕に入ったので、わたしのへそくりだったから。いろいろ治験に関して金銭的ことをしちゃいけないとか言っていますけども、やっぱり、治験を勧める側にとっては大きなインセンティブになってくるのは確かだし。やはり、全く無償というわけにはいかないというか。治験の謝礼ではなくて、あくまで必要経費ということになっていますけど、それは、それなりに助かりましたというか、ありがたかったですね。

臨床試験・治験の語り

頻繁に血液検査をされたり、治験開始前後に内視鏡検査をしなければならなかったが、通院するたびに1万円が支給されたのはうれしい誤算だった

そうですね、(治験のために病院に)行くたんびに、血液検査のたびに血液を採られたということでしようか。で、最初のゼロ週と、最後の8週目にですね、大腸の内視鏡を入れなければならなかったんですけれども、わたしはこの潰瘍性大腸炎になって、その進行状態を確かめたり、大腸の状態をですね、見るためにですね、大腸の内視鏡を入れて、2年に1回は入れていますので。そういった意味では、特に、そういった大腸の内視鏡を入れるということに対して抵抗感はありませんでした。そして、非常にうれしい誤算かもしれませんが、行くたんびにお小遣い(負担軽減費)が1万円もらえるんですね。非常に生々しい話なんですけれども、すごく役に立ちました。それがですね、この治験をやってですね、メリットがあったことなのかなあていうふうには思っています。

臨床試験・治験の語り

参加した治験の薬が完成して救われる人が出てくるのであれば、それだけで十分嬉しいのに手当てが出るとは想定外で、気を使ってくれていると思った

―― 少し、えっと、謝礼に関してのお話、聞きたいんですけども。たぶん、えっと、謝金的なものが出てたかと思うんですが。

ええ。毎月ですね、定額。

―― 定額ですか。

はい。定額です。

―― えっと、月においくらぐらい入ってたか。

金額言っていいですか。

―― ああ、大丈夫です。

7,000円です。

―― で、それにかかわる、例えば検査とか、そういうのも、もろもろ無料でしたか。

そうです。すべて病院負担というのか、それは、その、薬局、薬を開発してるほうの負担なのか。たぶん、そうだと思うんですけどね。

―― なるほど。その謝礼に関しては、どういうふうに理解されてましたか。例えば、単純にありがたいとか嬉しいとか、それとも、まあ、申し訳ないとか、例えば、いろいろ感情あると思うんですけども。

そうですね。わたしは、ありがたいという気持ちのほうが強かったですね。当然だとかそんなんじゃなくて。自分の病気に対する薬の効果、もし、仮にこれ、わたしの分がプラセボであっても、その薬がほんとに、最後の段階までいって、その薬によって救われる人が出てくるというんであれば、それだけでわたしとしては非常に嬉しいことなんですね。その上に、そういう手当まで出るっていうことは当初からまったく考えてもみなかったしね。想定外のことで「こんなものまであるのか」というぐらい、気を使ってくれてるのかっていう気持ちはありましたね。

臨床試験・治験の語り

交通費も含め、参加を継続するにはお金がかかったが、病気(乳がん)に負けたくないし、今持っている夢をあきらめたくないという思いがあって続けた(音声のみ)

―― 最初に、そのお金の話ってどういうふうに説明されていましたか。

お金は、そこに行って、「40本で1万円かかります」って。うん、40本、AとBが20本ずつ入っていて、40本のそのワクチンが、物買う、物というか、自分の何ていうの、治療するには、40本のやつが「1万円かかります」っていうあれで。それで、ちゃんと、その、何ていうの、「データと一緒に出せるんだったら、同意書を書いてください」って言われて、書いて、大きいその東京さの病院に行って、ワクチン取り行って、ここまで来ました。

―― 続けるのに、やっぱりお金(が必要だった?)。

お金はかかります、うん。

―― 交通費とか全部自分で。

最初は、東京のほうの関東圏の大きな病院にワクチン取りに行って。電車代を含んで、自分が(交通費助成の対象となるような)身体の病気持っているので、半額で、往復で2万円ぐらいなんで。その日は、夜行電車で、そのまま行ったんで。でも、次の日、やっぱり休めないんで、アルバイト。1泊2日で抗がん剤打って、次の日(ワクチンを取りに)行くって決めたので取り行って。強行しましたね。うーん、それでも治したいっていうのが、病気に負けていられねというか。病気に負けたら、自分の夢も終わっちゃうっていうのがあったから、どうしても。やっぱり、夢が先行しちゃったっていうか、うーん。

臨床試験・治験の語り

生活にゆとりがないので、検査や薬の費用負担がなかったり、交通費名目でお金が支給されたのはありがたく、再発した時点で治験も費用免除も打ち切りになったのは残念だった

やっぱし、一つは、少しは世の中のためになってんのかなっていう自負と、それから、病院に月に1ぺん行くたんびに交通費名目っていうんで、経済的にも楽だったのと。それから、その間(=治験参加中)のかかった検査とか薬とか、その他もろもろの点は、全部……治験の製薬会社のほうでもっていただいているみたいでむしろありがたいなと思いました。

―― ちなみに交通費って1回おいくらぐらいもらえるんですか。

僕の場合は7,000円いただいていました。実際にかかる交通費は2,000円弱なんですけど。だから、1月1回のアルバイトみたいなもんで助かりましたし。

―― 交通費がもらえるとか、検査代がかからないとか、そういうことは、最初の説明のときにもあったんでしょうか。

最初(説明が)ありました。それで、わたしの場合は、ちょっと経済的にもゆとりがないので助かったんですけど。ただ「治験が終わるのはいつですか」って聞いたら「再発するまでは終わりません」って言われました。一つ、虫のいい話で、わがまま言わせていただくと、「再発しても、入院費用その他のもろもろの点は継続する場合もある」って言ったんですよね。だから、僕は、むしろ、年金も何もないんで、継続していただけたらありがたいなと思ったんですけど。わたしの場合は(医療費の免除は)継続なしで完全打ち切りになったのは、虫がいい話だけど、残念です。