治験に対する呼びかけというのが、現実にどういうかたちで行われているのかなっていうのが、どうもよく分からないところがありましてね。これは、わたしの別な体験なんですけども、ある、このお医者さんで、今、今治療を続けているんですけども、新しい薬が、こう、ある大手の製薬会社が開発中だから、その臨床試験に参加してみないっていうふうに声かけられたことあるんですけれども。それで、ま、実際に、あのー、あのー、じゃお願いしましょうかぐらいなところまでいったんですね。そしたら、まあ、そのエージェント、エージェントって言っていましたよね、そのエージェントから電話がかかってきて、それでいついつお会いしましょうかっていうなかで、で、もって、あまり時間が、わたしも忙しかったものですから、それから、結局流れちゃったんですけども。その流れる過程で、その段階で、その担当のお医者さんは、あるクリニックのお医者さんなんですけども、あのー、「わたしにとっていったいこれどういうメリット、この新しいお薬の治療に参、あのー、治験に参加することをどういうメリットがあるんですか」って言ったら、「これ治療薬安くなるんだよ。今、使っている薬使わなくていいから、こっち飲みなさいよ。それを飲めば同じ治療になるんだから、あのー、……お金かかんないでしょう」っていう、そういう動機づけをしてもらったんですけども。確かに、そのときは、かなり治療費払っていますから。あのー、それはいいなと思って応募したん、応募しようとしたんだけども。それも、また、話が違いますよね。治療は治療なんで、治験は治験なんだろうと思うんで。そういうかたちで、治験の呼びかけが行われている、頻繁にいろんなところで行われているとしたら、これは、ちょっと、問題なんじゃないかなって思うんです。
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はい、やっぱり責任感ですね。これ(治験薬)1カプセルあたりの薬価を考えると、やっぱり何十万円ですから。うち歯科なの、今辞めていますけどね。主人が亡くなってから。それで、わたし自身が、主人と結婚してから歯科衛生士学校へ通って、衛生士の資格も取っていて、多少は分かりますから。薬価の計算して、やっぱりこれがいくらになるっていうのは「ああ、大変なことだな。これだけの責任があるんだから、飲み忘れとか何かないように。」とか(思いました)。それもありましたね、(治験薬を飲み)忘れなかったっていうのは、ええ。こういう何ていうんですか、器に入って、それも開けられないようになっているわけです、子どもは。ちょっと特殊な閉め方で。そういうので「ああ、もう、しっかり飲まなきゃ。」って、責任感感じました。
―― 薬価とかは先生から聞いたわけでもなく。
多分、コーディネーターの人から聞いたんですかね。1カプセルがね、そのころ薬価でね4千何百円だった。あ、それじゃなくてグリベックの薬価を知っていましたから。それでね、グリベックの薬価から考えて、今度の薬のほうがそれより高いということ聞きましたから、はい。だから自分の頭で計算して、「ああ、わたしがもらった薬っていうのは、1年で800万円分ぐらいだったのかなあ」って自分で計算しました、ええ。
―― その薬の800万円分ぐらいを、治験だからっていうことで無償で提供されるわけですか。
ええ、そうです。検査ももちろん無償ですし、はい。ですから、ありがたかったですね。はい。
―― 病院に行ったときに交通費とか謝礼みたいなんて受け取りました?
ええ、口座に振り込まれました。それは交通費ということで「朝ラッシュがきつくて大変だ」と言いましたら、先生にですね。その1回あたりに出るお金っていうのは、タクシー代の足しの意味で出るんだということでした、はい。
費用は健康保険で。
―― あ、保険なんですか。
はい。健康保険です。全部ね。はい、はい。
―― じゃあ、その、治験で行った分も、治験の薬を受け取る時もお金払うんですか、自分で。
もちろん、もちろん。これは、お金を払う、だから治験です、と。まあ、いろいろあるみたいでね。で、健康保険がききますっていう話で「ああ、じゃあ、いいな」と思って。そんなにかからないじゃないですか。健康保険が使えればね。使えなかったら、相当、すごいお金かかると思うけど、まあ、健康保険、すべてが、どれも健康保険がききます、と。まあ、でも、放射線はね、1回8,000円か1万円ぐらいかかったね。1回ね。
―― じゃあ、そういう意味では、普通の診療を受けてるのと変わらない、費用面では変わらないんですか。
そう、そう、そう。費用面ではまったく変わらないですね。
―― なんか、治験の種類によっては、そういう薬とか検査代が全部…。
無料の。
―― 無料になるっていうのもあると思うんですけど、そういう話も聞かれました?
だから、聞きました。「これは無料じゃないです。これは健康保険で払ってもらいます」と。「健康保険ききますので」って言って。まあ、それもわたしは安心した一つですけどね。反対に無料って言われたほうが、もっと、こう、治験っていうか実験的な要素が強いかなと思って。健康保険がきくんだから、まあね、まあ、国がそこそこ認めないと、健康保険きかないじゃないですか。だからきくんだな、まあまあだな、と、安心材料ですね、一つのね。うん。お金の問題じゃなくって、健康保険がきくかきかないかっていう。無料、有料って言われると、無料のほうが、わたし、してないかもわからない。怖いから。
―― ああ、逆に怖いから。
怖い。
―― あの、無料、もし無料の治験だったとしたら、勧められたのが。
受けてないやろな。
―― あ、もう絶対に。
うん。怖いわ。やっぱり。ほんとの実験台でしょ、無料っていったらね。お金を出さなくていいっていうことは。ただより安いものはないって言ったらおかしいって、昔から言うじゃないですか。わたしは、ただのものはいらんのですよ。すべてね。もう、ただは嫌なんですよ。すべて有料でないと信用できないんです。いや、ほんとに。人間ってそんなもんじゃないですか。ね。やっぱり無料っていうのはね。
せやな、わたしが90ぐらいになってたら受けてるかもね(笑)。いやいや、あとね、ちょっとやねって。90ぐらいの人に「受けてくれ」って言うてくるかどうかしらないけど、やっぱり、人生がね、長いとなると。やっぱり、わたしも68でしたからね。70といえ、もう70やからと思って受けたんだけど。80やったらどうかわかんないけど。いや、今、無料の分ね。80やったら受けるかもわかんないけど、70では、よう受けんわ。うん、うん、うん。
―― まず(第)2相のほうの金銭に関することをお聞きしたいんですが、こっちは謝礼みたいなものが毎回出てたんですか。
1日交通費という名目で7,000円。
―― ほかの例えば検査代だとか診察代とかは。
は、無料で。はい。
―― そういった部分、どういうふうにお考えでした?当時は。
当時は、無料という部分が怖かったですね。
―― あ、怖かった。
はい。無償ということは、後遺症とかが出た場合は補償しますっていうふうにあるけれど、無料をいいことに好きにされるんじゃないかなという。
―― 最初、これ受ける前は、「月5万円の製剤を破産してでも」っていう(くらい)、金銭的に困って、負担になるなと思っていたところに、「はい、無料ですよ」っていう治験が出てきた。
治験ていうのが、やっぱり今まで発売されてる分を打ってくれるんだったら、まあラッキーだったんですけど。「(治験の薬も今までに発売されているものと)同じような効果がある。だから、そんなに変なことにはならない」と思ったんですけどね。やっぱり薬としてまだ日本の国が認めてないものを打つから、逆に何かあったときに、自分自身が自分自身の体に責任は持てないよというふうに思いつつも、これイチかバチかじゃけん、仕方ないよっていう。
何か、一つ覚えているのが、ちょうど(説明会からの)帰り道が一緒になった、若い男性の親子の方とそのお母さんが一緒にいて、ちょっと話していたんですけど。その方は、まだ、受傷間のない、半年とか、受傷してから半年1年とかいう方で、話していたら、「もう絶対(この臨床試験を)受ける」って言っていたんです。すぐ登録するよねっていう話をしていて、何か、それに、わたしは、結構冷静にその話を聞いていた覚えがあるので。「ああ、もう、すぐこの人は決めちゃうんだな。あ、まだ、受傷して間もなかったらこういう思いなのかな」って思ったのを覚えています。
―― それって、今振り返って、やっぱり、そのときの自分の感情って、どう思います。そのころには、ご自身は、もうだいぶ経っていますよね。
(受傷して)5-6年経つ、そうです。また、今も、そこから経っているので、またまた、客観的にはなっているんですけど。今よりも興味はあったときだったと思うんですけど、その、受傷間のない、もう早く治りたいみたいな、そういう思いは、うーん、ない、ないわけではないけど、ちょっと、冷静になれていたっていうのもあると思います。
その、大学にちょうど行き始めていたぐらいなので、ちょうど重なっていて。ずっと事故にあってから、特に何もやる気がなくて、何も踏み出すことができなかったんですけど、やっと、こう、大学に行って、社会生活ができるようになってきてというか。で、いろいろ、自分の周りも忙しくなってきてというのがあったときなので。その、新しい医療にかけるだけではない、何ですかね、ま、精神的にもちょっと強くなっていたところだったと思うので、ちょっと冷静でいられたのかなって思います。
で、その病院に行って、何か、小さい個室、個室のようなところで、その担当の医師の方と面談みたいなのをしたんですけれども。そこで、その(救急で運ばれたときの)MR(画像)を見たのか、ちょっと覚えていないんですけど、その(受傷した部分が)3センチ以内だったので、一応、その対象には入るっていうことは分かりました、はい。それで、その手術の、映像を見せていただきました。
―― それは、実際に。
実際の手術の。
―― 日本ではないですね。
そうですね、はい。
―― じゃ、実際、こういうことやるよっていうような手術映像を見た。
はい、はい、見ました。
―― はい。
で、その当時は、東京のほうの、その医療、新しい医療のほうでは、中絶した胎児を使う医療が、もうすぐ臨床試験じゃないかって言われていたときで。その場合、東京にもかかっていたのはさっき申し上げたんですけど、その場合、外科的に、脊髄を開く行為は、するかどうかは決まっていないっていうことだったんです。ですけども、この関西の、その、臨床試験っていうのは、もう、外科的な手術をすることは、もう、決まっていて、それも鼻の奥の細胞をそのまま採って、刻んで入れるっていう、結構、荒く感じてしまうような、手術方法で。で、副作用として、嗅覚がもしかしたらなくなるかもっていうことは言われました。そして、一番ネックというか、うーんと思ったのが、わたし頸髄損傷なんですけれども、その頚髄の部分を外科的に開いて、そこにその鼻の粘膜を入れるわけではなくて、頸髄っていうのは、いろいろ神経が固まっていて難しいのか、ま、リスクが高いということだったと思うんですけれども、脊髄のほう、背中のほうにその鼻の粘膜を入れるっていうことでした。なので、どれぐらい効果があるかは、まだ、もちろん、臨床試験なので分からないんですけれども、その、手のほうの回復は見込めない、初めから。もしかして、ま、回復が見込めるんだったら、それは、下肢、脚の部分だっていうお話でした。
―― そういう話を聞いてどう思われました。
そうですね、その、これをやったら治りますっていう臨床試験でもないですし、それに、手の回復は全く初めから見込めませんっていうことだったっていうこともありますし、その、外科的に開くというのが、単純に怖かったっていうのもあります。そして、その東京の、その病院にもかかっていたので、そこのお医者さんの情報によると、その鼻の粘膜の何が効いているのか、よく分からない。なので、その培養するわけでもなく。その鼻の粘膜を奥のほうの粘膜をそのまま採ってそのまま刻んで入れるというのは、うーん、ちょっと怪しいんじゃないかっていう話を聞いていたので。なので、ちょっと二の足を踏んだというか、大丈夫かなっていう思いはありました。
―― 再生医療にかける思いっていうのは、結構強かったわけですよね。
そうですね、はい。
―― 動向をずっと追っていましたしね。それで、いざ、これをいいかもっていうようなのを聞きに行ったら、何だか不安なほうが大きいような気がするんですけど。期待っていうのは、その説明を受けたあと、それでもっていうのはなかったですか。
だんだん薄れてきました。
確か、手術の対象になる人が、40歳以下で、受傷した部分が3センチ以内で、受傷してから1年以上経っている方っていう、半年以上だったかもしれないですけど、特に、その急性期ではないっていうのが大きくて。で、3つの条件があったと思います。で、そのときに、ちょうど〇〇大学でも臨床試験があって、急性期の方だったので、その、慢性期に対する臨床試験が日本で始まるっていうのが、すごく、当事者にとっては大きなニュースだったので、その、すぐ説明会行こうと思ったんですけれども。はい。
―― えーと、じゃ、ご自身には、この3つの、今、覚えている、3つの条件全て当てはまったわけですね。
そうですね、でも、その、受傷した部分が、その3センチ以内っていうのが、ま、自分では分からないことなので、一番初め、その98年当時、救急で運ばれた病院に問い合わせて、確かMRIを取り寄せて、そうですね、取り寄せて、で、その大阪の病院に行ったんだと思います。その説明会終わってから。
―― では、説明会、説明会が、じゃ、終わったときには、特に何もなく、まあ、興味ある方は、ぜひみたいな感じ。
だったと思います、はい。
―― そして息子さんを連れて行って、「いざ治験やりたいんですけど」っていうふうに言ってさらりと断られたということになんですけど、どんなふうに断られたとか何を言われたかとか、何か思い出せることってありますか。
母親:あ、今回は、治験は、じゃなくてみたいに、何かとりたてて、こういう理由で治験できませんとかって、説明があったっていう記憶はないです。
―― 何か検査みたいなものはしましたか、そのときには。
母親:……検査しなかったと思います。皮膚科なんで血液検査したかな……。ちょっと覚えていないですけど。
―― 例えば、血液検査とか、こう、皮膚片をとか。
母親:うーん……。
―― 触診っていうんですかね、とりあえず息子さんを、こう、いろいろと診たりとか聞いたりとかしたうえで、……ああ、「治験は駄目ですね」って断られたのか。お母さまが行って、ああ、もうすぐ「駄目ですよ」って言われたのかとか。
母親:すぐ駄目だったと思います。……だから、何だっていうふうな感じは思いましたけど、すぐ駄目だったと思います。で、まあ、診察してくださった先生は、あまり、こう、話をされる方ではなく、淡々と、うーん、で、「今回は、じゃ、うーん、治験じゃなくって治療します」みたいにさらっと、うーん。
母親:病院に連れていって、大学病院だったんですけど、診察に連れていって、治験をしたいということで、診察を受けたんですが、今回、ちょっと治験はみたいな、さらっと、何か。
父親:うん、(定員が)いっぱいだったのかもしれないね。……(診察の)2回目だ、確か。それで、いっぱいだったんではないかと思うんですけれども、うーん、まあ、駄目だったという、そういう経緯はありました。
母親:わたしの印象としては、そういうの応募したらみんなやってくれるのかなってそんときは、思いましたね。初めてだったんで。その、周りにもいませんでしたので。あ、治験、ああ、やってくれるのかなって。まあ、こう、ちょっと実験台みたいな印象はありましたけれども、どこ行っても先ほど話したように、よくならなかったんで、何とか治してやりたいなって、うーん、思って。
―― そうですか。それは、お母さまが一緒について大学病院まで一緒に行ったんですよね。
母親:最初2人で行ったっけ。最初は、わたしが連れて、初日はわたしが連れて行ったと思います、初めてのときは。
―― 1回ではないんですね。
母親:それで、治験駄目ですっていうので、普通の治療に替わっちゃったんです。
―― ああ、で、それ以来、そこの大学病院で治療を受けるようになったということですか。
母親:でも、何回も行きませんでしたね。
父親:そうですね、それはさすがに遠くなりましたし。ね、今までの、比較的近いところで通っていた病院とは違って遠いところなので、通いきれない。
―― なるほど。
父親:それと、やっぱり、その、新しいお薬を使ってみたいというのが、わたしたちの、こう、期待だったわけですから、普通の治療で治るんだったらもっと早くから来ていますていうことなんですね。
―― で、実際に電話をしてみたとのことなんですけども、どういったことをしゃべったり聞かれたりしましたか。
そうですね、やっぱり、これまでの経緯であるとか、その、痛みの程度。で、全身に渡る痛みなのかどうかとか、そういうことを、細かく聞かれました。で、まあ、いろいろと質問があるたびに、ちょっと確認しますので少しお待ちくださいっていうことが繰り返されて、でー、また、やっぱり、例の質問(=「死にたいと思うことがあったか」「自殺につながる行動をとったことがあったか」という質問)が、うーん、出てきましたね。
―― そこでは、また、前回と同様に、正直にお答えになったわけですね。
そうですね。やはり、そこは、「はい」ということで答えさせていただきました。でも、そのあとに、すぐ、「確認をしますので少しお待ちください」って、やっぱりおっしゃって。で、その段階では何もおっしゃらなくて、次の質問に進んだんですね。で、次の質問では、その、これまでに次に挙げる病気にかかったことはありますかとか。で、具体的なその病名が挙げられて、かかったことがあれば、「はい」なければ「いいえ」で答えてくださいっていうことで答えたんですね。で、その質問のあとにもやっぱり「確認しますので少しお待ちください」って言われて、で、待っていたら、「参加基準に該当しませんので、このたびはご参加できません」っていうことを言われました。
―― そのとき電話の相手に、「何が悪かったんですか」とかいうふうにお尋ねになりましたか。
はい、今度は、もうもちろん聞いて、で、納得がいかないことも伝えたんですね。で、その、そこで、もう具体的に、その「先ほどの自殺に関する質問で、はいって答えたのがいけなかったんでしょうか?」っていうふうにも伺ったんですけど、「それについては、お答えできません」って言うばっかりだったので、わたしの中で、やっぱり、ま、ある意味、そのー、最初のときもそうですけど、電話の方っていうのは、もうあくまでも事務的な決められたものを何か時間内に質問しないといけないっていうような印象をすごく持っていたので、ああ、この方に聞いてもやっぱりしょうがないなっていうところから、チラシに書いている会社の線維筋痛症の担当の方に、お電話をしました。
「今、治験の、参加をしたいということで、電話を、チラシを見てしたんですけれど、こうこうこういう流れで質問をいただいて、で、最終的に参加基準に満たないということでお断りされました」と。うん、「わたしとしては、納得がいかないので、ちょっと説明をしていただきたいんですけれど」っていうことで。