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国立病院機構大阪医療センター臨床研究推進室長。
CRC(臨床研究コーディネーター)として臨床では消化器、乳腺外科、耳鼻咽喉科、泌尿器科等のがん疾患や循環器疾患、小児疾患等、幅広い治験や臨床試験を支援してきた。また、国立病院機構本部では治験専門職として全国の国立病院機構施設の医師やCRCの教育等を行い、厚生労働省では治験推進指導官として臨床研究・治験活性化に携わってきた。現在は、室長としてCRCの育成に力をいれている。大阪府出身。
語りの内容
既存のお薬というのは今、ある病気に対して世間的には認められている、厚生労働省もお薬として認可していて、一般的によく用いられている治療方法で行うことを既存のお薬、既存の治療法というふうに呼んでいます。
―― 他にも何か比べるためのお薬というのは使われるんですか。
そうですね。プラセボ薬というのを用いることがあります。
―― プラセボっていうものについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
プラセボというのは、お薬の有効成分を含まない、形状はお薬の形をしているんですけれども、有効成分を含まないお薬のことをプラセボ薬というふうに呼んでいます。これも臨床試験を進める上ではとても大切なお薬で、一見するとお薬の成分を持たない薬を飲むことって意義があるのかっていうふうに考えられる方もひょっとしていらっしゃるかも分からないですけれども、このお薬は効くに違いないとか、あるお薬は効くけれども、このお薬は効かないに違いないといったような思い込みを排除する上では、とても重要な役割を果たします。
専門家インタビュー一覧
- 臨床研究は人を対象とした医学系研究全般で、そのうち治療や検査の有効性や安全性を調べるのが臨床試験であり、中でも国からの承認を得るために行われるものを治験と呼ぶ
- 臨床試験とは、ある病気に対して、どのような治療方法が効果的で安全なのかを調べるために一定のルールに従って計画的に行う試験のこと
- 臨床試験は、世界医師会が作成したヘルシンキ宣言をもとに、各国で作られたいろんな法律やガイドラインにのっとって行われている
- 一般診療で使われる薬は、国から薬として承認されているものを用いるが、治験の場合は、国からの承認が得られていない薬や医療機器が使われることが多い
- 臨床試験や治験の場合は、患者本人が恩恵を受けることもあるが、主として同じ病気で苦しむ次世代の方々のよりよい治療法の確立のために行われる
- 臨床試験には、臨床研究コーディネーター(CRC)や製薬会社など一般診療とは異なる様々な人たちが関わっている
- 第1相試験では薬が人体にどういう影響を及ぼすかを調べ、第2相試験で少数の患者を対象に用法・用量を検討し、第3相試験で多くの患者を対象に有効性や安全性を検証する
- 臨床試験や治験では、患者を新しい治療を受けるグループと既存の治療を受けるグループに分けて結果を比較する、無作為割付(ランダム化)比較試験という方法をとることが多い
- 患者がどちらのグループに入っているか医師も患者も知っているのがオープン試験、医師だけが知っているのは単盲検試験、患者も医師も知らないのが二重盲検試験である
- 比較のためには既存の薬のほか、薬の形状をしているが有効成分を含まないプラセボを用いることがある
- プラセボを使う目的は、医師や患者の思い込みを排除した正確なデータを取るためで、臨床試験では重要な役割を果たしている
- 参加終了後一定の期間を経て、臨床試験のすべてのデータがまとまった後であれば、医師やCRCを通じて試験の結果を知ることは可能である
- CRCは臨床試験が安全に円滑に進むように、臨床試験の始めから終わりまで患者さんをサポートするのが仕事
- 何かちょっと誰かに相談したいなとか、これはどうしたらいいのかなっていうささいな不安や疑問があったときに、何でもCRCに聞くことができる
- インフォームドコンセントは、臨床試験の内容について医師やCRCから十分な説明を受けた上で、患者さんが正しく理解し、納得して同意すること
- 参加を決めたら同意書に署名をして、医師と患者さん双方で保管する。署名した後でも、いつでも同意を撤回することができるが、逆に同意していても試験に入れないこともある
- 医師やCRCに遠慮せず、どんなささやかなことでもいいので、分からないこととか、疑問に思うこと、不安に思うことがあれば遠慮なくいつでも質問してほしい