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インタビュー時年齢:59歳(2013年2月)・男性
鼠径ヘルニアの腹腔鏡下手術の局所麻酔薬の治験(第2相・プラセボ対照試験)に参加。
首都圏在住。2012年、鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術を行うことになった際、主治医より海外で用いられている局所麻酔薬の新しい用法、用量に関する治験を紹介された。家族に治験経験者がいたので抵抗なく参加した。治験参加ということで個室を利用でき、定期的に医療スタッフが訪れてくれたのはよかった。治験に参加したことにより、医療についての理解が深まった。
語りの内容
ちょうどインタビューを受けていたときに「結果が届きました」というふうに声をかけていただいて、それで、この印刷された用紙を手渡され、具体的な被験者の名前は出てはいないんですけれども、被験者の識別コードだけが出ているんですが。そこのところに、私の名前がですね、手書きで書かれていて、これに該当するという説明がありまして。結果的には、その投薬された治験の内容は、プラセボだったということがそのときに分かった次第です。
―― それをご覧になったときは、どういうお気持ちでしたか。
はっきり言うとですね、血の気が引いたというか。
―― 血の気が引いた。
青ざめたというか。そういう気持ちでしたね。
―― それは、こう、ショックを(受けたということでしょうか)。
そうですね。
―― ご自分の予想されていたものと違ったという。
そうですね。
―― その辺の思いをもう少しお話いただけると。
治験の内容としては、この手術を受けたあとに、最初は1時間ごとに麻酔科の先生が病室のほうにいらっしゃって、痛みの具合というものをパネルで、1段階から10段階ですかね、示すようなパネルを持って来られて。で、「今、自分が感じている痛みはどの程度のレベルになっているのか」という質問をされて。わたし本人は、そのパネルを数字を指で指すという……。痛みが強ければ10に近い数字、弱ければ1に近い数字というところを指で指すというかたちでお答えをしてですね。それが、約1時間おきぐらいに、麻酔科の先生がみえて、そのパネルを使って痛みの具合を確認されるということだったんですね。何回かそれをしているなかで、当初は1時間ごとに病室に来られたんですが、その頻度がだんだん長くなってきて。
そうですね、2~3日後ぐらいでしょうかね、麻酔科の先生がおっしゃるには「今回の治験で投与したのがプラセボではないでしょう」と。「100%の効果があるものではないにしても、何%かの効果がある、そういうものを投与されたんではないかというふうに思う。」というふうに。それはご本人の印象だったと思うんですけども、そういうお話があったもんですから、「じゃ、プラセボではないんだな」というふうに思っていましたから。
ただ、実際に紙で示された内容がプラセボだった。全然効果がないものだったというのを見たときにですね、まあ、何というんですかね、ある意味、ちょっと危険なことを経験したといいますか。そうだったんだということがあとから分かって、ちょっとぞっとしたといいますか、そういう印象でしたね。
インタビュー05
- 医師やCRCへの信頼感とあわせて、個室に入って安心して入院できるだろうという期待感が大きな要因だった
- 自分や家族の体験から、治験は怖がるようなものではないと自信をもって伝えられる。医療関係者と人脈ができるというメリットもあった(音声のみ)
- ヘルニアの手術の担当医から麻酔科の治験があることを聞き、引き続きCRCから詳しい説明を受けて、説明同意文書を家に持ち帰り、1週間以内に返事をした(音声のみ)
- 治験で自分にどんなものが使われたのか関心を持っていたので、プラセボのグループだったのかどうかも含め、治験の結果がわかったら教えてほしいと申し出た(音声のみ)
- 手術時の麻酔薬の治験中、医師の言葉もあってプラセボではないと思っていたが、その後、実はプラセボだったということを知りちょっとぞっとした印象を受けた(音声のみ)
- 治験に参加して初めて治験コーディネーターの存在を知り、多様な医療資格を持つ人がやっていることもわかった(音声のみ)
- 通常の治療では入院時の担当看護師はよく変わるが、治験ではずっと同じコーディネーターがついてくれて安心だった(音声のみ)
- 麻酔薬の治験で100%効き目のあるものから0%のプラセボまで効き目の異なる薬を使うが、実際にどれを使ったかは医師自身にもわからないといわれた(音声のみ)
- 手術を担当する医師から治験への参加を勧められたが、CRCから断っても一切差し支えないと説明されたので、断りにくいようなプレッシャーは感じなかった(音声のみ)