インタビュー時:76歳(2020年6月)
関係:妻(夫を介護)
診断時:夫67歳、妻65歳
共働きで夫婦2人暮らし。夫は50歳で1型糖尿病と診断され、56歳で退職した。67歳、糖尿病教育入院時にはアルツハイマー型認知症、翌年、画像診断で前頭側頭型認知症と診断された。血糖値不安定のまま、70歳前後で弄便(ろうべん)や不潔行為、昼夜逆転が始まった。親身になってくれたデイサービス施設が小規模多機能型居宅介護施設になったことを機に、看取りまでをお願いした。腎機能低下により76歳で逝去。
語りの内容
断片的な、言葉は発することはまだできていたんですけども。その頃同時にそのー、着替えに、ズボンをはくのに前後にはいたり、後ろ前とかひっくり返してはいたとか。上に着たり。ジャケットに足を入れたり。まあ、私も、あの「えっ?」っていうくらいもうびっくり。こういうことも起きるんだっていうことでね、何か記録を取ったんですよ(笑)。まあ、それはもう自分を落ち着かせるためっていうこともあるでしょうし。ちょっと距離を置くとか。あんまり近寄ってそんなことは駄目だとかって言いたくもないから、ちょっと写真を撮ったり、そういうことでやってきたんです。そいでメモを取るっていうのはそのー、K先生によく話を聞いてもらってっていうことがあったもので。ひと月に1回、行ってたんですが、その間のことを、私も忘れますから、こういうことがあったって。こういう状態でこういうことが起きたっていうことは逐一、メモするようにして。それでそれを持って、先生に診てもらうようになったんですね。
もちろん先生は本人に語り掛けてくれるし、「どうでした、この一月の間は?」とか何とかって、話を持っていってくれるんですけども。それに対してはほとんど、「変化ありません」とか、「特にありません」。そんなことで終わってたんですよね。だからそれじゃあしょうがないし、私があんまり本人の前で汚い話ばっかりするのも、嫌だなってこともあるし。先生の診察のつづりが、やけに厚くなって、どんどんどんどん厚くなってきたのは分かってたんですけども。極力薄くして、書き出しして持って行きました。で、それをまあ、パソコンでこう入れてたから、それは残っててあるんですけどもね。何か施設入るにしてもそれまでの状況はどうですかって説明するのにも、そこでピックアップしてちょっと編集して、お渡しするとかっていうことにはよく使いましたよね。
インタビュー家族48
- 糖尿病の教育入院期間中に大声を出して迷惑をかけた。退院後、認知症と糖尿病を地域の病院で診てもらうことになり、2つ目の病院で前頭側頭型認知症だと診断された(テキストのみ)
- 1ヶ月の夫の状態を記録して渡すことで、診察時に状態を詳しく伝えられるばかりではなく、自分の気持ちを落ち着かせるのにも役立った(テキストのみ)
- 子供がおらず先々のことを考えて、成年後見人制度を利用した。弁護士が、なんの報告もなく報酬を口座から引き落としていたことがわかり、申し入れをした(テキストのみ)
- 弄便(ろうべん)という不潔行為が始まり、手は真っ黒。夫は、引き出しやクローク、整理ダンスにも便を丹念に押し込んでいるが、悪びれる様子はない(テキストのみ)
- 要支援の人から要介護5までのご家族が参加して皆が体験談を語り合う、それが先生役となり、安心と自信を得られた(テキストのみ)
- 小規模だとみんなが1人の情報を共有しあってくれて、じゃまなくらい人がウロウロいる。一人ぼっちになることがないのがいい(テキストのみ)
- 夫の場合、認知症により、たがが外れて本来のかたくなな性格が暴走する場合もあるという説明に納得がいった(テキストのみ)
- 朝の洗面で手出しをすると、「うるさい」という感じで、夫の手が至近距離から飛んでくる。本人が無意識だとわかると、相手にできないなと感じた(テキストのみ)
- 夫は、食べたことも忘れてしまい、色々と食料をあさるようになった。冷蔵庫の生肉や、柔軟剤やタワシも口にしてたようだった(テキストのみ)
- 夫は新聞を取りに行くのは自分の仕事と思って、マンション1階の新聞受けを何度も見に行く。汚れた衣服やステテコ姿のままで、目が離せなかった(テキストのみ)
- 夫は自分の失態を指摘されたときなど、部屋にこもって同じ言葉を何度も繰り返し連呼している。忘れちゃいけないことを繰り返しているのだろうか(テキストのみ)