投稿者「dipex-j」のアーカイブ

認知症の語り

娘に勧められて警備会社のGPS位置情報確認サービスに契約した。その後、日中に夫がいなくなったときに探してもらって、すぐに見つけることができた

あのー、いなくなっちゃって、2回いなくなっちゃって。もう探しようがなくなって、「捜索願を出してください」ってて、お巡りさんに言われたんですね。で、写真と、よく分かる写真も一緒に出してくださいって言われて、そのときに本当にちょっと途方に暮れちゃったんです。かわいそうにと思って。そしたら、あの、娘が「お母さん、ココセコムどう」ってて、「そういうの付けたほうがいいよ」っていうふうに薦めてくれたんです。
そいで、付けまして、そのまだ、あと1回事件があって。昼中いるはずの人がいないんですよね。で、どこ行っちゃったんかしらと思って。そんで、もう、うちの周りもずっと探してもいないんです。ほんで、うちへ見えた人にも聞いても、あの、会わなかったとか、知らないとか言われるんですよ。で、怖くなっちゃって、で、ココセコムに連絡して、あの、「ちょっといなくなっちゃったんですけど、あの、探していただけますか」って言いましたら、そしたら、「ここの国道の○のほうに向かって、あのー、ガストと自由書房の間に、いますよ」って言われたんです、調べると。で、私、はじめ、走ってったんです、自動車で。いるかしらと思って眺めてたら、確かにいました。
そいで、私ね、もう救われて。ああ、お助けだわと思って。で、「どうしてるの」って言ったら、これから向こう、○のほうへ向かって歩いてくんだって。で、「そんなん駄目だから乗って帰りましょう」ってって帰ってきたんですけど、本当に、あの、ありがたかったです、ええ。探してくださって。その通りでした、いる先が。本当にだから、何かね、あの、月ね、500円ぐらいで自動振込で手続きしてくださったんですけど、あのー、助かります。

―― ああ、そうですか。

ええ。で、もう今はお守りさんのように…。あの、最初は違和感があってね、よく外して違うとこ置いてあったりしましたけど、今は、お風呂入るとき以外は、いつでも付けてます。で、1週間に1回、あの、充電するんですね。それだけのことだもんですから、本当ありがたいと思ってます。

認知症の語り

夫は夜中に徘徊して警察の世話になったが無事に戻ってきた。本人は自分は夢遊病者になったみたいだと日記に書いていて、外に出ていくはっきりした理由はないようだ

あのですね、夜中の2時ごろにね、2回徘徊しちゃって。で、2回ともお巡りさんのお世話になって。それで1回目は、道で通行してる方が、警察に通報してくださったんですね、夜中の1時半ごろ。で、連絡が来て、すごくご親切な方に助けられたって感じで。2回目は、あの、やっぱり同じ時間にいなくなっちゃって、それで、お巡りさんのほうへ届けたんですけど、見つからなくて。朝、結局は、あの、6時ごろ戻ってきたんですけども。もう家族は、どこかでね、亡くなってるか、もし無事戻ってきたとしても、ま、絶対、救急車騒動だわとかね、そういうふうに思ってたんですけど、運良く、あの…タクシーにどこかから、乗って、ほんで、あの、チャイムを、うちのチャイムを押してくれたもんですから、そいでもう、そのときも本当にありがたかったんですけど。

―― あの、徘徊2回っておっしゃいましたが。何かお気づきのことはありますか。例えばどういう理由でそうなったのだろうかとか。

はい。それが、あの、本人は、特に理由はなくって、夢遊病者になったみたいとか、日記を書くくせがあるんですよ。で、その日の日記を読みましたら、あの、自分はどうも夢遊病者になったみたいだな、とかってって書いてましたけど、ええ。何か私も、その辺、根拠が分からないんですけど。今でもですね、夜中にあの、トイレ起きたりしますと、すると反対方向行って、どこか行こうとするんです。で、目が離せないんですけど、どういうことなんですかね。あの、ちょっと外へ行ってみたいとか、そういう感じですかね。特に、何があったから外へ行きたいとか、そういう理由はないみたいですけど、ええ。

認知症の語り

散歩中の夫が迷っていると友人が電話をくれるので、偶然を装って車で迎えに行ったりしていたが、次第に家から300メートルも離れていないところでも迷うようになった

ですから、もう本当、お友達にはいろんなお友達に協力してもらいました。あの、隠しませんでしたので。「こういう病気になったんだ、だから、どういう…どこで何が起きるか分からない、迷子になるかもしれない、だから、そのときは協力お願いね」っていうのは、私、お友達にみんな言ってあったんですね。
ですから、1人で散歩もしてました。で、散歩してても違う方向行ってると、やはり、あの、お友達が、主人に言ったら傷つけるからって言って、私に電話くれたんですよ。で、「いつもだったら、もう帰る方向なのに逆行ってるよ」とか言って。で、その場所まで車で迎えに行って、偶然私は通りかかったっていう形で、主人を車に乗せて。「こんなとこまで歩いてきてたんだ。もうそろそろ帰ろうか」って言って。そうすると、とがめてるわけじゃないので、「そうだね」って言って乗るんですよ。うん。で、乗って帰ってきてたんですね。
で、そうこうしてるうちに、やはりもう最終的には、何年ぐらいかな、えー、平成、そうですね、13年までは歩いてました。14年ぐらいかな。うちから、2、300メートルも離れてないとこで迷子になったんです。それが、ちょうどうちから角、そこがちょうど角っこ、角だったんですね。で、そこから右へ来るか、左へ行くかの境になるんですね。で、そこで、行くときに右へ曲がって行ったので、帰り左に曲がって来なきゃいけないとこなんですよ。で、それをどっちに行っていいか分かんなく、迷ってたみたいです。で、そこの近所の奥さんから、「ご主人が迷ってるよ」って言って電話くださって。で、場所聞いたら、目と鼻の先だったので。ああ、もう1人では散歩だめだなと思って、それからは、あの、私が散歩一緒に行くようにしたんですね。

認知症の語り

母はどんどん外に出ていき、疲れて倒れるまで歩く。娘が「帰ろう」と言っても帰らないが、知人がたまたま通りかかったように装って「送ろうか」というと素直に帰る

で、もうちょっと大丈夫だろうと思ったんだけど、もうどんどん、どんどん、外に出ていくようになって。で、もう本当にバタッと倒れて動けなくなるまで歩くんですよね。で、一緒に歩ってたんだけど、で、「帰ろう」って言っても、「嫌だ」って言うし。そいで、その、一緒に働いてる人に電話してね、あの、「ここ通りかかったみたいにして来てくれる」って言ったら、すぐ来てくれて(笑)。で、その人が来て、「送ってこうか」って言ったら、「ああ、良かった」ってわたしが言って、もう(笑)。全然駄目なのに。そいで、すぐうちに帰ってね、うん。で、やっぱりね。

―― やっぱり、あの、家族の言うことにはなかなか賛成してくれないけど、他人にはいいとこを見せて。

そう、そう、うん。そうなんです、ええ。

―― ていう感じですかねえ。うん。

で、機嫌も直ったりして、うん。

認知症の語り

母は娘の家にいても自分のうちと思えないらしく、父のご飯を作らなくちゃと言って出て行ってしまう

まだ雪がある時期でしたけど、もう何か、うちに帰らなくちゃって。もうそのころになると、どこ行っても、自分の居場所がないみたいな感じになってるんですよね。で、「自分ちに帰る」って言って、で、自分のうちに行っても、たぶん、何かあのー、ここが本当に自分のうちっていうふうに思えないんじゃないかな、っていう感じになってた時期だったんですよね。で、何かあのー、父のことをね、急に思い出して、ご飯作んなくちゃいけないっていうふうに言って、出ていったりするようになって。

認知症の語り

母は手洗いで粗相をしても後始末をせず、黙って寝てしまう。「後始末をしたくないと言っても責めないから」と言ったら、失敗したことを言うようになった(音声のみ)

ああ、排泄のことなんかも、まあ、自分でできていますね。たまに、お手洗いで、こう、ちょっと粗相があったりするんですけれども。やっぱり、疲れていて眠いと、もう内心どうせわたしが(後始末を)やるだろうと思って、そのまま分かっているくせに寝ちゃったりするんですよ。そうすると、次の日、わたしが烈火のごとく怒って、「分かるでしょう」って言うと、にっしゃあ~と笑うですよね。もう、そういうこと、「別にね、疲れていても、自分で全部やれとは言わないけれども、一言、わたしに言ってから寝てちょうだいね」ということ。…とか言って…ま、そういうところもやっぱりあるので。その辺は、もう、できることとできないこと、あと、その時の気分でやりたいこととやりたくないことと、やっぱりあると思うので。その辺は、もう、ね、「後始末をやりたくないって言っても責めないから、一言、言ってね」って言うと(笑)、言います。あんまり、大きな声じゃ言えないですけど。

認知症の語り

夜中に階下で物音がして見に行くと、レビー小体型認知症の父が、アルツハイマー型認知症の母を車いすに乗せ、真っ暗な室内をぐるぐる回っていて、どうしたらいいかわからなかった

そして、今度、…だんだんに母の状況が、そのアルツハイマーを、進行遅らせるとか、そういうことも一切あまり考えてなかったので、母の状態がだんだんこうひどくなってきて、要求が強い。それから、夜中にやっぱり、昼夜があまり分からなくなって、自分でその、朝だと思って、起き出すんですけど、自分が歩けないことを忘れてたりして。それで夜中に、立とうと思ったり、また骨折したら大変って。で、実際にいろいろあったんですね、やっぱり。転がっちゃったりして、ベッドに戻すのが大変だったり。で、父がそこに、今度せん妄状態でそこに入ってくると(笑)、夜中はね、もう、どうしていいか分からないみたい――自分はどうやって乗り越えてきたのか、今ちょっと思い出せないんですけど、あのー、すごかったですね、やっぱり――うーん、何か、「何という世界にいるんだろう、私は」って、いっつも思ってましたけど。
で、あるとき、何か、真夜中にガタガタゴトゴト音がするから、何だろうと思って、(降りて)来たら、もう父と母は寝てるはずなのに、そうしたら、もう二人とも起きてて。で、電気はついてないのに、母の車いすを父が押して、ここをぐるぐる、ぐるぐる歩いて。で、そこまで玄関の所まで出てって、で、また戻ってって、ずっと、ぐるぐる回りしてるんです。で、母は何かぶつぶつ言ってて。で、父はね、あのー、ただ押してるんですよ。で、それ見たときにもう(笑)、真っ暗な中でやってるんです。電気もつけないで。で、それ見たときにもう、な、何なんだろうと思って(笑)、どう、私はどう、何をしたらいいんだろ、どうしたらいいんだろうって、それが、うーん、やっぱり、こう、それが2回目のショックか3回目のショックか分からないですけども、ショックでしたね。

認知症の語り

失禁で汚れてしまったシーツと布団を、父が浴槽に入れていたのを見つけてイライラしたが、あとから思うと父は父なりに解決しようとしてやったことなのだろう

あとは、いろんなこう、普通の、家族から見たら困ったことをやってくれるんですね。例えば、シーツ、たまたまちょっと粗相をして、汚れて、夜間のね、失禁で汚れてしまったシーツとかを、あの、本人は多分、片付けようと、洗濯しようとか思うんでしょうけど、それが布団も全部一緒に丸めて、あの、浴槽に入れてあったりするんですよ。で、その、それを見付けたときは、私はもう、「えっ?!」って、イライラ、イライラするわけなんだけども、後からよく考えると、父は父なりに解決しようとして、「何とかしなくちゃ」って。で、それで、「あっ、そういうことなのかな」って気が付いたのはだいぶ後でしたけど(笑)、何回も何回も繰り返して、分からなくてしているわけじゃなくて、父なりに、解決しようと、してるんですよね。それは、あの、だんだんに分かってきましたね。何かをこうしなくちゃって、これはきっと、自分でできると思って、洋服でも何でもそうですけど、あのー、何とかしようと思ってるんですよね。

認知症の語り

高血圧と糖尿病(※)がもとで脳梗塞を起こした父は、7時のNHKニュースを見ながらご飯を食べられないと怒りだし、コンビニであんパンを3個も買って食べたりする(テキストのみ)

何か、父親が、7時のNHKのニュースを見ながらご飯を食べなきゃいけないっていう、何か、こう、決まりがあったというか、みたいなんですけども、そういうことも守れないので、働きながらだと。で、普通のお父さんだったら、お母さんががんで入院していて、娘も転職したばっかりでって分かってくれるはずだって、まだ思う、思いが強かったので、認知症のこともよく分らなかったので。いくら言っても、「何でご飯がでないんだ」と怒ったり、コンビニに行って――また倒れられたらこっちは困るので、甘い物、できるだけ控えてほしいんですけど――コンビニに行って、何か、あんぱん3個とか買ってきて食べていたりとか、もうぞっとするようなことをしていて。そういうのが手いっぱいになって、どんどんとにかくいっぱいいっぱいになってきましたね。

認知症の語り

神経質な母は父の下(しも)の世話をすごく嫌がり、失敗すると猛烈に怒るので、怒られたくない父は早くからおむつをつけるようになった(テキストのみ)

わたしがメインで看ていたころは、トイレは、わたしも、まさかトイレができていないっていうのは、頭にもなかったので、その認知症の人がトイレができなくなるのがいまいちよく分かってなかったので、ちょっと気にしていなかったんですけど。で、何か、母は、そういうのがすごく敏感で、「お父さん、臭いよ、おしっこ漏れてんじゃない」とか言ってたような気がしていたんですけど。でも、そんなの、ほっといて、死なないしとも思って、濡れてたって臭くなって死なないしとか思って、…何か、あんまり気にしていなかったんで。徐々に徐々にその辺をおかしく、下(しも)の…ほうも、おかしくなっていたのかもしれないですね。
で、母は、非常に神経質なので、その辺を気にしだしたら、やっぱり、お父さん漏らしているみたいな話になって。で、おむつをはかせようみたいな話になったんですけど。多分、汚すことに関して、母がすごく父を怒っていたんですよ。で、それで、また、わたし何か意外に、そういうトイレ系は、気にしなかったので、父を怒ったっていうことはなかったんですけど、食事では、父とわたしはけんかすることが多くて。母は、未だにですけど、下(しも)の世話っていうのがすごく嫌みたいで、…そこですごく父と母っていつもけんかをしていて。で、モーレツに怒るので、母が。
おむつをはいたら、怒られないじゃないですか、汚れないので。大体の人がよくそのおむつをはくのにけんかするっていうか、脱いじゃったり…はくのが嫌だって拒んだりとかっていう話を聞くんですけど、うちの場合は、母に怒られなきゃいいやっていうので、父は、意外にあっさりおむつをはいたっていう、「あれ?認めるんだ」みたいな感じで。…意外に早くからおむつをはきだして。