投稿者「dipex-j」のアーカイブ

認知症の語り

一人で勉強しようと思うと脳が疲れたような変な感じがして、拒絶反応のようになる。そんなときはテレビを見たりぼーっとしたりしていると楽になる

それでまあ何とかもっと勉強しよ、思うんですけども、それがしようと思うと、もう「疲れるぅ」っちゅう、頭の脳がもうあのー…そういう反応するもんで、なかなかできないんです。

――脳が「疲れたぁ」って感じになるんですか。

はい。

――それは病気になる前元気なときにはなかった感覚ですか。

そうですわね。分かっているんですけど、そのいろいろ勉強したらそういうふうになっていかないってことは分かってるんですけども、しようと思うと、「もう疲れたぁ」って、「脳が疲れた」、体じゃなしに、「脳が疲れたぁ」っちゅう変な感じが。それがもう、ほうやで、できないけども、一緒にそのあの…、曼荼羅ぬり絵でもしてくれると…まあ一緒に…楽しめるんですけど。

――一人で何かやろうとか思ってやるとすごくうまくいかなかったり、疲れたぁって感じになるんですか。

はい。

――頭の中がどんな感じですか。

ちょっと(笑)…口には言えないような感じ。

――痛いとかぼーっとするっていう感じ。

そっちやなしに、口に言われやんような…拒絶反応する。(笑)

――拒絶反応みたいな感じ。そういうとき、そういうふうになったときはどうするんですか。

もう…しなくて、何かテレビ見たり、ぼーっとしたり。

――ぼーっとすると少しその頭の中が楽になる感じします?

そうですね。

認知症の語り

漢方で冷えを改善したら楽になったし、ツボの刺激で意識障害が治ったりもする。医師は薬以外に進行を遅らせるものはないといったが実際にはやれることはいくらでもある

で、あのー……いろんなことをしました。わたしも、その、何とかこの症状をしなくちゃと思って、いろいろ、例えば、漢方の専門の病院に行ったり、それはすごく効果がありました。なかなか、その、自分に合う漢方薬に行きあたるまでが大変。もう、こう、これも駄目、これも駄目、これも駄目って次々とやって。でも、あのー、……ま、もちろん、その認知症っていうか、根本治療にはならないんですけれども。例えば、わたし、あの、…冷えがすごくひどくて。で、夏でも寒い、真夏でも寒くて、汗も出なくてっていう、あれが大変だった。夏は大変だったんですけれども。その漢方薬でそれがすごく改善されて、汗も出るようになったり、あのー、とても楽になりました。
で、あの、…あと、お灸とか、あの、ま、鍼灸ですね。それも、ま、お金があれば、そういうところに行ってやってもらうんですけども、あの、自分で一生懸命、このプロが読むような…本で調べて、で、そこに自分でお灸をするとか…いうことをしまして、それも、すごく効果があるっていうことが分かりました。その、体も楽になりますし、あの、例えば、その意識障害をおこして、ちょっと朦朧(もうろう)としてきたときも、あのー、…ま、そのツボの刺激で……治ったりするんですね。それも自分で分かりましたし。あと運動なんかもすごく…効果があります。あの、軽い運動ですけれども、運動もすごく体調がよくなりますし。
それから、わたし、……診断されたときに、「わたしの…病気の進行を遅らせるために、何を、何ができますか」って聞いたときに、……「ないんですよ」って言われたんですよね。「進行を遅らせるものがない」って言われたんですね。で、まあ、ただ、「今まで通りの生活をしてください」って。「今まで通りの生活をしてください」って言われても、もう、仕事もできませんし、それは、ちょっと無理なんですよね。でも、そのー……あ、違うんだなって。
進行を遅らせるもの、症状をよくするものはいくらでもある。何か、こう、「ああ、気持ちがいい」とか、「ああ、楽しい」とか、あの、すばらしい絵を見て、こう感動するとか、「ああ、すばらしい」って、美しい景色を見たり花を見たりして感動したりすると、…体調がよくなるんですね。……あの、何か脳にそういう物質が出ているんだと思うんですけれども、なので、…いくらでも、何とでもできるんだっていうことを、…あの、…自分でよく分かりましたね。

認知症の語り

けん玉が脳の血流をよくすると聞き、意識障害が起こった時にやってみたらよくなった。小学生の理科の実験みたいな感覚で面白がって試してみることで気持ちも明るくなる

要するに意識障害というのも、あの、一時的に脳の血流が悪くなっている状態なんだなって自分では思っているんですけれども。で、そういうことが、自分で確認できるので、あの、自分でいろんなことをやった。これは、効くなとか、これは効かないなあとかって。そういうの、いろいろあります。それ、面白くて、……しばらく前に、「ためしてガッテン」で、あの、けん玉が脳の血流を良くするってやっていたんですね。で、わたし、もう次の日買いまして(笑)で、やったんです。効きました(笑)。笑っちゃいましたけれども。
いや、何か…意識障害をおこして、あ、駄目、気分悪いと思ったときに、あの、ま、それも、一応、それって段階があって、ちょっと微熱のような段階とか、38度ぐらいの段階とか、40度ぐらいの段階だと、もう動けないのでもうそのまま寝ちゃうんですけれども。その、何か、ちょっと、37、38度ぐらいの、ちょっと、ああしんどいってぐらいの段階のときに、その、けん玉をやってみたら…治ったんですね。で、あ(笑)脳の血流よくなったんだ(笑)。だから、その、…ねえ、何か、すごい装置を頭に付けなくても、自分で分かるっていいなって(笑)思いましたけれども。

そうですね、ですから、ま、いろんな…不便はあるんですけれども、あの、そういうふうに自分でいろいろ…試して、……で、それも何ていうのかな、あの、……こう、……きちきちに考えてやると、あれなんですけども、楽しんで、何か、面白がって、何か小学生が理科の実験しているような感覚で面白がってやっていますね。はい、そういう、やるのも楽しいし、あの、で、効けば「やったぁ!」っていう感じで(笑)、多分、「やった!」と思うと、また、脳からドーパミンがでるんでしょうし(笑)。
はい、そんなふうにしていますので、はい。で、あのー、……そういうふうに、よくなると、こう、好循環…になるんですね。こう、たい、全て好循環、あ、やったっていうのは、こう、…調子がよくなる。調子がよくなると、こう、体の調子もよくなるので、こう、より気楽に外出もできますし、あのー、そうすると、もう気持ちも明るくなるしっていうことで。で、あのー、脳も何かちゃんとフル回転している感じがするんですね。で、どんどんよくなるんですけれども。

認知症の語り

体調も注意力も計算能力も、理由はわからないが突然よくなったり悪くなったりする。まるで頭の中に無数にあるスイッチがオンになったりオフになったりしているようだ

どうも頭も、頭もよく回らなくて、何かミスばっかりしているみたいになっていくの、ときは、結構つらいんですけれども。…あの、……ま、でも、そうなってもまあ、「また、いずれよくなるよ」って、自分で思って悲観しない。あの、「大丈夫、大丈夫」って思うのが、すごく…大事だなって…思っていまして。あの、すごく…あるんですね、なかなか説明しにくいんですけども、こう、感覚的には、こう、頭の中にスイッチか無数にあって、何かそのスイッチが常に、こう、カチカチカチカチ、…オンになったりオフになったりしているような感じなんですね。
ま、体調も、あの、どうかすると、いいなと思っていると、突然またカチンと切り変わって、…何か悪くなってしまったり。理由が分かりませんけれども。だから、いろいろ能力も、その注意力にしても、あのー、いろんな能力にしても、何か突然オフになるときがある……ので、…あの、…だから、自分では把握しきれないんですね。だから、自分がそのときに…どういう能力が今オンになっていて、何がオフになっているかっていうのは、その、やってみて初めて分かるっていう部分があって、あのー、自分では、ま、もちろん、その、意識障害おこしているときとか、体調が悪いときは、もう、全部、全体的に駄目なんですけれども。自分では、別に体調は…問題ないなと思っていても、…何か、こう、元気で散歩しながら、よし、じゃ計算もしょうと思って、100引く7って…言って分かんないときがあるんですね。えーって、自分でびっくりするんですけれども、ま、そんときは、自分ではいいと思っているのに、何か計算能力がオフになっているみたいな…ときがあって。でも、それも何かオンになるときがあって、じゃ、もう1回やってみようと思うと、別にするするってできるときもあるんです。じゃ、いつできていつできないかは、自分でも分からない……ですけれども。
…ですから、その……認知症っていうものが、あの、…ねえ、よく、「認知症はもの忘れの病気です。認知症になっても…感情は残ります」とか(笑)、何かねえ、えらい先生がテレビとかでおっしゃいますけども、そういうものではなくて、…わたしは、その、…わたしはその「認知症」という言葉自体、もう、もうやめるべきだと思っているんですけれども。あの、……「認知症」っていうよりも、その…「機能の障害」…いろんな、無数の認知機能がありますよね、人間には。その無数の認知機能のうちの一つとか二つとか三つとかが、その、ときどきオフになる…ときどきオフになってしまう。でも、またオンになる。そういう病気だっていうふうに…とらえていて。別に、あの、…全体が全ての機能が、衰え、だんだん衰えていくとか。そういう病気ではない。…ただ、そのオンになったりオフになったりする…病気…っていうふうに考えています。

認知症の語り

ストレスのかかるひと言で毒を飲んだようにぐったりしてしまう。また、台風が近づいてくると血圧もどんどん下がって拷問にあっているような苦しさを感じる

だから、…ストレス、ストレスがかかったら、もう、その瞬間に、悪くなるのが分かります。もう、その、その瞬間から、こう、動けなくなる感じがあるんですね。何か、あのー、非常にストレスのかかるような言葉を一言言われた瞬間に、もう、もう、ぐったりして動けなくなったりとか。毒を飲んだような感じでぐったりしちゃいますね。で、ストレスが一番悪いです。
…で、あの、天候もそうで、雨の日とか、一番悪いのは台風。ま、低気圧が駄目なんですけども、ま、自立神経…の障害もあるので、そのせいなのかな何なのか分かりませんけれども。あの、台風が近づいてくると、やっぱり、動けなくなって、ぐったりして、苦しい、すごく苦しいんです。何か、もう、「助けて」(笑)、何か、「ここから出して」みたいな、出られませんけどね、何か。あの、そういう感じで。
で、この前、台風が来たときに、血圧を測ってみたんですね。どうなっているんだろうと思って。そしたら、台風が近づくにつれて、血圧がどんどん下がっていきました(笑)。…測り初めは90だったんですね、上が、90だったんですけども。どんどんどんどん下がってきて、80……81とかになったんですね。で、もう、もう、その辺から、もう、朦朧(もうろう)として、もう、もう、それ以上測れなかったんですけれども。で、しばらく、もう、何か死んだように寝ていて。で、夕方、台風が過ぎたら上がるという。それ、いつでもかどうか分からないんですけども、そのときはそうでした。
ま、台風のときは、ま、そうでもないよっていうお話も聞いたことがあるんですけれども、わたしの場合は、その低気圧で、…拷問にあっているような苦しさを感じますね。だから、台風が来るっていうと、はぁ、…何か怖いっていう…感じになりますね。

そうですね、あと、寒暖の差ですね。あの…1日の温度差が激しいとか、きのうはあったかかったのに、きょうはすごく寒いとか、そういう気温のアップダウンが、で、すごく体調が悪くなります。だから、あの、春先とか……春先とか秋とか、ま、梅雨もあまりよくないんですけれども。…春先も何か、あの、毎年ひどく具合が悪くなって、毎日ぐったりしていますね。はい。…ので、まあ、個人差があるんでしょうけれども、そういうことにひどく影響を受けます。

認知症の語り

幻聴や幻臭、体感幻覚は初めは本物かどうか確認しようとしたが、何度も続くと精神的に参ってしまうので、今はもうどっちでもいいやと思って確認するのをやめた

幻聴は…あの、物音が聞こえたり、誰もいない部屋から人が何かあら探しをしているようながさがさいう音が聞こえたりとか、何か、外で何か放送しているような声、…声は、まあ、あまりないんですけれども、ま、声みたいなものが聞えても、何を言っているかは聴き取れない。でも、何か、こう、何かハウリングしているような、ハウリングではないですね、こう、こもったような、マイクでしゃべっているような…ものが聞えてきたりとか。聴き取れないですけれども。ていうようなことが、ときどき、はい。

で、あと体感幻覚っていうのは、あの、それは、数回でしたけど、……切れていないのに、まるですぱっとナイフで切られたような痛みがあるとか。突然、こう、火を…もう押し付けられたんじゃないですけど、たばこ火か何かをすうっと近づけられたように、「アツッ!」ていうような熱さを感じたりとか。ま、それもレビーの症状なんですけれども。ほかの方は、こう、体の中を虫がはっているようなむずむず感を感じるとか、かゆいとか痛いとか、いろいろあるみたいなんですけれども。それ、…数回でしたけれどもありましたね。でも、それも、こう、結構リアルなので、…その切れた感覚も、あの「イタッ!」っていう…感じが、うーん、日に何度もあると、結構つらい。
……あの、幻臭もつらいですね。その、本当かどうか分からないので。例えば、台所で何かすごい腐っている嫌な臭い、何か大体悪臭なんですね。でも、いい匂いっていうのはなくて、大体、みんな悪臭で。で、「えっ?」って、こう、探しまわるんですけれども、ないので、幻臭かなと思うんですけど、その確認のしようがないというか。……あの、続くと、あの、参ってきますね。それが毎日続くと、…何か、こう、精神的にすごく、こう、ダメージを受けて、参ってくるんです。もう、もう、ずうっとないので平気ですけれども。あの、ちょっと振り回されますね。
だから、……幻聴とかも、あの…最初は、もうあわてて部屋に入って、で、…確認しようとしたら、もう、今、確認するの止めたんですね。もう、今、今、幻視、虫が飛んでいても、これは幻視でも本物でもいいやって、どっちでもいいやって。別に、その、誰もいない部屋から、がさがさがさがさ音が聞こえても、ま、いいやって。本当の泥棒でも何でもいいやって(笑)。今は、思っていますね。

認知症の語り

メマリーを飲んでいても物忘れがよくなったとは感じなかったが、検査の結果から薬を飲まないようになったら物忘れがひどくなったので薬が効いていたのかと思った

――最初にどうも自分は人の名前を忘れたりして変だなって思ってから、あのまあ今日まで、その忘れやすさっていうのは何か変化はありますか。

だんだんまあ、あの忘れるなとは思うてたんですけども、1月からそのメマリーっちゅう薬飲まんようなったら急に、もう忘れることが多いです。

――そのメマリーっていう薬を飲まなくなったいきさつについて少し教えていただけますか。

何をです?

――メマリーを飲まなくなったその理由。

理由は何か、検査の結果やめた方がいいんじゃないかっちゅうことで……、あのー、もう出してもらえやんようになったんです。

――そのことについてはどういうふうに思いましたか。お薬を出してもらえなくなったことについては。

…そのときはそんなに、まあ、あの、忘れがひどくなるとは思いませんだもんで、あれですけど、考えてみたらあのお薬があの今まで効いとったんかなと。

――じゃ、そのお薬やめて物忘れが前よりもひどくなったなっていうのは感じられるんですね。

感じます。

――お薬を飲んでいる時は自分の中で「調子が良くなったな。前よりも忘れなくなったな」っていう感覚はあったんですね。

ま、良くなったとは思わんけども、まっあのー、飲んどるとそれが遅なるちゅうか、遅くなってくちゅうあれで、良くなったとは感じません。治る薬じゃないもんで……そでけんども、ま、あの、無くなってからは気が付きました。あの薬のおかげやなって、今までは。もっとそれ飲んでなかったらもっとずっとその先がひどくなってたかも分かりませんわね。

認知症の語り

幻視はどれだけ見ても本物にしか見えない。動くはずのないものが動いたら幻視とわかるが、車が自分に向かって動き出したので思わず止めようとしてしまった

…レビー小体型認知症の幻視は、認知の変動で、調子が悪いときに見えやすいっていうふうにどこにも書いてあるんですけれども。でも、わたしの場合は、その具合が悪いとき、頭がぼんやりしているときとか、何かほんとに、ぼーっとしているときもあるんですけれども、そういうときに見えたことは一度もなくて、いつもほんとに、あの、今と同じ状態。だから、朝、新聞を、朝、新聞の社説を読んでいるときに虫が飛んでくる…っていう…状態で、あの、……全く正常な意識、全く正常な思考力を持っているときに見えます。
なので、うちの中に人が見えれば、あの、自分で分かります、「あ、これは幻視」って。で、分かってても驚きます、最初はもう。うあーって、突然出ますから、…驚きますけれども。「あ、でも、ここに人がいるはずはないから幻視なんだな」って思います。だから、その、考えないと…。考えるんですね、一生懸命。でも、虫は考えても分かりませんから、あの、じぃっと見るんですけれども、…どれだけ見ても分からないです。本物にしか見えないので。ただ、その、じーっと見ていて、目の前でぱっと消えたら、「あ、幻視だったんだな」っていうことですね。
……はい、なので、あの、だから、……そう、人に分からないように、すごく気をつけています。そんなに、もう、今、ずうっと見ていませんし。あれですけれども、……でも、分からないので、やっぱり、とっさに…失敗することがあるんですね。例えば、…駐車場で、わたし、いろんな物が動いて見えるんですけれども。……例えば、床の模様とか。あの……机の上のごまとか、ちょっと色のコントラストの強いものが動きやすいんですけども、動くんですね。例えば、窓の外の風景が、電車に乗っているときのようにざぁーっと横に動くとか、いろんなものが動くんですけれども。それで、その駐車場の車が自分に向かってざぁーって動いてきたように見えたときがあって、あわてて止めようとしたんです。……でも、そしたら、一緒にいた人に、……「気でも狂ったか」って言われたんですけれども。あの、……やっぱり、とっさに、とっさに、そうとしか見えないので、…まあ、ありえないものなら、窓の外の景色が流れたりしたら、こういう幻視が見えるんだって、何か、自分でも、はぁーって思いますけれども、その、車は、ちょっと、とっさにほんとに動いたと思ってびっくりしました。
でも、…だから、その、症状と自覚していない、そんな症状があると思っていない方が、例えば、家の中に…人を見て、棒を持っていって振り回すとか、警察に電話するとか……っていうのは、何かBPSD(認知症の行動・心理症状)とか言われますけれども、それは、決してそういうものではなくて、全く正常な反応、正常だからこそする反応…っていうことは、この、自分がなって初めて…よく分かりました。

認知症の語り

認知症になると性格まで変わると言われるが、本人からすれば不安と悲しみをいっぱいためて精一杯やっている中で、思わずこぼれたひと言でそのように見られてしまうのか

…味がほとんど分からなくなって、なので、その、…料理をするときに、あのー、味見をしても分からないので…とても苦労しました。で、匂いが分からないと、あのー、料理も困るんですね。…どうしょうって思いながら毎日…やっていたんですね。いや、でも、家族には言わなかったんですね、それは。
で、…そんとき、ある日、あのー、夫が、…あのー、お味噌汁を一口飲んで、「何かこれおいしくないな」って(笑)言ったんですね。「おいしくないな」って。…で、何か、そんとき、あのー、わたし、めったにというか、ほとんど怒らないんですけれども、…あのー、で、怒鳴るということも、もう、夫に対してはまずないんですけれども、…何かそのときは、…「じゃ、自分で作ってよ」って(笑)怒鳴ったんですよね。ていうのは、やっぱり、もう、……そこまで、自分の不安とか、…もう自分は駄目じゃないかとか、いうものが、もう…たまりにたまっていて、それがその夫の一言で、…何かくずれてしまったみたいな…感じで。でも、夫はそんな…分かりませんから、…何だみたいに(笑)、何かすごい、あのー、びっくりしてとまどっていましたけれども。そんなことがありまして。
…で、その、その少しあとだったか、あのー、ネットで、わたし、認知症とかよく調べているんですけれども、あのー、若年性認知症って書いてあったんで読んでいったら、若年性認知症になると性格まで変わりますと、怒りっぽくなりますって書いてあって。その家族の証言として、あのー、「この、この味が薄い」って言ったとたんに「じゃ、あなたが作ってよ」って怒鳴られたって書いてあったんですね。全く同じだと思って、で、……あのー、…ああ、そういうふうにとられるん…ですね。だから、こちら側からすれば、もう、ほんとに、あのー、もう、不安と悲しみと…つらさを、もう、もう、いっぱいにためて、精一杯やっていて、それがぽろってこぼれたことが、あのー、人から見たら、あ、若年性認知症って性格まで変わるんだって、そういう見方をされるんだなっていうように思いました。

認知症の語り

離職するまではバランスが取れていたが、1年ぐらいすると外と接触がなくなり孤立感を感じて眠れなくなった。昼夜逆転して食欲もなくなり、手を洗いたくてしょうがなくなった

たぶん、あの、介護離職する前までは、やっぱり、あの、仕事で会社に行ってっていう、会社の顔とかもあるので、あのー、たぶんちゃんとしてたはずなんですよ。で、心のバランスも取れてたと思うんですけれども、会社を辞めてしまってからは、本当に接触が一切なくなっちゃう状態だったので。で、そのときとかに、急に孤立感を感じて…たぶん、ちょうどそこが1年ぐらいあったんじゃないかと思うんですけどね、介護離職してから。そうですね、1年ぐらい。えーと、全然眠れなかったんですよ、やっぱり。というのは、ま、父が、その、夜中に徘徊してしまうかもしれないとか、そういうのがあるので、もともと、そんなに睡眠時間は、私は8時間とか取らずに、だいたいいつも3、4時間ぐらいでずっと来てたんですけども、それがもう、完全に昼夜逆転してしまったときがあって、昼になると眠くなるけど、夜はもう目が冴えちゃうとか。

そうすると、やっぱり自律神経もね、おかしくなってきちゃうと思うので、そのときとか、そうですね、全然眠れないし、おなかもすかないですし。で、ただ、あの、どこかこういうとこ触った後に、もう手を洗いたくてしょうがなくなってるんですよ、なってたんですよ、そのとき。何だかよく分からないけれども、何かずっと手を洗ったりとかしてて、うちの母も、あら、今度は娘のほうがまずいなって、ちょっと思ってたみたいなんですけど。