障害のある看護学生と看護職の語り

研究代表者:瀬戸山陽子(東京医科大学・教育IRセンター、講師)

研究協力者:隈本邦彦(江戸川大学メディアコミュニケーション学部、教授)
射場典子(ディペックス・ジャパン、理事)
佐藤(佐久間)りか(ディペックス・ジャパン、理事)
澤田明子(ディペックス・ジャパン、理事)
花岡隆夫(ディペックス・ジャパン、理事)

障害のある看護学生と看護職のプロジェクトについて

日本では、2014年の国連の権利条約批准を受けた2016年の障害者差別解消法の施行、また、2021年の改正法成立によって、障害のある人に対する差別的取り扱いの禁止や、合理的配慮の提供が義務化されました。日本学生支援機構による調査によると、高等教育機関における障害学生の在籍者数は、2019年に37647人で、障害学生の在籍数は、10年前から5.3倍、5年前の2.7倍に増えています。
同時に日本では、2020年の段階で高等教育機関786校のうち看護の学部や学科を持つ看護系大学の課程数は289で、全大学の3校に1校は看護の基礎教育課程を有しています。近年、障害のある看護学生に関する研究も見られるようになっていますが、教室での講義などには合理的配慮が提供されるようになってきている一方で、実際の病院や施設で行う実習に関しては、個別の学生の学びやすさをどのように整えていくかは試行錯誤が続いています。
さらに、看護協会が把握している看護職の就業者数は2019年の段階で168万人を越えます。障害のある看護職の方々がどのように就業しているのかについても、障害のある医療職の方々のネットワークがあり、実例はあるものの、それぞれの場での個別に対応されている状況です。

「障害のある看護学生と看護職の語り」プロジェクトは、障害をもちながら看護学生として学んでいる方や、看護職として就業した体験を持つ方へのインタビューを通して、それぞれの学修や就業の場における様々な知恵や工夫を共有できる語りのデータベースを作ります。その後、既に公開されている「障害学生の語り」ウェブページ(2021年1月公開)に追加する形で、「障害のある看護学生と看護職の語り」を動画や音声、テキストなどで公開します。

語りのデータベースは、ウェブサイト上に公開されることにより、他の当事者の方や、これから看護職を目指したいと思っている障害のある学生にとって、共感したり、知恵を得られたりする資源となります。また、障害のある看護学生と共に学ぶ周囲の学生や、障害のある看護職と共に働く職場の人達にとって、お互いにより良い環境を整えるための対話の材料になってほしいと考えています。

現在13名のインタビューが終了しており、「障害学生の語り」でご協力いただいた7名の方のインタビューと合わせて20名の語りのデータベースとして、ウェブサイト公開に向けて作業を行っています。

このプロジェクトは次の研究助成金によって実施されています。
文部科学省科学研究費「障害や病いを持ちながら就業もしくは修学する看護職/看護学生による体験知の蓄積(19K19513)」(2019-2021年度)

他のプロジェクトの進行状況