インタビュー時年齢:27歳(2019年2月)
障害の内容:重複障害(盲ろう)
学校と専攻:大学:社会福祉学(2011年度入学)、大学院:情報アクセシビリティ(2017年度入学)
関東地方在住の男性。大学入学前は、盲学校、ろう学校等で学んだ。点字や触手話を使う。将来、盲ろう者の役に立つ仕事がしたいと思い、社会福祉を学ぶために大学に入学して、6年かけて卒業した。大学で健常者の人と一緒に学んだことで、大きく世界が広がった。卒業後は、情報アクセシビリティを学ぶために大学院に進学し、現在は寮生活を送っている。
プロフィール詳細
大輔(だいすけ・仮名)さんは先天性の盲ろうで、小学校入学前は難聴児通園施設、小学校1-4年生はろう学校、小学校5年―高校卒業までは盲学校に通った。大学進学の時には、勉強をしたいというよりも、将来盲ろう者の役に立つ仕事がしたいと思っていた。2つの大学を受験したが、論文と面接を使う推薦入試で受けた1つの大学に合格したので、そこに進学した。進学先は、障害学生の受け入れに関して実績があり、相談もスムーズで、通訳の費用も大学に負担してもらえた。授業における通訳の調整は、障害学生のコーディネートをする部署が担っていた。だが実際には、手話通訳者と言っても盲ろう者の通訳をしたことがない人も多いため、東京都の「盲ろう友の会」からも多くの通訳者に手伝ってもらった。
学生生活では、授業以外の移動や食事時間には援助がなかったため、学生ボランティアに援助を依頼した。ただ、学生も自分の生活に忙しくなるとなかなかボランティアができず、援助してくれる人を見つけるのが難しくて、どうしても手伝ってもらう人を探せなかった時は、規則違反だとは知っていたが通訳者にボランティアで移動などの援助をしてもらうこともあった。
大輔さんが学んだ学部は社会福祉士の受験資格を得られる課程で、受験資格を得るためには学外実習が必要だった。最初、自分も利用者である「東京盲ろう者支援センター」で実習をしたらどうかと大学に言われたが、一利用者が、他の利用者の個人情報に触れてしまうという理由からそれは難しかった。大学にも他の施設でやらせてほしいと伝えたが、やはり難しいと言われてしまった。他の人に相談をしたら、資格を取らなくても新しいことが見つかるよと、大学院の進学を提案してくれた人がいた。他の道もあるということを知り、無理に資格を取ることはないと思うようになった。大学は、通常より時間をかけて、6年間かけて卒業した。
大学院に関しては、盲ろう者のコミュニケーションに関心を持っており、盲ろう者に役立つこととして、ICTを活用した情報アクセシビリティを勉強することに決めた。
パソコンは、小学校5年生頃から使い始めている。点字ディスプレイと接続して使うと、自分は点字を使い、相手は文字を使ってのコミュニケーションが可能になる。視覚障害者のスマホのような「ブレイルセンス(Braille Sense)」という機械も使っている。大学では手話通訳をつけてもらうことが多かったが、大学院は、聴覚障害の学生が多く、大学も障害学生に慣れているところだったため、なるべく通訳を使わないでコミュニケーションをとれるように、パソコンを使う方法を選択するようになった。触手話はリアルタイムに情報を得られるが、その一方でパソコンを使うほうが、正確に情報をつかみ、正確に伝えることができる。ディスカッションを行う授業などでは、触手話通訳も利用している。大学の時に比べると、学習において困ることは少なくなったが、通路に物が置いてあるなど学生のマナーという点で困ることがあり、それらについては、大学に改善のための要望を出したこともある。
小さいころから家族に連れられて、他の盲ろう者と交流する場に出かけており、そういう所で自分と同じ障害の人がいることを知り、色々なコミュニケーション方法を知ったのは大きな意味があった。だが、多くの盲ろう者は他に盲ろう者がいることを知らず家に引きこもっている場合も多く、盲ろう者の会に集まってこられるのは、日本に14000人いる盲ろう者の中で、1000人程度に過ぎない。自分は大学や大学院にも行けているので、その意味を考え、自分の状況を行政や社会に伝えていく必要があると思っている。
現在は大学院2年目だが、3年間で卒業する計画を立てている。研究テーマは、「先天性盲ろう青年におけるICT活用によるコミュニケーションの可能性(仮)」で、自分自身のパソコン活用の記録を取りながら研究を進めている。将来の仕事はまだ決めていないが、大学や大学院で学んだことを、他の盲ろう者や盲ろう児の教育へ活かしていきたい。今後、障害を持ちながら大学に入る人には、ぜひ諦めずに進んでいってほしいと思っている。
【備考:インタビューの方法について】
インタビューでは、通訳が2名つきました。通訳Aと通訳Bとします。まず、インタビューを行う者が質問をして、その内容を通訳Aの方が触手話を使って、大輔さんに伝えます。そして、大輔さんは、ご自身の語りを手話で表現されます。その手話を通訳Bの方が読み取って、声で話されて伝えてくれるという手順でした。大輔さんと、通訳者2名、インタビューを行う者、カメラ担当者の位置関係は、下の図の通りです。
学生生活では、授業以外の移動や食事時間には援助がなかったため、学生ボランティアに援助を依頼した。ただ、学生も自分の生活に忙しくなるとなかなかボランティアができず、援助してくれる人を見つけるのが難しくて、どうしても手伝ってもらう人を探せなかった時は、規則違反だとは知っていたが通訳者にボランティアで移動などの援助をしてもらうこともあった。
大輔さんが学んだ学部は社会福祉士の受験資格を得られる課程で、受験資格を得るためには学外実習が必要だった。最初、自分も利用者である「東京盲ろう者支援センター」で実習をしたらどうかと大学に言われたが、一利用者が、他の利用者の個人情報に触れてしまうという理由からそれは難しかった。大学にも他の施設でやらせてほしいと伝えたが、やはり難しいと言われてしまった。他の人に相談をしたら、資格を取らなくても新しいことが見つかるよと、大学院の進学を提案してくれた人がいた。他の道もあるということを知り、無理に資格を取ることはないと思うようになった。大学は、通常より時間をかけて、6年間かけて卒業した。
大学院に関しては、盲ろう者のコミュニケーションに関心を持っており、盲ろう者に役立つこととして、ICTを活用した情報アクセシビリティを勉強することに決めた。
パソコンは、小学校5年生頃から使い始めている。点字ディスプレイと接続して使うと、自分は点字を使い、相手は文字を使ってのコミュニケーションが可能になる。視覚障害者のスマホのような「ブレイルセンス(Braille Sense)」という機械も使っている。大学では手話通訳をつけてもらうことが多かったが、大学院は、聴覚障害の学生が多く、大学も障害学生に慣れているところだったため、なるべく通訳を使わないでコミュニケーションをとれるように、パソコンを使う方法を選択するようになった。触手話はリアルタイムに情報を得られるが、その一方でパソコンを使うほうが、正確に情報をつかみ、正確に伝えることができる。ディスカッションを行う授業などでは、触手話通訳も利用している。大学の時に比べると、学習において困ることは少なくなったが、通路に物が置いてあるなど学生のマナーという点で困ることがあり、それらについては、大学に改善のための要望を出したこともある。
小さいころから家族に連れられて、他の盲ろう者と交流する場に出かけており、そういう所で自分と同じ障害の人がいることを知り、色々なコミュニケーション方法を知ったのは大きな意味があった。だが、多くの盲ろう者は他に盲ろう者がいることを知らず家に引きこもっている場合も多く、盲ろう者の会に集まってこられるのは、日本に14000人いる盲ろう者の中で、1000人程度に過ぎない。自分は大学や大学院にも行けているので、その意味を考え、自分の状況を行政や社会に伝えていく必要があると思っている。
現在は大学院2年目だが、3年間で卒業する計画を立てている。研究テーマは、「先天性盲ろう青年におけるICT活用によるコミュニケーションの可能性(仮)」で、自分自身のパソコン活用の記録を取りながら研究を進めている。将来の仕事はまだ決めていないが、大学や大学院で学んだことを、他の盲ろう者や盲ろう児の教育へ活かしていきたい。今後、障害を持ちながら大学に入る人には、ぜひ諦めずに進んでいってほしいと思っている。
【備考:インタビューの方法について】
インタビューでは、通訳が2名つきました。通訳Aと通訳Bとします。まず、インタビューを行う者が質問をして、その内容を通訳Aの方が触手話を使って、大輔さんに伝えます。そして、大輔さんは、ご自身の語りを手話で表現されます。その手話を通訳Bの方が読み取って、声で話されて伝えてくれるという手順でした。大輔さんと、通訳者2名、インタビューを行う者、カメラ担当者の位置関係は、下の図の通りです。
インタビュー07
- 将来は自分と同じ盲ろう者の支援をしたいと思い、そのために福祉の勉強が必要だと考えて専攻を決めた(手話)
- 大学ではパソコン通訳のソフトや、それを点字で受けるための知識がなく、主に触手話だった。大学院では、パソコン通訳を点字で受けるようになった(手話)
- 教科書の内容をテキストデータに変えてもらっていたが、それでも読みにくいものもあった。また専門用語はあらかじめ授業の内容を通訳にも送ってもらっていた(手話)
- 盲ろう者支援センターでの実習も検討したが、利用者の自分が他の利用者の個人情報に触れてしまうため受け入れらなかった。結局、資格取得は目指さないことにした(手話)
- 学内の手話サークルに通ったこともあるが、健聴者ばかりで手話の歌の練習をする程度だったので、学外の聴覚障害学生のグループに参加して、コミュニケーションを取っていた(手話)
- 大学では、健常者がどのような生活をしているのかということを知ることができた。例えばカラオケやゲームセンターに行くようなことも、実際体験することができた(手話)
- 最近は障害学生に対する理解も少しずつ広がっているので、将来、他の障害学生が大学で学ぶためにも、諦めないでほしいと思う(手話)
- 盲ろう者のほとんどは家に引きこもっていて、他の盲ろう者を知らないまま過ごしている。行政に支援の必要性を訴えていきたいし、大学に行けた自分はその意味を考えたい(手話)
- 自分磨きのために大学に行きたいと思ったが、親も自分を大学に行かせたがっており、様々なサポートをしてくれた。実際大学に入って良かったと思うことが沢山ある(手話)