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インタビュー時年齢:47歳(2019年5月)
障害の内容:視覚障害(全盲)
学校と専攻:大学・社会学部(2016年度編入学)、大学院(2019年度入学)
首都圏在住の男性。小学校入学時は普通学校だったが、4年生から特別支援学校で過ごした。高校卒業後はあんま・はり・灸の3つの資格を取り、医療機関で働いた。その後思うところがあり、視覚障害者に関する障害福祉の研究をしたいと思って、大学に編入学し、現在は大学院に通っている。幼少のころからずっと音楽に親しみ、一時はプロを目指したこともある。現在は、一人暮らしをしている。
語りの内容
僕が3年次編入した大学っていうのは、通信制の大学ですので、スクーリング形式の授業っていうのはあまり多くないんですね。ほとんどインターネット上で科目を解くとか、自宅で学習して単位認定試験を、ある決められたスケジュールの中で、受けるとかっていう大学だったので、教授と対面してお会いすることっていうのはあまりない大学だったんで、えー、初めてですね、試験監督としてお会いした先生が、その社会福祉学の教授で。
その先生、すごい元気な方で、僕から見てもお兄さん的な存在、兄弟のような、すごく親しみのある自分の鏡のような、同じようなキャラクターの先生だったので、もうすぐ2人で意気投合したんですね。
なので、学びたいというよりも、何かそばにいたいなっていう感覚で学習してみようっていうところで。そうですね。また次回会ったときはちゃんと習得したよっていう資格、あの、資格も取れたよっていうことも報告したくて、一生懸命学んだような気がしてます。
なので、大学に入る前に何か志を持っていたかとか、何かある特定の研究をしたいかなとか、学びたいなとかなかったんですが、それが良かったのか、自然体で、大学での出会いを楽しむことができたんではないかと思ってます。
いや、ものすごくですね、インパクトがあるのはその教授のゼミに招待されて、ほとんどが大学院生のゼミということで学部生がいないゼミでしたね。ゼミ生が研究計画を発表して、それに対して皆さんが助言していくっていうスタイルの、そういうゼミっていうものを初めて経験して、自分もこの世界に飛び込みたいなと。
ただ先生が教壇でお話をしたことを生徒が聴くだけじゃなくて一緒に参加していくっていう、一緒に論文を仕上げていくっていうスタイルの、そういう環境下にいたいなって思ったんですね。これが大学院に進学したいなと思った理由です。
非常に、その後の親睦会も楽しくて、本当にこんなに学びながら、みんなと仲間になりながら、もしかして一生の友人になるのじゃ、友人になるんじゃないかなって思うような、そういう…、何ていうんですかね…、感動しましたね。大学院のゼミってこんなにすごいのかって。
その初めてのゼミに行ったときに、大学院に行きたい、同じ大学の大学院に行きたいって思いました。
――その感動したっていうゼミに出られたのは、3年次に編入してすぐそういうところに顔を出されたんですか?
いや、いや。まずはとにかく、その社会福祉学教授に認めてもらおうと思いましたから、先生が、その試験監督のときに出してくださった課題を全部こなして、そしてその上で…、何かあるとは期待はしてなかったんですけど、とにかくその教授と仲良くなりたかったので、もう言われた課題は全部こなそうと思って全部こなしたんですね。
で、資格も取りましたと、先生が勧めてくださった資格も取ったっていうことを報告したら、ぜひあなたのこれからの、将来のためにも、今度は自分のゼミに来てもらえないかと。
べつに、そのゼミっていうのは学部生が参加するゼミではなくて、とにかく見に来てみないかということでお誘いいただいて、それで、皆さんの前でも僕を紹介してくださって、僕とその教授との出会いを10分間スピーチをしてくださいっていうことを頼まれて皆さんの前でもスピーチをさせていただいたっていうのが、流れでしょうか。
インタビュー17
- 特別支援学校の高等科にあんまマッサージ、はり・きゅうの資格が取れる課程があった。自分は行きたいと思っていなかったが、親に泣きつかれて資格を取った
- あんまや鍼灸の仕事に満足していたが、他の視覚障害の方たちが不満を抱いているのを知り、自分だけ幸せじゃいけないんじゃないかと思い始めたのが大学進学のきっかけだった
- 自分がこうあってほしいと思うことを社会に対して伝える手段として、思いを形に残せるようにするために、大学院の門を叩くことをお勧めしたい
- 学部は支援センターなどが多いが、大学院は必ずしもそうではない。支援の窓口や専門のスタッフを各大学院に置いてもらえると、障害者の研究者が生まれやすくなると思う
- 本をスキャンしてデータで読む作業は、ものすごい労力がかかる。最初から書籍データを入手できる場合もあるが、それを著者が許可していないこともあり、改善が必要だと思う
- 通信制の大学でたまたま会った教授に惚れ込み、その教授に認めてもらおうと思って一生懸命学んだら、その教授のゼミにも招待されて、それが大学院進学のきっかけになった