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インタビュー時年齢:31歳(2020年9月)
障害の内容:肢体不自由(上下肢障害)
学校と専攻:大学・理学部 (2008年度入学) 大学院・生物科学専攻(2012年度入学)
関西地方在住の男性。中学2年の時に顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーと診断された。腕・肩、腹筋、足などいろんな体の部位の筋力が弱くなり、現在は歩くことはできるが、走ったり階段を上ったりすることは難しい状態。小中高と一般校に通い、大学時代に生命科学を学んだことをきっかけに、研究を通じて自分の病気の仕組みを解明したいと考え、大学院に進学した。博士号を取得後、iPS細胞を用いた研究を続けている。海外旅行が好きで、これまでに全部で46か国を訪れている。
語りの内容
――ご自身が進学してこられるまでの間で、その自分がこれこれをやりたいというのに、この自分の障害が、ご病気が何かこう、妨げになると思うことがあったか、それともむしろ、全然…自分ができる範囲のことをやっていけばいいっていうことで、あまりこう、そのことについて悩まれるようなことはなかったのか、ちょっとその辺も教えていただけますか。
はい。そうですね。ま、先ほど言ったように、そのやっぱ、どうしても何をやるにもやっぱ体力が必要で、その実験も、例えば1ついい感じの結果が出たとして、それを繰り返しやって同じことが起きるかどうかってのを、いわゆる再現性、そういうのをきちんと統計学的に、意味があるところまでやらなくちゃいけない。そうなってくるとやっぱりもう、何か同じ作業を何回もやるとか、ま、そういうのが必ずどっかで必要になってくるんですけど、それがどうしても、やっぱその、腕力もいろいろ落ちて、細胞を扱うにしても、結構、肩から先の動作がすごい、行うので、人よりスピードも遅いし、どうしても物理的にそのできる作業量に限界があるという…。まあ、そういうのはかなり、今でもなんですけど、かなり葛藤してて。例えば自分でこれはここまでやれるって頭で分かってて、実際仕掛けるんですけども、それがもう体力的に、もうなんか終わらなくて、結局ちょっと諦めてるに近いみたいな感じになってしまって、本来このぐらいで終わらせられるだろうと思ったことが終わらせられないとか、ま、そういうとかで、まあ、それはちょっと今でも実は、難しいってか、悩みでもあるんですけど。
ただ、ま、そういう日々の、活動量の限界っていうのはどうしてもあるんですけども、あとはですね、ま、僕自身が、その、筋肉の病気で筋肉の研究してるってところが、逆に、その、研究の、その方向性とか、どういうことすれば本当に意味があるのかとか、そういう本質的になんか、どうすればいいのかっていうことを考えるときに、第三者である、別に病気に関して基本的に第三者である、研究者っていう視点からだけだと、どうしても気付けない部分っていうのが、自分の場合は、ちょっと患者目線とか、実際自分に症状があって、かつ、まあ、まあ、自分だけじゃなくてその自分が患者であるので、患者の知り合いが、同じ病気の知り合いがいるんですけど、そういう人たちと話してて、ちょっとこの病気に多分、共通してこういうことがあるんだろうなみたいなのを、そういうのを実感しながら考えるので、ま、なんか見落としがちなその視点、患者のその視点から、何かその研究テーマをひねり出すみたいな、そういう感じの頭の使い方はやっぱり、その第三者として関わってる研究者に比べると、まあ、有利というか。まあもちろん、なんかそういう視点を、生かした研究をどうするかっていうのを常に考えるっていうふうにして、やることができてます。
理工系インタビュー06
- 早く成果を出さねばならない中で進められている研究は本当に患者のためになるのかわからないものもある。自分がやるなら自分に使われるかもしれないと考えながら研究したい
- ピペットマンのような毎日使う実験器具は「死活問題」なので若干高くても軽くて使いやすいものを探して購入した。女性研究者も増えているのでそういう器具が注目されている
- 実験では何をするにも体力が必要だが、筋力が落ちているので物理的にできる作業量に限界がある。それでも患者当事者ならではの視点を研究に生かすことができると考えている
- 厳密な管理が必要な実験動物は逃げた場合に自分で捕まえることができないので、どうしても動物実験が必要な時は一緒に論文を書くことを前提に同じ研究室の人にやってもらう
- 96個の小さい穴に何時間もかけてごく少量の液滴を入れていくといった実験は、肩や腕の筋肉が消耗して大変だが、それは研究室で雇った学生アルバイトにやってもらっている
- この病気はネガティブ思考で過ごす時間が避けられないと思うが、長い目で振り返ると、自分は同じ病気の人に会ってネガティブな考えを転換するような心の動きがあったと思う(NEW)
- アメリカの患者会がこの病気の国際学会を開催しており、自分も参加した。色々な国の人に会い、他のタイプの筋ジストロフィーの人や、自分と同じのタイプの人とも知り合った(NEW)
- もともとバリアフリーに関心があったが、必修で生命科学を勉強したときに、この分野の研究をする方が病気を理解できるのではないかと思い、研究者を目指すようになった(NEW)