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東京都がん検診センターで消化器内科部長として、消化器系のがん検診を多数行ってきた。熊本市出身、平成2年熊本大学医学部卒業。熊本大学医学部第2内科入局後、関連病院や昭和大学藤が丘病院消化器内科勤務後、平成9年から現在のがん検診センターに勤務。胃がん・大腸がん検診だけでなく、術後の切除標本と画像との対比を行い、診断精度の高いX線・内視鏡診断や内視鏡治療へ取り組んでいる。
語りの内容
内視鏡検査は140度しか視野がありませんので、それを使ってグルグル回しながら腸の中を見ていくわけなんですね。そうしますと、どうしてもヒダの真裏とかにある病変といったものを見ていない可能性があります。ただ、そのヒダの裏に隠れている病変というのは小さなポリープ……腫瘍性であっても5ミリを下回るようなものが多いので、また経過を見ていけばいいということになります。ただ、がんをその場で見落とすということは極めてまれであると思います。ただ、内視鏡を受けたあとに3年後に見て進行がんが見つかるということも年に数例は経験があります。それほど大きくはない進行がんであるということになります。
だから、なんらかのポリープがあったりとか、初回検査で何もなくてもだいたい2~3年後にはもう一度内視鏡検査を受けていただくということはあります。あるいは便潜血検査をそのあと定期的に受けていただいて、陽性になればまた受けていただくというのは非常に大切なことになってきます。それで初回にもし見落とした部分があっても、次の便潜血が陽性であればまた見ますし、2~3年の間で見れば見落としたものも救命可能なところで見つかっているという状況です。
専門医インタビュー一覧
- 食生活の変化で大腸がんは増えている。大腸がんになる人は男性のほうが多いが、臓器別の死亡率では女性のがん死亡率の1位を占めている
- 症状が出てから受診する人には命に関わるようながんが見つかることが多い
- 大腸に症状が現れる病気はいろいろあるが、がんで便が出にくいとかおなかが張るといった症状が出るまでには、がんがかなり進行してしまっている
- 大腸がんは症状が出てから受診しても遠隔転移がなければ助かる率は高いが、便潜血検査を受ければ転移を起こす前の段階で見つかる可能性が高くなる
- 大腸がんはある程度大きくなると潰瘍を形成し、そこから出血する。そうなると便に血が混ざるようになり、便潜血検査で陽性となる
- 便潜血陽性は6~7%なのでかなり絞り込まれている。偽陽性が出ることもあるが、それが痔のためなのかどうかを確かめるためにも大腸内視鏡による精密検査を受けて欲しい
- 陽性になったら必ず大腸内視鏡による精密検査を受けて欲しい。続けて偽陽性になる場合は、便潜血検査の代わりに定期的に内視鏡や違う種類の精密検査をやることもある
- がんが上行結腸にあったり便秘だったりすると便潜血は偽陰性になることもあるが、有効性は極めて高いので受けて欲しい。ただし、症状が現れたらすぐに精密検査を受けることが大切
- 便潜血検査は2日法(2日間で便を採る)ではじめて有効性が認められる。但し、1日しか陽性にならなくても、その数値が高ければ大腸がんの病変の確率は高い
- 便潜血検査は2日法で有効だが、1回でも出せるのなら出し、新たに個別に医療機関で受けるという方法もある。便秘がひどいなら、一度内視鏡検査を受けると良いかもしれない
- 便潜血検査が1回でも陽性であれば、すぐに精密検査を受けることが大切。1回法で陽性なら陽性と考えてほしい
- 大腸内視鏡の前に飲む2リットル洗浄液(下剤)は量が多くて途中で飲めなくなることもあったが、新しい洗浄液は1リットルの洗浄液と500ミリリットルのお茶という飲み方ができる
- 内視鏡機器が進歩して挿入しやすくなっているものの、内視鏡の挿入技術はキャリアによって差が出てくる。最近は安定剤を使って緊張感を和らげる施設もある
- 全国的なデータでは二次検診を受けた人の5パーセントほどの人からがん、45パーセントほどの人からはポリープが見つかっている。検診で見つかるがんは早期が多い
- 内視鏡は視野が140度のものが多いため、見落としたり腸のヒダの間のがんが見つけられない場合はあるので、毎年便潜血検査を受けてほしい
- 便潜血検査は便を採るだけなので身体へのデメリットはないが、内視鏡検査の場合は穿孔(腸に穴が開くこと)が起こる場合がある