大腸がんの精密検査の方法として広く用いられているのが大腸内視鏡です。これは内視鏡を肛門から入れて大腸の中を詳しく調べる検査方法です。この大腸内視鏡検査は非常に精度の高い検査方法ですが、身体への負担があり、また、ごくまれに腸に傷がついたり、穴があいたりするなどの偶発症が生じる危険があります。また、大腸内視鏡検査を行う際には、事前に腸の中をきれいにしておく必要があるため、前処置として、食事制限や腸管洗浄液(下剤)の服用が必要になります。ここでは、大腸内視鏡検査を受けるにあたって、その方法やリスクについてどのような説明を受けているのか、また、受診者は内視鏡検査の前にどういった準備をしているのかについて紹介します。
検査についての説明
大腸内視鏡検査では、ポリープが見つかった場合、その場で切除することもあります(「大腸内視鏡検査の実際」 参照)。これをポリペクトミーと呼びます。ある男性は、内視鏡検査を受けるにあたり、医師から、ポリペクトミーを行うかどうかを含め、検査内容について色々と説明を受け、同意をした上で検査を受けました。また、内視鏡検査に対しては、痛みに対する不安を持っている人も少なくありませんが、この男性は麻酔で寝ている間に終わると聞いて安心できたといいます。実際、検査では全く痛みを感じることはなかったようです。また、別の男性は、検査前の説明の際、医師から、突き刺さるような痛みはないので安心してくださいと言ってもらえたことに加え、自分の腸の中を一度見ておくのもよいのではないかと言われ(「大腸内視鏡検査の実際」のインタビュー32 を参照してください)、それが内視鏡検査を受けることへの納得につながったようです。
協力者の中には、大腸内視鏡検査を紹介するビデオを観たという人もいました。この男性は、検査直前に控室で、大腸内視鏡の流れが分かりやすく解説された10分ほどのビデオを視聴し、安心感や、医師に対する信頼感が生まれたと語っています。
大腸内視鏡検査を受けるためには、食事の制限や腸管洗浄液(下剤)の服用などの準備が必要ですが、こうした点については事前に何も知らされていなかったと語る協力者もいました。
大腸内視鏡検査を受ける前には、内視鏡で腸を観察しやすくするために腸内をきれいにしておかなければならず、そのために食事を制限したり、腸管洗浄液(下剤)を飲んだりといった準備が必要になります。インタビューでは、こうした準備作業について多くの人が語っていました。
食事を制限する
大腸内視鏡検査を受けるためには、腸内を空にしておく必要があります。そのため、受診者は検査の数日前から、消化されづらい繊維質の食べ物(野菜やきのこ類)や種のある食べ物(果物)、腸内のひだに残りやすい食べ物(海藻やゴマ)などを避け、消化のよい食事をとらなければなりません。また、前日の夜以降は飲み物以外は口にしないなどの食事制限があります。ある女性は、検査前、肉やきのこは食べないよう指示を受けたといいます。また、インタビュー協力者の中には、クリニックから検査のための食事が送られてきたという人もいました。
腸管洗浄液(下剤)を飲む
検査前には、腸内をきれいにするために腸管洗浄液を飲まなければなりません。腸管洗浄液は腸の中に残った便を出すための下剤です。腸管洗浄液は量が多く、それを複数回に分け、数時間かけて飲みます。このように、内視鏡検査に先立って大量の下剤を飲まなければならないことが辛かったと語る人は多くいました。また、腸管洗浄液には独特の味があり、これも人によっては準備の大変さの一因になっているようです。何度も内視鏡検査を受けたことのある女性は、「塩っぽい味」がするため、飴をなめながら腸管洗浄液を飲んだと語っています。中には、検査そのものよりも、その準備として大量の下剤を飲まなければならなかったことの方が辛かったと語っている人もいました。
腸管洗浄液(下剤)は、自宅で飲み、排便をしてから病院に向かう場合と、病院やクリニックで飲む場合があります。前者の場合、自宅という落ち着ける環境で準備ができるという利点がありますが、トイレが近くなるため、自宅から病院までの移動には不安があるようです。例えば、検診として定期的に大腸内視鏡検査を受けている男性は、近所に病院があるので助かっていると語っていますが、別の男性は、自宅から病院に向かうまでの間にトイレが我慢できなくなってしまうかもしれないという不安から、おしめを買って用意していったといいます。
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