便潜血検査が陽性となった場合に行われる精密検査として、第一に推奨されるのは大腸内視鏡検査ですが、このほかにも大腸を詳しく調べるための方法が幾つかあります。ここでは、注腸X線検査をはじめ、大腸内視鏡検査以外の検査を受けた人たちの体験を紹介します。
注腸X線検査を受ける
注腸X線検査は、肛門からバリウムと空気を注入して大腸のX線(レントゲン)撮影をする検査方法です。内視鏡と違って組織を取ったり、ポリープを切除したりすることはできませんので、異常が見つかった場合は、確定診断のために改めて内視鏡検査をする必要があります。一方、内視鏡ではわかりにくいことが注腸検査でわかることもあるので、内視鏡で大腸がんが確定したあとに注腸検査を行って、がんの正確な位置や大きさ、腸の狭さの程度を確認することもあります。大腸内視鏡検査と注腸検査の両方を受けたことのある女性は、両者の特徴を分かりやすく説明しています。
注腸検査でも大腸内視鏡検査と同様に、検査前に下剤を飲んで腸内を空にしておかなければなりませんが、内視鏡よりは検査中の痛みが少ないと言われています。しかし、実際に経験した人たちの中には、おなかの張りがとても辛かった、いろいろと姿勢を変えなくてはならないのが大変だったという人もいました。
直腸指診を受ける
注腸X線検査のほかに大腸がん検診で行われることが多いのが、直腸指診(直腸診、直腸内触診と呼ぶこともあります)です。直腸指診は、文字通り、医師が肛門から指を入れて直腸内の異常の有無を調べる検査です。直腸指診は指の届く範囲しか調べることができませんが、直腸がん(特に下部直腸がん)を調べる簡単な方法として利用されています。そのため一次検診に際して、便潜血検査と同時に実施する施設もありますが、直腸指診単独では大腸がんによる死亡率を下げる効果はありません。
便潜血検査で何度か陽性になっていたものの、ずっと精密検査を受けていなかった男性は、激しい痛みから肛門科を受診したところ、直腸指診ですぐにがんが見つかりました。血便で受診した女性も、同様に直腸指診と血液検査の結果で入院を勧められたと話していました。一方、別の女性は血便が出たため受診しましたが、直腸指診では何も見つからず、このときはその他の精密検査は行いませんでした。しかし、その翌月にも再び血便が出たため、今度は内視鏡検査を行うことになりました。
その他の検査を受ける
がんの疑いがある場合、大腸内視鏡検査や注腸X線検査、直腸指診以外に、全身へのがんの拡がりを調べるため超音波検査やCT検査、MRI検査、PET検査(ポジトロンCT検査)、腫瘍マーカー検査などが行われます。今回のインタビューでも、CT検査によってリンパ節への転移があるかどうかを調べたという人や、PETを使って全身を調べたという人もいました。
※ブドウ糖とポジトロンという放射性同位元素を合成した薬剤を注射し、その後、CTで全身を撮影します。がん細胞がある箇所は薬剤が集中し、その箇所が光って映るため、がんの部位を特定することができます。光の度合いによってがんの進行度もある程度判断ができます。
直腸指診と血液検査だけで入院を勧められたという女性は、CT検査で肝臓への転移がわかり、周りの空気が変わったように感じたと話しています。
CTなどの画像診断検査では造影剤を使うことがありますが、それがアレルギー反応を引き起こすこともあり、場合によっては、アナフィラキシーショックなど生命にかかわる重篤な副作用につながることもあります。次の男性は、CT検査の造影剤で軽いアレルギー反応が出ましたが、検査技師から、今後検査を受けるときには造影剤でアレルギー反応があったことを医師に伝えなければならないと言われたそうです。
認定 NPO 法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」では、一緒に活動をしてくださる方
寄付という形で活動をご支援くださる方を常時大募集しています。