徴候と症状

乳がんには様々なステージがあります。より早期に診断と治療が行われば、乳がんを患っている女性の長期的見通しはより一層良好になります。

ここ20年で、乳がんから完全に回復する可能性が大いに高まりました。この理由は主に現在の治療法が過去のものと比べてはるかに有効性が高くなったことに加えて早期の診断につながる努力が功を奏しているためでもあります。

「英国では1980年代と比べて乳がんはより早期に診断され、より効果的に治療されている、また、中年世代の乳がん死亡率は急激に低下しており、他の主要な西欧諸国と比べても低下率は高い (*Beral Peto BMJ. 2010)」。

英国が実施する乳がん検診プログラム(47~73歳の女性を対象)は、乳がんの早期発見のために重要な方法であり、現在では乳がん患者の三分の一はこの検診で診断を受けています(The Department of Health’s Improving Outcomes’ A Strategy for Cancer – Third Annual Report December 2013)。しかし、検診が乳がん発見の唯一の方法ではなく、女性たちにブレストアウェアネス(例えば、定期的に自分の乳房を調べる)の重要性を今後も認識させていく必要があります。

ここでは、女性たちが自分の病いにどのように気づいたのかについて意見を述べています。

自分自身で乳がんを発見する場合がほとんどですが、パートナーが発見する場合もあります。ジャネットはしこりに気づいたとき、一般開業医(GP)である娘にそのしこりを見せました。

テスは、乳がんの家族歴があるので、いずれは自分も乳がんになる可能性があることをすでに知っていたと話しました。テスの父方の祖母と実母はともに乳がんでした。テスは33歳の時、休暇中に、しこりを発見しました。

すぐに一般開業医(GP)に診てもらった女性もいました。診断が確定する前に行われた検査について詳しく語る女性もいました。

ある女性たちにとっては、いつ乳房のしこりに注意をむけるかを決めることが問題でした。 数人の女性は月経前にいつも乳房にしこりを感じていたと話しました。わずかながら病院を受診した人もいましたが、以前に良性の結果を得ていたしこりでした。 ある女性は、しこりがある乳房はもう一方の乳房よりも元々大きかったので、このしこりの変化に気づかなかったと話しました。その他に、授乳中にしこりを発見した女性や、妊娠中に診断を受けた女性もいました。

ある若い女性は、わずか18歳の時に乳がんを発症しました。このような若齢で乳がんを発症するのは非常に稀です。この女性はしこりを見つけてすぐに一般開業医(GP)(※1)に診察してもらいましたが、結果的に病院に紹介されたのはしこりが急速に大きくなっていることに彼女自身が気づいてからでした。

検診(マンモグラフィー)で乳がんが見つかった女性たちもいました。多くの場合、マンモグラフィーは国による乳がん検診プログラムの一部でした。しかし、ある女性は自分が参加した臨床試験の一環としてマンモグラフィーを受けており、また、いつもの年1回の検診に行った時に診断を受けた女性もいました。

通常の乳がん検診で診断を受けた女性たちの経験をさらにご覧になるには、乳がん検診のセクションを参照してください。

乳がんのしこりは痛くないというのはほぼ真実ですが、そうとは限らない場合もあり、最初の乳がんの警告が痛みの場合もありました。ある炎症性乳がんの女性は、痛みと乳首の痒みを体験しました。

乳がんに気づくきっかけとして、乳首の変化に気づくことなどが挙げられます。ある炎症性乳がんの女性は若干の痛みがありましたが、乳首の陥没に気づいた時に問題を認識するようになりました。別の女性は乳首の変化に気づき、乳房ページェット病(がんの一種であり、乳首に湿疹のようなものができる)に罹患していることが分かりました。インタビューに応じた女性たちは、乳房の硬さ、乳房腫脹、乳房の“肥厚”を認めたと報告しています。その他の症状として、乳房の皮膚のえくぼのようなくぼみ、乳首からの出血痕、乳首あるいはその周囲の発疹、わきの下の腫れあるいはしこり、などがあります。

乳がんが再発したとき

インタビューした女性の多くは、原発がんの再発が認められていませんでした。しかし、以前にはがんが認められなかった乳房に治療を要する前がん病変(DCIS; 非浸潤性乳管がん)を生じた女性もわずかにいました。ジリアンは、以前に浸潤性乳がんを発症した乳房にDCIS(非浸潤性乳管がん)があることを知ってショックを受け、乳房切除術を受けました。また、最初のしこりとは異なるしこりができた女性が二人いました。それらは原発がんから転移というよりは新たに発生したがんであることが分かりました。ある女性は二次がんの発見について詳しく語りました。

乳がんの再発またはDCISの発症を告げられることは、ショッキングで気が動転するかもしれません。ジリアンは浸潤性乳がんを発症した数年後にDCISの診断を受けた時に物が言えなくなるほどのショックを受けました。

(※1)英国では、国民すべてに地域で登録されている「かかりつけ医」がいます。公的な保険でカバーされるのは、このかかりつけ医(一般開業医)による診療と、かかりつけ医が必要と認めた場合の専門の医療機関での診療です。日本と異なり、自費以外で、勝手に他のクリニックで診療を受けることはできません。この女性の体験も、こういった英国の医療事情によるところが大きいのかもしれません。

2017年10月更新

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