イングリッド
インタビュー時:61歳
性別:女性
診断時:58歳
経歴:既婚、上級研究員
国籍:イギリス(白人)
概略:イングリッドは2008年、58歳の時に乳がんと診断された。乳房切除術を受け、それと同時に広背筋皮弁による乳房再建手術も受けた。化学療法、放射線療法、それにアリミデックスによるホルモン療法もおこなった。化学療法中は両肺に肺塞栓症を発症した。
語りの内容
大変だったことのひとつは、癌だということを誰かに話すことでした。そのことを話せば、きっとみんな驚いてショックを受けるでしょうから。だから、癌だということを話すのは簡単なことではありませんでした。
私は話が伝わっていくような仕組みを作りました。夫が家族に話し、特定の友人が同僚やその友人に話すという具合に話が伝わる方法です。二人の同僚の間で話が伝わり、そして彼らからこの情報が必要な人たちへと伝わっていったのです。ああ、それから別の問題もありました。両親に告げるのは一番大変なことです。特に母に伝えるのが。その時、兄は本当にうまくやってくれました。
母の面倒を見てくれ、精神的なケアをしてくれたのは兄でした。そしてもうひとりの兄は父をケアしてくれました。それはとても助けになりました。そういうわけで、夫は何度も繰り返し私の病状を人々に伝える必要はなく、この仕組みは必要な時に効果を発揮しました。夫は兄たちや同僚とだけ連絡をとればよかったのですから。どの段階でも、話を伝える必要があるときにはこの人たちだけに連絡すればよかったのです。それが夫の気を楽にしてくれたのです。本当に効果的な仕組みでした。基になる連絡を特定の人にするだけでよく、それが私だけではなく夫の感じるプレッシャーを和らげてくれたのです。
そうです、そして実際に来客は少なかったのです。たくさんの人に尋ねて来てほしくもありませんでした。みんな素敵な人たちだけど、来客はストレスになるので。もし来客があっても素の自分が出せるのであればいいわよね。自分を飾る必要がなく、冷静に一緒にいられるのは、ごくごく身近な人たちとだけでしょう。そういう人たちってそうそういるわけではないから。目をあければ傍らには夫がいてくれる、私と一緒に家にいてくれるって分かっている、それだけでいいのです。
インタビュー48
- イングリッドは乳がん検診を先延ばしにしたため、検診の再予約を取るのが難しい状況だった。しかし、しこりを見つけた時、すぐにかかりつけ医に診てもらい、専門医を紹介され迅速な対応を受けた。
- イングリッドは乳房再建手術には満足だったが、放射線治療を受けてから肩に痛みを感じるようになった。リンパドレナージのマッサージがその痛みを和らげた。
- イングリッドはひどい下痢と倦怠感を経験した。それは他の健康上の問題と絡みあったものだった。味覚がころころ変わったので、何を食べるか決めるのが大変だった。
- イングリッドは化学療法中、大変な問題にぶつかった。苦しい時も自分の尊厳を保ちたかったが、一部の看護師たちは協力的ではなかった。
- イングリッドは化学療法中、家事を手伝ってもらうために雇った女性には本当に助けられた。まるで友人のようで、料理、洗濯、掃除を手伝ってくれた。
- 自分が癌だということを他の人に話すのは難しいことかもしれない。イングリッドは数人に話し、そこから他の人へ話が伝わったことが助けになった。
- 女性が治療から回復するには2,3年かかるということを知って、イングリッドはほっとした。しかし、そのことをもっと早く知りたかったと思った。
- イングリッドは癌のことを考えず、熱中できる企画や計画を持つことを勧めている。彼女と夫はドイツの農場にある家に引っ越す計画を立てた。
- イングリッドはアリミデックスを服用してから、関節痛、吐き気、ホットフラッシュに悩まされたが、吐き気は時がたつにつれてなくなっていった。