ここでは、医師からはじめて「乳がん」と告げられたときの気持ちとその時の状況について、体験者の声を紹介します。検査の結果、「乳がん」という診断を聞いたとき、多くの人たちが「まさか自分が」と大きなショックを受けていました。がんそのものから生命への危機感を抱いたというばかりでなく、子供の将来や生きがいであったことができなくなるなど、将来を思って途方にくれたことが語られていました。
中には、不眠や怒りを体験したという人たちもいました。
乳がんの場合には、病院に行って検査を受けるときには、「しこり」というはっきりした自覚症状があるため、何人かの人は、しこりを発見したときに、インターネットや本で調べて、がんである可能性を予測していました。また、検査が進む中で段階的に検査結果が告げられ、診断が確定していった人たちもいます。こういった人たちの中には、ショックが少なかったと話す人たちもいました。
乳がんと診断されたあと、ショックと同時に仕事や片付けなど、次にすべきことが頭に浮かんで、がんになった以上は前向きに治療しようと思ったと話していた人たちもいました。
「乳がん」と診断されて、「がん」であることと同時に、治療のため乳房を失ったり、形が変わったりすることがショックだったと話す人たちも少なくありませんでした。
また、「乳がん」という診断だけでなく、どのくらい進行しているかがとても重要で、ある人は転移の有無を調べる検査結果を聞く日が恐怖だったと話していました。
診断を聞いたときの状況はさまざまでした。ある人は、医療者に促されて、家族と一緒に聞きに行ったそうです。多くの人たちが、1人では心細いと感じ、家族などの誰かに同行してもらったようですが、あえて1人で聞きに行った人もいました。また、良性だと思って1人で結果を聞きに行き、心の準備なしに検査結果を告げられた人たちもいました。
医療者から、どのように「乳がん」と伝えられたかについての体験談もいくつもありました。何人もの人が、医師の様子からがんであることを察知したと話していました。また、ドラマで見たような重々しい雰囲気とは違って、非常にあっさりと言われてかえってよかったのかもしれないという人、まったく自分の目を見ずに告げられ、自分のことかわからなかったという人もいました。
インタビュー協力者のうち、数人の人たちが別のがんを体験した人たちでした。ある人は乳がんと診断されたとき、「今度はもう助けてもらえないのではないか」と思ったそうです。治療が長くかかる乳がんと他のがんとの違いを感じたという人たちもいました。しかし、ほとんどの人たちが1回目の経験を生かして気持ちの整理をつけていました。
インタビューを受けた人たちの中には、乳がんの診断を受けたときのことだけではなく、手術後に詳しい病理診断の結果を知らされたときに、自分の病状や術後に続く補助療法の必要性にショックを受けたと話す人たちがいました。
男性で乳がんになった人もいましたが、男性が乳がんというのはいまだに信じられないと話していました。
2018年9月更新
認定 NPO 法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」では、一緒に活動をしてくださる方
寄付という形で活動をご支援くださる方を常時大募集しています。