からだ・心・パートナーとの関係

乳がんの治療は、手術で胸に傷が残ったり、抗がん剤で髪の毛が抜けたりするなど、しばしば外見の変化を伴います。また、ホルモン療法による更年期症状のように外から見ただけでは判らない機能的な変化を生じることもあります。インタビュー協力者の声を聞くと、このようなからだの変化は、その人の心の状態や自己イメージにつながる体験であり、身体的・精神的に親密な相手であるパートナー・夫との関係性にも多大な影響を及ぼすことがわかります。ここではそうしたからだの変化に伴う心の動きとパートナーとの関係性についての語りを紹介します。

では、まずインタビューに協力してくださった女性たちは、自身のからだの変化をどのように受け止めていたでしょうか。自分が人造人間になったような気持ちになった、女性としての自信を失い悲嘆したという人もいれば、どんなにからだが変化しても人間性や女性らしさは変わらないという人もいました。

乳房を切除したことの受け止めは、その人が自分自身に対して思い描く自己イメージや女性らしさによってさまざまでしたが、年齢や出産経験という要素も関係しているようでした。授乳期に手術をした女性はおっぱいをあげられないことをとても辛く感じていましたが、すでに子どもを産み育てた体験者たちは「もう役目を終えたので」という説明をしていました。

体験者が自分の傷や脱毛した姿をどのように受け止めたかには、パートナーの反応が重要な鍵となっていました。何人かの人たちは、パートナーが手術後のからだの変化にもかかわらず、以前と同様に受け入れてくれたことが自信につながったと語っていました。相手に傷を見せたタイミングはさまざまでしたが、最初は拒否していた夫が自分から傷を見ると言い出して、見てもらったことでそれまで夫との間にあった壁がなくなり、心が打ち解けたと語った人もいました。彼女は、夫に見せたことがきっかけで、子どもにも傷を見せられるようになり、一緒にお風呂に入ったそうです。また、あえて相手に傷を見せていないという人たちもいました。

からだや心の変化はもちろん性生活の場面にも影響します。夫やパートナーが求めてくれたことが自信につながった、どんなときも普通に愛情をもって接してくれた、さりげなく傷をかばってくれて、自然とお互いが慣れていったという声が聞かれました。身体的な側面では、体調が万全でなかったり、ホルモン療法の影響で性欲の変化や膣の潤滑不良が経験されたり、容姿の変化で女性として自信が持てず積極的になれないなど、性生活上の難しさで自然と回数が少なくなっていった人もいました。

パートナーがいない女性たちにとっては、これから出会う相手が病気の自分を受け止めてくれるかどうかは重要な問題です。自分の姿を人に見せることを怖がっているのは自分自身であり、一歩踏み出すことで、はじめて自信がついたと語ってくれた人もいました。

最後に、乳がんと男性性に関する語りを紹介します。この男性は乳がんになって、自分の性格が女性的な面があると思ったそうです。男性機能は維持されていますが、今後、ホルモン療法で女性ホルモンが抑制されるとどう変化するのか興味があると話していました。

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2018年9月更新

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