乳がんと診断されたことをどのようにして周りの人たちに伝えるか、どこまで伝えるは非常に悩むところです。ここでは、家族以外の友人や知人、近所の人たち、親戚などの周囲の人々に病気を伝えることやそれらの人たちが病気を知ったときの反応について体験者の語りを紹介します。
多くの人たちは、実質的に手助けを依頼しなければならない相手や、信頼できる親しい友人たちに、病気のことを伝えていたようでした。誰にどこまで話すか悩みつつ、すべてを話しても理解してもらうのは難しいだろうと考え、わかってもらえる範囲で話をしたり、その時の流れで話してしまったりする場合もあったそうです。
自分の体験を通してがんの早期発見や乳がん検診について知ってもらうために積極的に病気のことをオープンにした人もいれば、家族の気持ちを慮って限られた人にしか話さなかったという人もいます。また、病気以外のことであればざっくばらんに相談できても、病気の相談はしなかったと話す人もいました。
誰にも言わずに隠し通すために苦労したという人もいましたが、周囲に対して病気をオープンにしたことで、病気を知って周りの人が支えてくれたり、気遣ってくれたりしたのでよかったと話している人もいました。
「乳がん」であることを他人に伝えられるようになるまでの期間は人によって違いますが、自分の気持ちの整理がついたころ、やっと伝えることができるようになったと語った人がいました。「がん」という生死にかかわる病気だから、他のがんと比べ「乳がん」という女性特有のがんだから、話しにくかったという人たちもいました。また、気持ちの整理をつけながら伝えることができる、直接対応することの煩わしさが少ないなどの理由から、直接会ったり、電話で話したりするのではなく、ブログやメールを使って知人に伝えた人たちもいました。
周囲の人の反応
では、「乳がん」と打ち明けられた人たちの反応はどうだったのでしょうか? ある人は、「がんイコール死」として重大に受け止め、大きなショックを受けて泣かれてしまい、辛かったそうです。一方で、「今は、すぐに治るよ」とか、「手術したから治ったんじゃないの?」と治療の大変さをわかってもらえない憤りを感じた人たちもいました。自分が直接、話していない人にまで伝わっていて複雑な思いをした人もいました。
治療中で体調が整わないと付き合いが難しかったことや友人が重大な病気だと思って引いてしまったことが原因で関係性が疎遠になったという人もいました。
適度な距離感で療養中の人を見守るのは、とても難しいことです。インタビューを受けた人たちから、気遣ってほしいが、騒ぎ立てたり、心配しすぎたりしないでほしい、ずかずかと心の中に入らないでほしいという希望が語られていました。
ある人は良性疾患と比較して、がんは相手にわかってもらうことは難しく、孤独に感じることがあると話していました。別の人は、友人について一番嬉しかったことは、ただ何も言わず自分の話を聞いてくれて、普通に接してくれたことだと話していました。
2018年9月更新
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