ここでは、再発・転移に関する治療の体験を紹介します。今回、インタビューした人たちが報告した転移部位は、骨、肝臓、肺、卵巣、脳、皮膚、胃、反対側の乳房などで、手術して残った乳房内や傷跡周辺の皮膚に再発した人たちもいました。再発・転移の治療は転移部位の切除や放射線照射などの局所治療が行われると同時に、全身に散ったがんを制御するため、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤治療、分子標的療法など)が行われます。通常、手術前後に行われた補助療法と同様に、がんの性質に合わせてどの薬が有効か検討されます。しかし、初発の薬物療法とは異なり、一定期間で終わることがないため、それぞれの人が望む生き方や経済的な負担・家族の状況などを含むその人の置かれた環境によって、選択する治療は異なっていました。
このように脱毛しない薬を選びたいという意見は複数から聞かれました。しかし、そうして脱毛は避けられたけれど、下痢などの副作用で辛い経験をしたと話す女性もいました。
また、薬物治療が長期間にわたることで、副作用も長びくことがあります。肝転移が見つかったある女性は、5年間の抗がん剤服用後、副作用と考えられる血尿が長く続いていると話していました。
ある人は、自分なりに学習して治療の内容を選択したと話し、本人しか、辛さも何を許容できるかもわからないものだから、自分で決めることが大切だと治療選択に関するアドバイスをしています。
時には、生き生きと過ごすことややりたいことを優先するという生き方を選択している人たちもいました。
複数のインタビュー協力者がそれぞれの転移した箇所に対する局所治療について体験談を語っています。卵巣転移で卵巣を摘出した人は、乳がんの手術より開腹手術の方が数段辛くて回復に時間がかかったと話していました。肝転移に対して、自ら治療法を探してラジオ波治療や抗がん剤の動注療法(動脈に直接注入する方法)を受けた人たちもいました。また、骨転移で放射線治療をして痛みが楽になった人、術後残った乳房内に再発して腫瘍の摘出術を受けた人もいました。
乳がんが再発して療養している人の中には、緩和ケアを受けている人たちがいました。痛みなどの身体症状だけでなく、精神的な辛さをも和らげる緩和ケアは、がんの診断初期から必要だと言われています。必要に応じて、抗がん剤治療などと並行して緩和ケアを受けることにより生活の質があがることが期待されています。
無治療を選択した一人暮らしの女性は、がんが転移して痛みが出たり、体が動かなくなってからのことを考え、在宅で痛みの治療やサポートが受けられ快適に生活できるような体制を望んだと話しています。
2020年1月更新
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