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インタビュー時:41歳(2015年8月)
疼痛期間:7年
診断名:慢性疼痛障害。
首都圏在住の女性。34歳の時、子宮内膜症の内服治療を中断したころから、左下腹部の痛みが強くなり、生理周期に関係なく左臀部から左下肢の付け根、足の裏に広がった。整形外科や神経内科で様々な検査を受けたが診断がつかなかった。現在、EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)*という心理治療を受けていて、飲み薬やブロック注射等でよくならなかった痛みが、徐々に和らいできている。
*EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)は、心理療法の一つと言われています。
語りの内容
――実際に(EMDR※を)受ける前と受けた後では、あの、痛みのほうには随分変化があったんですか。
そうですね。あの、一番最初にその昨年の4月に受け始めたときっていうのは、自分でも、あの、これじゃないかってちょっと思い当たる、あの、トラウマというか、嫌な思い出があって。で、あの…、まあそのカウンセリングの一番最初にやはりいろんな、もう本当に生まれてからのいろんな出来事というのを話ししたんですけれども、その先生もやはり、その私が思い当たっていることが、まあ一番のわかりやすい出来事なんじゃないかっていうことで、まず最初にそのことについて、あの、EMDRをしたんですね。
で、それに関しては、すごく効果が出たというか。痛みの感じ方というかがちょっと変わったんですけれども。やはりその、脳に作用する治療なので、治療を始めて2、3カ月ぐらいで、あの…、何ていったらいいんだろう、見当識障害とか、あとは…えーと、ちょっと意識障害とか記憶障害みたいなのが出てきて。
あの、見当識っていうと例えば、こう、時間の経過というのがわからなくなったりとか。あとは、例えばどこかに旅行に行くとして、あの…こう準備したものがどのぐらいの大きさのカバンに入るのかっていう、その見当がつけられなくなってしまう。その、このカバン、この大きさのカバンにはこのぐらいの荷物が入るっていうようなことって、大体こう見たらわかると思うんですけれども、それがこう見てもわからなくなってしまうとか。
あとは車を運転してて、その目で見たものが脳にきちんと伝達されなくなってしまう。こう見ていても、この一部が全く見えてこないというか、頭に入ってこない。それはたぶん伝達でどこかがおかしくなってしまってて、あの…、目で見てるものがきちんと見える状態にないというか、何て説明したらいいのかちょっとわからないんですけれども。要は、伝達の部分がちょっとおかしくなってしまって。で…なので、その時期は車の運転もちょっとできなくなってしまったし。
たぶんそれはその途中経過で起こり得る、まあ想定の範囲内の出来事ではあったんですけど。ちょっと普通に治療している…人には、たぶんない感覚というか、ない…副作用というか、そういった出方だったと思うんですけれども。
※ EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)とは、トラウマ的、苦痛で嫌な人生経験が不完全に処理されたことによって、精神病理の多くが生じている(適応的情報処理モデル)という考え方に基づく心理療法。なおEMDRを含め治療法の選択にあたっては、専門的見立てに基づき、治療者との相談の上で判断がなされるのが一般的です。
インタビュー16
- 何で女性として一番いい時期に自分が病気に選ばれてしまったのか。インタビューに協力するのも、病気に選ばれた意味がそこにあると思いたいからかもしれない(音声のみ)
- ひとり立ちできず両親に経済的負担をかけていることへの心理的負担が大きくなっている
- どんな薬を飲んでも痛みは軽減されなかったが、EMDR*という心理療法を受けて初めて変化を感じた。今は薬は睡眠導入剤以外服用していない(音声のみ)
- 大学病院でも異常が見つからず、うちではどうにもできないと言われ、最後にかかったクリニックでの検査も異常なく、「慢性疼痛障害」というグレーゾーンの病名がついた
- 現在、EMDRによる治療を受けている途中。記憶を1つ処理した後に、痛みの感じ方が変わったので効果を感じる一方、副作用のような症状も出ている (音声のみ)
- EMDR※は脳に刻まれたトラウマ記憶が症状の根本にある前提で、指の動きに合わせて目を動かし、トラウマ記憶を想い出すと記憶の再処理がはかれる、と聞いている
- 検査を受けても診断がつかないと、医師に「悪いところはないので治療の必要はない」と言われたり、足の痙攣を「わざとやっているの?」と疑われたりして精神的に傷ついた
- 診断がつかない患者に冷たい医療機関が多い中で、今の主治医は「絶対に諦めない」と言ってくれる。治療による効果はあまり感じられないが、その心強い言葉に支えられている
- 高名な中国の鍼(はり)の先生にかかり、漢方も処方してもらったときには、1年間で300万円かかった。杖なしで歩けるようにはなったが、痛みがなくなるということはなかった