※写真をクリックすると、動画の再生が始まります。

インタビュー時:47歳(2017年6月)
疼痛期間:9年
診断名:複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)I型

中国地方在住。4児の母。2008年2月に階段を踏み外して左足首を捻挫。腫れが引いた後も痛みが取れず、次第に悪化して歩けなくなり、反射性交感神経性ジストロフィー(現在はCRPS I型)と診断される。大学病院のペインクリニックを紹介され、認知神経リハビリテーションを受けて、4年近くかかって日常生活が送れるまでに回復。その体験記を担当の理学療法士との共著として出版。今も完全に痛みから解放されることはないが、痛みを自分の人生の一部として受け入れられるようになってきた。

語りの内容

「破局的思考(※)」って聞いたことありますか。あれ、めっちゃ腹が立つんですけど、私(笑)。何で腹が立つか、だって私と同じ病気の患者さんに限っては、あの、痛みがあるから家にこもろうとかいう人をあんまり知らなくて、実は。私に大きな影響を与えてくれた先輩の患者さんがいるんですけれども、その方もすごい痛みを抱えながら、どんどん、どんどん人の前に出ていって、もうね、笑うのもつらかろうに、こう…、多くのことを伝えてくれて。私もどっちかというと、まあ痛いけど、うん行っちゃえとか、痛いけど(笑)、いろんなことをやりたくて、やっては激痛、「ううっ」てなるタイプなんですけども。あの理論をみんなに当てはめられると、すっごい腹が立ちますね。何でですかね。
で、その…心の面とか生育歴とか、えーと、あといろいろ言われますよね。なんか社会的な要因とかもそう、そう、そう。いろいろ書いてあるの、最近、慢性の痛みというとまずそれが出てくるじゃないですか。受け止め方とか(笑)。そう。大事にしすぎるからだとか(笑)。そうすると、「もうじゃあ、何、この痛みがずっと消えないのは、何、私が悪いの?」って言いたくもなってきて、それが土壌にあって「きっと治らなくてごめんなさい」っていう思考に、もしかしたら陥ってしまったのかな?と思った時期があります。それはたぶん今でも消えていなくて。

私が一番危惧しているのは、その…、『腰痛は怒りである』とか(笑)。……いやあの、ね、あの、心理社会的な面も見なくてはいけないということはわかるんですけれども、それで流されてしまうと、なんか、その患者、病気、病態、治療ということを考えたときに、果たしてそれでいいのかなという思いは、とてもあって。今、世の中がその痛みの何年?とか言ってやっているけれども、果たして痛みということで一括りにしてもいいのかな、というのはとても感じています…ですね。

――痛みで一括りにしないとなると、今度、細分化の方法に向かったほうがいいと?

細分化というか、うーん、何だろう。……その画像に写らない機能的なものですよね。そういうものに対する評価…のほうに、もう少し目を向けてくれないのかなという気持ちはありますね。痛み、目に見えないじゃないですか。…その器質的な異常は、まあ見つからないにしても、うーん、何らかのシステムのエラーだとは思うんですけれども。

痛いから動かさない、痛いからこれができない、痛みさえなければこれができるのにみたいなの…で、最初からもう…踏み出せないというか、動か――心の面でも体の面でも動き出せないっていうのは、まあ確かにあるかもしれないんですけれども、それで慢性痛をすべて語られるのはとても気持ちが悪いです。嫌ですね。

※破局的思考:痛みによる恐怖や不安が病的なほど過剰に続く心理状態のこと。痛みのため何もできないと感じる「無力感」、痛みのことが繰り返し去来する「反芻」、痛みがさらにひどくなり、深刻な事態を起こすのではと考える「拡大視」の3要素から定義されています。

私は: です。

(アンケート結果の扱いについては個人情報の取り扱いについてをご覧ください。)

認定 NPO 法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」では、一緒に活動をしてくださる方
寄付という形で活動をご支援くださる方を常時大募集しています。

ご支援
ご協力ください

モジュール一覧