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インタビュー時:47歳(2017年6月)
疼痛期間:9年
診断名:複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)I型
中国地方在住。4児の母。2008年2月に階段を踏み外して左足首を捻挫。腫れが引いた後も痛みが取れず、次第に悪化して歩けなくなり、反射性交感神経性ジストロフィー(現在はCRPS I型)と診断される。大学病院のペインクリニックを紹介され、認知神経リハビリテーションを受けて、4年近くかかって日常生活が送れるまでに回復。その体験記を担当の理学療法士との共著として出版。今も完全に痛みから解放されることはないが、痛みを自分の人生の一部として受け入れられるようになってきた。
語りの内容
あの、「目を閉じて、左足の輪郭が描けますか」の、あのときです。…あれ、衝撃でしたね。痛いとは思ってたんですけど、それ以外あんまり。痛い、動かないは思ってたんですけど。
――目を閉じたら。
閉じたら、左足がそれこそ消える。自分の、これ説明するの難しいんですけど、自分の指先がどこにあるのか全然わからない。膝下がもう、消えてる。…「えっ?」って。ただ痛みだけがなんかその辺にある。あれはびっくりしました。
――目を開けてたときには、あんまりそういうふうには思ってなかった?
目は、そうなんです。気づかないんです。
――ああ、そこが痛いみたいに。
そう、そう、そう。あの、目開けてるとき、足、普通にあるので、そこが痛いと思っているんですけど。普通、目を閉じて、足がどこにあるかなんて考えないですよね(笑)。で、目を閉じると、まあその、まあ痛みとしてはあるので、左足が痛いというふうにはずっと思っているんですけども、「目を閉じて足の輪郭が描けますか」と聞かれたときのびっくりは今でも覚えてます。
――じゃ、それがないから、当然立ったり。
そう、そう、そう、そう。それなんですよ。当然立つことも、動かすことも、支えることも、まあできない。こう、見ればあるんですよ。だけど、ね。だから見て、何とかこうやってみようとするんですけど、目を閉じてということは、要するにそこから情報ですよね、視覚以外の情報が全く返ってきていない状態ですよね、目を閉じて、ないということは。目を閉じて、ないものは、ないものを使って歩けるわけがない。あるとすれば…、という感じですね。
インタビュー42
- この壁は乗り越えられないと明らかにわかったらそれは「受け入れ」。諦めたことが日常になって諦めたとも思わなくなるのが受け入れではないか?
- 硬膜外ブロックで麻酔液が流れるとつねっても感じなくなったが、(CRPSの)足首の痛みは消えず、麻酔がかかっているのになぜ痛いのかわからず、怖くなった
- 今はノイロトロピンとトリプタノールを半量と抑肝散を飲んでいて、痛みが強いときにはリリカも飲む。ロキソニンは(CRPSの)足の痛みには使わない
- CRPS(複合性局所疼痛症候群)という病名はどこか痛いのだろうという程度に伝わる。前の反射性交感神経性ジストロフィーの方が病気を表していて、自分にはしっくりきていた
- 同じ病名でもわかりあうのは難しいのに、医療の中で慢性の痛みとして一括りにしてしまってよいのか。きちんと評価せずに、痛みだけしか見なくなるのではと疑問に思う
- 最近では慢性の痛みというと、まず心や成育歴、受けとめ方の問題と言われる。痛みが消えないのは自分のせいと言われているよう。慢性痛全てに当てはめるのは止めてほしい
- リハビリを卒業したのが5年前。日常生活には支障がなくなったが、もう養護教諭の仕事は出来ないと医師に言われ、出来ないことを改めて自覚し、かなり落ち込んだ
- 目を閉じて左足の輪郭が描けるか?と聞かれ、膝から下が消え、そこにはただ痛みだけがあることに衝撃を受けた
- 認知神経リハは、ものを感じ取るためのリハビリだと思う。実際に動かす前に、頭の中で動かしてみるなどして脳のエラーを発見する
- 感覚をイメージできない動きは、頭の中でもできない。動かすのに必要な要素をつなぎ合わせ、新しく「学習」して、以前とは別の足を「作り直し」たように思う
- 遠足の帰り道、道に飛び出した園児をとっさにつかまえることができなかった。やりたくても自分ができるレベルの仕事ではないと客観的にわかった
- 手術後の麻酔で朦朧としているときにも「足が痛い」と訴えるのを聞いた看護師が「CRPSで痛いというのを疑っていたが、本当に痛いとわかって涙が出た」と話してくれた
- 治療に関してあれもこれもやってみたいと畳みかけていたが、主治医は冷静に対応して思い通りにはやってくれなかった。結果的にはそれが良かったので今は信頼している