集学的治療:痛みへの多方面からの専門的アプローチ

集学的治療とは、医師や看護師、臨床心理士や理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーなど、異なる専門スタッフが、カンファランス(話し合いの場、検討会)を持つなどしてチームとして情報を共有・連携し、患者一人ひとりにあった方針・計画をそれぞれの専門性を活かして立案し、治療や支援を行うものです。 慢性疼痛治療ガイドラインでは、①痛みが日常生活に及ぼす影響を減らすサポート、②痛みに影響を与える思考や行動への認知行動療法的トレーニング、③段階的な運動、④薬物治療、⑤神経ブロックに代表される介入的な治療の 5つを集学的治療の柱としてあげています。 私たちのインタビューでは、専門病院で認知行動療法を組み合わせた通院の治療プログラムを体験したという方と、入院期間中から参加できる、様々な専門医やスタッフと「ざっくばらんに話ができる」病院主催の集団療法的な患者会に参加した経験を持つ人がいました。

また、訪問リハビリの担当理学療法士が、率先して入院先との連携をとってくれたという次の女性は、もともと脳出血による視床痛のために、訪問リハビリを利用していて、転倒して骨折、入院になったとき、担当の理学療法士が入院先にすぐに来てくれ、痛みの少ない姿勢や動きを院内の担当スタッフに伝えて環境調整してくれたことに、とても感動したと話していました。

集学的治療を推進する動きがある一方、私たちのインタビューでは、さまざまな理由で、この薬物療法はこの病院、リハビリはここ…といった具合に、自分に合う治療を提供してくれる専門家を求め、複数の医療機関を並行して利用せざるを得ない、いわば「自前」で集学的な治療のネットワークを作っている状況にある、と語る人は少なくありませんでした。

次の女性は、頸髄損傷による不全四肢麻痺から、ひざ下に焼かれるような痛み、指先からひじにかけて刃物で切られる「拷問」のような痛みを抱えていて、近隣の整形外科では「我慢するしかない」と告げられ、訪問リハビリでは担当者に痛みを口実に怠けていると受けとられ「もう来ない」と言われてしまい、知人を介して現在の病院が見つかるまで、一時は途方に暮れた、と言います。自分のように苦労する人がいなくなるよう、さまざまな専門職がいて、自分に合った治療を相談できる、センターのような場所が必要だと話しています。

また次の人は、医療用麻薬を服用していて、処方の方針が医療者間で異なることによる苦労を経験していました。担当医が代わった際、処方量が減量となったため、痛みとしびれが増悪して動けなくなり、自分が必要とする量を出してくれる医療機関を探して駆け込んだそうです。(医療用麻薬による治療体験については、詳しくは薬物療法①:痛みの慢性化の経過と薬の種類 をご覧ください)

次の男性は、医師で、かつ痛みを抱えた当事者の立場から、患者と社会にとっての集学的医療の意義、重要性について語っています。

2018年7月公開

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