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インタビュー時:61歳(2016年9月)
疼痛期間:14年
診断名:複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)
近畿在住の男性。妻と二人暮らし。競走馬を調教する仕事中に、厩舎に入った直後の馬と壁に挟まれて負傷。左手関節・左指・右足の骨折、左肩腱板断、反射性交感神経性ジストロフィー(現在はCRPSと呼ばれる)と診断された。腱板断裂修復手術を受けたが、痛みは左肩と左手首から次第に全身に広がり、手足に焼けるような痛みとしびれがある。現在は離職して収入がないことが一番つらい。
語りの内容
私がケガをしたことによって家内が、まあ働くようになったわけですけど。私も、とにかく働きたくなくて働いてないわけではないんですね。できれば働きたいと思ったんですけども、とにかく…この痛みというのが中途半端ではないわけですね。周りから見たら、「何かどこが悪いの?」と言われても、本人はものすごく痛い。その痛いのも、お医者さんも理解してくれなかったし、まあ家内も、こう一緒に住んでいて、本当なのかなとは思ってたと思います。で、私、あの、こう、画像とかそういうものを見せて、あ、これは痛いなと、いうのがわかったんだと思いますけども。とにかく仕事ができないというのは、男として一番ね、つらいことなんですね。それも…、当時の仕事というのはかなりの収入があったもんですから、その収入を一気に断たれるというのはものすごいショックですよね。第2の人生を考えようと思っても、こういう今の現状、この痛みというのを乗り越えろと言われたら、本人次第と言うんですけども、その痛みというのは中途半端じゃないんですね。そこら辺が今の社会の方にわかってもらえないというのが現状なんですね。
―― 以前の収入がなかなかこう、ケガによって、得られなくなってしまうということに対して、さまざまなところに影響が出てくると思うんですけども、それに対してご家族の方というのは、その経済的なことに関しては何か…、どういうふうにこう思ってたとか。
うーん、私の場合、あの、子どもがいなかったから、まあ今まで来れたと思うんですね。これが子どもを育てていたらおそらく…、まあ自分でも自殺してたんちゃいますかね。経済的な負担、まあ社宅から持ち家を買うというときから、ものすごいこう…、負担になったわけですね。職を失って、社宅を出て、自宅を購入しなければいけない。自宅を、転居しなきゃいけない。そのときに大変な、いわゆるお金がいるわけですね。それに、なおかつ、その病気というのがつきまとうわけですね。病気が治っていれば、確かにその、また収入を得られたんでしょうけども、この病気が治らないということでものすごい経済的にも負担があったし、家内にもかなり負担をかけたと思います。……痛みというのはものすごく、簡単に、痛み、痛みという言葉で言われますけど、ものすごい大きな問題だと思いますね。
インタビュー30
- この痛みが一生続くというのが耐えられず、死にたいという気持ちになる。家族もいるし、そうする勇気もないが、そこまで痛いというのがこの病気(CRPS)だと思う
- 軽い運動や深呼吸、腹式呼吸を生活の中に取り入れている。ストレッチは心地よいところまで伸ばすと痛くなるのでその手前までやめておくようにしている
- 痛みで苦しんでいる人とは、家族にも分からない痛みの経験を共有する者同士なので、何時間も電話で話すことがある
- 山野草の栽培が趣味で、その趣味を通して人との交流もあり、痛みを紛らせることもできたが、今はできなくなってしまったことが苦痛である
- 仕事をしたくてもできなくなり収入が一気に断たれ、妻が働くようになったことが男として一番つらい
- 「治療法がない」ということでさじを投げられ、これまでに延べ20人くらい医者が替わっている。「仕方がない」「やる気がないだけ」といわれるのがつらい
- 痛みのメカニズムをきちんと理解せずに患者の訴えを否定する医師が少なくない。そのために正しい診断がなされず治療が遅れて重症化するので、もっと医療者を教育してほしい
- 「あんたの言っていることは嘘じゃない」「実際に痛いところがあって脳に信号が送られているんだから、あなたは正常だ」と言ってくれる医師が何人かいたことが救いだ