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インタビュー時年齢:75歳(2012年12月)
常用薬の副作用(胃潰瘍)の予防薬の治験(第3相・プラセボ対照試験)に参加。
首都圏在住。長年通院している病院で、狭心症治療薬(バイアスピリン)の長期服用中で胃潰瘍になったことがある患者を対象とする治験のポスターを見て、自分が役に立つことがあればと思い、参加を決意。2010年から約1年間参加した。薬が増えることに苦痛を感じることもあったが、治験に参加していることの責任感もあり、やめたいと思うことはなかった。
語りの内容
で、あと、やっぱり、一つ、――これは、もうどうでもいいことなんですけども――気になったのは、要するに…擬似薬と本当の薬と2種類ですと、A・Bでどっちになるか分かりませんと言いながら、渡されてくる薬は、しばらくしたらば…どうもこれは偽物、私は偽物グループだなっていう気がしました。というのは、与える薬の、要するにカプセルの物ですけどね、今、みんな、普通の、私も自分で持病のために薬をもらっているでしょう。ああいうパカーンとして、こう、何ていうんでしょうかね、カプセルを閉じ込める、ああいう、あれになって、それがね、非常に粗末なんですよ。本当のお薬だったらば、こんないいかげんなはずがない(笑)。その点の配慮がちょっと。本当の薬はもちろん見ていませんけどね。で、アメリカで売っているのを輸入しているっていう説明がありました。今回は、日本のそういうもので、製薬会社さんがね、その、作っているのか、輸入しているのか分かりませんけども、今回使うのは向こうから輸入したものですというお話があったんですよ。それにしちゃあ、ちょっとね、お粗末で、どう考えても、これは手作りに近いなあと思ったんです。(笑)だから、どうもこれは偽物くさいなあという、そういう気がしたんで。
あんまりそういうことを感づかれないように、本物と偽物はこうですと言って見せていたわけじゃないですから、何とも言えませんけれども、今どきこんなに田舎っぽいね、包装のカプセルを、パッキングがね…というのはあるわけないなという感じだった。あの辺でちょっと、ちょっとお粗末かなと思いましたけどね、ええ。じゃなかったら、本物とあれ(プラセボ)を見せてね、「両方分からないでしょう?」と。で、「これはどっちかが本物、どっちかが偽物なんですけど、あなたの場合、どっちが行くかは分かりませんよ」っていう、そういう説明のほうが本当は正解ではないでしょうか、ええ。かえって、なんか「なんだ、俺、偽物かよ」っていうね、疑いを途中で持たれるようなね、そういうやり方っていうのは、あんまりいい方法ではないんじゃないかなという気がしました、ええ。
―― 「偽物かよ」って思ったときに、なんかこう、感情的に…。
ならないですよ、それは別に、ええ。それは偽物なら偽物、最初から偽物かどっちかという話で、ああ、どっちだって私は構いやしないと思っていましたから、偽物だからさぼろうかとかね、そういう気はないです。あくまで、やっぱり両方を同じような状態で比較試験というのはするもんです、のはずですからね。やっぱり、やらなきゃいけないわけですから、本物だろうと、偽物だろうと、それはもう、あの、差をつけようという気は特に起きなかったと思いますけどね(笑)。
インタビュー03
- 長年お世話になっている病院で、どのみち定期的に通っているのでそのついでに役に立てればよいという、ほんの出来心のような感じで参加を決めた
- 参加したことで、臨床試験なり治験なりに従事している人と接触できたことは、なかなか得られない経験で、彼らのおかげで新薬が作られていることを実感できたのがよかった
- 治験を実施する側がよくわかっていることでも被験者にはわからないことが多いので、非常に丁寧な説明が必要である
- 自分が参加した治験はマイナス要素がなかったが、治験にもいろいろあるので、一概に皆に勧めるというわけではない。自分なりに内容を調べる必要がある
- 治験に参加してお金は支払われたが、それを目的として参加したわけではないし、人の役に立ちたいという精神で参加するのが望ましいのではないかという気がする
- 治験薬に期待を持って参加したわけではなく、病院に協力できればと思っただけなので、治験薬がその後どうなったか積極的に知りたいとは思わない
- 治験に参加することを事前に伝えたのは主治医ぐらいで、妻には事後に伝えた
- 説明文書は専門家が書いたもので、術語が多くて、わかりづらい内容だったと思う。一般の人に読んでもらって、作り直したほうがいいのではないかと思う
- 約束したことは守るのが当たり前で、治験の薬を決められたとおりに飲まなければいけないという義務感をもった
- 飲んでいる薬が偽物ではないかという疑いを持たれないように、始めに本物の薬とプラセボを見せて違いがわからないことを示して説明したほうがいいと思う
- アスピリンによる胃の炎症を抑える薬の治験は、対象者を2つのグループに分けて、本当の薬と擬似の薬を投与して比較するという試験だった
- 新薬の治験だったが、その結果が自分に反映するものではないと説明された。自分の持っている病気に対する直接的な治療薬ではなかったので、期待していなかった