※写真をクリックすると、動画の再生が始まります。
インタビュー時年齢:38歳(2021年1月)
感染時期:2020年3月
背景:首都圏在住の女性。新聞記者。夫と長男(当時3歳)と次男(1歳)の子どもの4人暮らし。
勤務先の新聞社で仕事中に嗅覚障害に気づいた。PCR検査を希望したものの発熱がなかったため受けられず、発症から4日目にようやく検査を受け陽性だとわかり、入院できたのは10日目だった。入院後まもなく軽症ということで宿泊療養施設に移ったものの、その日のうちに発熱して病院に戻された。その後は毎日37度台の発熱があり、PCR検査を受けて1度は陰性になったものの再び陽性になってしまい、2回連続陰性になって退院できたのは、入院から2週間後のことだった。
語りの内容
その嗅覚検査を受けに行ったそこの病院の先生に嗅覚障害を治す薬っていうのはないんですと、「鼻詰まりを治す処方とか、あるんです。こうなんか、ないわけじゃないんですけど、緩和させるってのはあるんですけど、神経性の嗅覚障害の場合、これに効くっていうお薬ってのはないと言われて、多くの場合、例えば、年を取ることによって嗅覚が失われるとかは、もうちょっとまあ治しようがない、ないんですけど、こういう神経性の場合は、えっと、ないんだけど、時とともに戻ってくる場合と、あとはリハビリによって戻す場合っていうのがあって、それでそのリハビリってのは何ですかって聞いたら、そのスメルトレーニングっていうドイツで、ドイツで生み出された、嗅覚障害を治す療法で、幾つかにおいがあるんですけど、アロマオイルを使う場合が手っ取り早いので香料なので。例えば何だっけな、レモンとラベンダーと、クローブと、何とかって幾つか決められたにおいがあって。私、元々はラベンダーの元々アロマオイルを使ってたので、あったんですよ。それを希釈して、日に朝晩決めた時間にこう嗅いで、嗅覚、こう刺激を与えていく。
で、もう一つは、例えば身近にある、例えばせっけんとかコーヒーとかレモンとか、嗅がなくてもにおいを知っているものがありますよね。長年の自分が使ってきたものとか。それを、使う…嗅ぐ前に脳内でイメージをして、まず。なんかこんな、コーヒーってこんなにおいだったかなって、まずイメージした後に、実際のものを嗅ぐ、という、2種類をあるので、2種類同時にやってくださいみたいな、自分のペースでいいですよ。で、直接的にアロマとかを嗅ぐっていうのは、ちょっと刺激なんですけど、もう一つの思い浮かべるっていうのは、まずはなんか脳内の記憶にある嗅覚を思い起こして、かつ、実際のコーヒーだったらコーヒーのにおいを嗅ぐことで、脳内の記憶と鼻から入ったそのニオイ分子が元々こうなんか、つながらないから分かんないにおいが、だんだんだんだん、脳内の嗅覚を呼び起こすことによってみたいな、まあ、リハビリなんですけど、っていうのでだんだん治っていくことがあると。
で、嗅覚障害の場合、大体、半年から1年かければ多くの人は治るんです、というので、なので、あんまり焦らずに、やっていきましょうみたいな感じで言われました。で、それは、いわゆる、スメルトレーニング、それをそういう、アロマだったり、その元々ある、知ってるにおいを思い出して実際のを嗅いでみたいな、そういう意識、におい、意識してやること全体をそのリハビリを、スメルトレーニングとその先生はおっしゃってて、で、それをなんかやって、かつ鼻のCTを撮りに行って、…やっぱりそこでも若干やっぱり嗅覚にちょっと異常がある、あの、神経にっていうのがCTで分かったんですけど、「すごーくちっちゃいよ」って言われて、「多分そんなに心配しなくても、大丈夫なんじゃないかな」みたいな。
インタビュー01
- 私がなるわけないという気持ちがあった。可能な限り在宅勤務していたし、通勤ラッシュや人込みは避けるようにして、マスクもしていたので、感染経路が全くわからない
- 自分の入院中、自宅で待つ夫は子どもをずっと閉じ込めておくわけにもいかず、時間を選び買い物ついでに原っぱで運動させていた。夫も相当追い詰められていたと思う
- かかる時にはどんなに対策をとっていてもかかる。子どもがいる人は、家族内で役割をシミュレーションしておくと家庭内感染を防ぎ、最低限の被害で済むと思う
- 前日までぴんぴんしていたのにいきなり倦怠感を感じて、食欲もなく、起き上がることもできなくなった。二日酔いや徹夜の時とかとは全く違う、生まれて初めての経験だった
- 発症に気づいたのはアロマオイルを入れた消毒液をひと吹きしてもラベンダーの香りがしなかったから。新聞記者として取材を通して嗅覚・味覚障害が症状の一つと知っていた
- 嗅覚障害だけではPCR検査が受けられなかったが、絶対コロナだと確信して、鋼(はがね)の意思で家族に寄り付かないことにした。それを貫いたおかげで家庭内感染は防げた
- 「ママ病気なんだよ」と説明しても子どもには分からない。「汚いから来ちゃダメ」と、子どもも自分も泣きながらの毎日が繰り返された
- その後3カ月くらい下の子は親の姿がみえないと大泣きし、上の子もチック症が出た。小児科で「不安の表れ」といわれたので、叱るのをやめ、いっぱい抱きしめてあげた
- 医師、保健所には否定されたが、取材経験からこの嗅覚異常は間違いなくコロナだと思った。上司に相談して取材活動を控え、自主隔離して経過を見ることにした
- 感染疑いから6日で全身の痛みが始まった。身体の内側から無数の針で刺されているようで、横にもなれず、一番ひどい時にはよつんばいの姿勢でひたすら耐えていた
- 子どものうんちの臭いが分からないというと夫は言葉を失った。鼻をすぐそばに近づけてもわからなかった。嗅覚が戻り子どものおむつの臭いが分かった時は嬉しかった
- 嗅覚障害の専門医にかかり、ドイツで生み出されたスメルトレーニングを受けた。半年~1年かければ多くの人が治るというので、焦らずにやっていきましょうと言われた
- 自分の体験を実名で記事にした。誹謗中傷を心配する人もいたが、匿名にしたら感染は隠すべきものと受け止められると思い、家族や保育園の先生の賛同を得た上で記事を書いた