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インタビュー時年齢:60代後半 (2021年7月)
感染時期:2020年12月
背景:首都圏在住の男性。妻(50代)と妻の親族2名の4人暮らし。

年末年始が繁忙期となる会社に長年勤め、定年後もアルバイト勤務。12月半ば、早朝微熱に気づき会社を休んだ。味覚障害やせきはなかったが、38度を超す熱が出たり下がったりを繰り返したので受診。PCR検査の結果が出る前に会社に長期の休みを申告し、その後陽性となり入院。頭痛と高熱が続き、酸素吸入と点滴を受けていた。退院後会社に感染を伝えたが、すぐに報告しなかったことを咎められ、後に雇止めになった。

プロフィール詳細

首都圏の会社に長年勤め、定年後もアルバイトとして勤務を続けていた。2020年12月半ばの早朝4時ごろに微熱に気づき、会社に休むことを連絡。翌日も微熱が続いたので、その週いっぱい休むことにした。数日前に仕事で車に同乗していた同僚が、激しくせき込んでいたことがちょっと気にかかったが、せきも味覚障害もなかったので、風邪だろうと思って市販薬を飲んで様子を見ていた。その後38度を超える熱が出たり下がったりを繰り返したため、コロナを疑って発熱外来を受診。PCR検査の結果を待つ間に、もしコロナだったら年末年始が繁忙期となる会社に迷惑をかけると思い、1月第2週までの長期の休みをもらった。

2日後、PCR検査陽性の結果が出たが、それをすぐに会社に伝えたら繁忙期の現場に大きな混乱をきたすことは明らかだった。保健所から発症前の行動についての詳しい聞き取りはなく、自分では職場に濃厚接触者はいないという自信もあった*ので、あえて連絡しなかった。ネットなどで「コロナ解雇」について見聞きしていたことも、連絡をためらう一因となった。結果を聞いた翌日には、保健所が手配した車で病院に入院した。濃厚接触者となった家族もすぐにPCR検査を受けたが、同居していた妻の親族は陰性で、妻だけが陽性となり、ホテル療養となった。
*この時期、第3波で業務がひっ迫するなか保健所による詳しい追跡調査が行われませんでした。ご本人は高熱が出る2-3日前から休んでいたので、会社には濃厚接触者はいないと判断したそうです。

入院中6人部屋の他の患者は皆激しくせき込んでいたが、自分はほとんどせきが出なかった。代りに高熱と頭痛に悩まされ、気がおかしくなるのではないかと思うような悪夢にうなされた。血中酸素飽和度は一番低い時で87くらいで、酸素吸入と点滴をすることになり、酸素マスクは退院する前日までつけていた。入院してからちょうど1週間で退院の許可が出た。年明けに再び受診すると、退院時に撮影したレントゲン写真にコロナ肺炎の影があると言われたが、「一応完治です」というお墨付きをもらった。

この日、会社の上司から電話があったので「実はコロナ感染したんです」と伝えた。職場では他に感染者は出ていなかったが、職場復帰をどうするかすぐには決まらず、2回電話をかけ直して翌週から勤務と決まった。その後、1カ月ほど通常通りに週4日勤務していたが、その間に国民健康保険加入者でコロナ感染した人に特例措置で傷病手当金が出ることを知り**、地元の役所に行って申請書をもらってきた。申請書の上部に大きく「新型コロナウイルス感染症に係る国民健康保険傷病手当金支給申請書」と書かれていることに驚き、このような申請書を会社に出したら解雇されるのではないかとためらったが、結局2月上旬に総務の事務方に提出した。これを機にコロナに感染したことが所属部署外にも知られることになった。
**被用者保険の加入者は新型コロナウイルス感染症に限らず、病気療養のため勤務できない場合は、所定の傷病手当金が支給されますが、通常傷病手当金が支給されない国民健康保険の加入者にも、市町村によっては、新型コロナウイルス感染症に感染した被用者に傷病手当金を支給する場合があります。

翌日、仕事は休みだったが会社から呼び出しがあり、これまでコロナ感染を会社に伏せていたことを責められた。直上の上司には正月明けに電話で報告していたはずだったが、先方は聞いていないと主張し、「言った、言わない」の水掛け論となり、「コロナ感染を黙っていたことは泥棒と同じ」と言われて非常に傷ついた。さらに翌日からは「日付のない交代要員」とされ(自宅待機で実働もないので給与が出ない)、社長からも「犯罪人」呼ばわりされて、傷病手当金支給申請書にも1カ月以上ハンコを押してもらえず、3月の契約終了時点で雇止めになった。

コロナ感染を言い出せなかった自分にも落ち度はあるが、毎朝の点呼の時間にも「コロナ感染したら申告するように」といった話が出たことはなかった。もし、そのように言われていたら申告しただろうと思う。長年勤めた会社からのあまりの仕打ちに、法的措置を取ることも検討している。国は事業主に対する休業補償などの制度は整備しているが、コロナに感染した個人の生活保障が十分ではないと感じる。国民健康保険に特例的な傷病手当金があることを知らない人も多いだろうし、それが解雇につながる可能性があるとしたら、申請をためらう人もいるだろう。そうしたことへの配慮が必要だと思う。

私は: です。

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