新型コロナウイルス感染症の第1波から第3波の頃まで幼い子どもの感染は、成人に比べ感染しにくい可能性があること、仮に感染しても無症状~軽症で済むことが多く、経過観察または対症療法が選択されているケースがほとんど、との報告*がされていました。しかし、第5波で感染が広がったデルタ株や第6波のオミクロン株では、子どもも感染しやすくなっていることが報告**されています。
*日本小児科学会 小児のコロナウイルス感染症2019(COVID-19)に関する医学的知見の現状(2020年11月11日)
**日本小児科学会 オミクロン株流行に伴う小児 COVID−19 症例の臨床症状・重症度の変化(2022年3月7日)
ここでご紹介する語りは、子どもの感染が比較的少ないと言われていた、第1波から第3波の体験ですが、子どものいる家庭でひとたび濃厚接触がおきたり、感染が発生したりすると、子どもを含めた家族全員に、さまざまな影響が及ぶことがこれらの体験者の語りからもうかがえます。
家庭内で感染者が出ると、一般的には自宅内隔離など、他の家族と距離をとるように言われますが、子育て中の家庭では、食事やトイレのサポート、スキンシップなど、生活のあらゆる場面で、親子の密着したかかわりが必要です。
ここでは、親が感染した場合と、子どもが感染した場合、それぞれのケースの体験談をご紹介します。
幼い子どもにどう伝える、どうかかわる?
自身の感染が疑われたとき、夫・子どもにうつさないようにと、自宅の一室にすぐさま籠ったという女性は、入院先が見つかるまでの間、ドアの向こうで泣き叫ぶ子どもに会えないつらさと、なぜ今会えないのかを幼い子どもに説明する難しさ、そして入院先から回復して戻ってきた後もしばらく続いた子どもへの影響について話していました。
こちらの男性は、妻と幼児の3人暮らしで、自分の感染が発覚した数日後に妻が陽性となりました。子どもは陰性でしたが、親二人が感染し、まだ一人で寝ることもできない子の世話をどうするか悩んだといいます。妻の感染が分かった夜、先に感染した自分の方が感染力は低いと考えて、自分が息子を寝かしつけることにした、と話していました。療養先が決まるまでにも、紆余曲折ありましたが、最終的には妻と子どもが一緒に病院へ、男性は療養施設に入ることになりました。男性は、子どもを感染させるのでは、とおびえながら子どもの面倒を見なければならなかった入院中の妻の苦労と、子どもの様子を振り返っています。
シングルマザーのこちらの女性は、父親と一緒に検査を受けて二人とも陽性であることがわかり、入院を勧められましたが、小学生の子ども2人と認知症の母を家に残して入院はできなかったので、いったん家に戻りました。母親と子どもたちと再度病院を訪れ、検査の結果、母と次男も陽性と判明しました。このとき陰性の長男も自分たちと同じ病院の個室に入れてもらえたそうです。
このように、保護者が陽性で入院が必要になって、子どもへの適切な養育の担い手が見つからない場合、保護者の入院する医療施設等へ一時保護委託を相談できる(保護者と一緒の病院に入院できる)制度があります。また、保育士が配置されたホテルで陰性の子どもだけを預かる制度を設けているところもあります。保健所を通じて、お住いの自治体にご相談ください。
(参照:厚生労働省「『新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言等を踏まえた支援対象児童等への対応について』に関するQ&Aについて」(2020年4月23日))
また、保育園に通う二人の子どものうち一人だけが陽性と判定されたという母親は、子どもの年齢を考え、家族そろっての自宅療養を選択しました。ほかの家族が陰性と確認できた時点で、開き直って普段通りの生活をしたことや、幼い子どもの体調を把握するための工夫について話しています。
なお、子どもが感染して自宅療養する場合の留意点を、国立成育医療研究センターが「新型コロナウイルスに感染したお子さんが「自宅療養」される際のポイント」(2021年8月17日)としてまとめていますので、参考になさってください。
外出制限の期間をどう乗り切るか
小さな子どもたちは遊びたい盛りですので、外出の制限は大人以上に大きなストレスになり、それが親のストレスにもつながります。長く続く自宅隔離中の子どもの様子、自宅での遊びや息抜きの工夫、必要最低限に外出を減らしタイミングや場所を慎重に選んでいたことや、そのとき抱えていた複雑な思いが語られていました。
パートナー、家族との連携の重要性
家族やパートナーのサポートの大切さを言葉にする人もいました。
こちらの幼い子ども2人をもつ4人家族の女性からは、自宅での隔離と入院経験を経て、普段の夫婦の助け合いの大切さと、夫のサポートのありがたみに触れ、小さい子どもがいる家庭では、いざという時のことを考えた役割分担のシミュレーションを勧めたい、という話も聞かれました。
近くに住んでいる場合には、親や親族も子どもの預け先の選択肢ですが、高齢だったり、持病を持っていたり、預け先家族の負担や感染を広げてしまうリスクを思うと控えたいという声が聞かれました。支援物資を送ってくれたり、外には話しにくい話を聞いてくれる存在として、ありがたかったというエピソードもありました。
2021年9月公開/2022年3月更新
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