診断時:24歳
インタビュー時:45歳(2018年10月)
九州地方在住の女性。夫と二人暮らし。24歳の頃、腹痛と体重減で病院に行ったらクローン病と診断された。そのまま入院して2か月ほど絶食と点滴で寛解になり退院した。その後、保育士の資格は取ったものの諦めて事務の仕事をしていた。28歳で結婚を機に退職し専業主婦をしていたが、1冊の本がきっかけで、やりたかった編み物を習い始め、保育士の仕事もしながら編み物教室を開いた。そのころ大腸の狭窄がひどくなり手術をして大腸を全摘し、ストーマ(人工肛門)を造った。おかげで食事も少し食べられるようになり、今は元気に生活している。
プロフィール詳細
OLをしながら保育士の学校に通っていた24歳の頃、初めはお尻が痛くなり、そのうち腹痛が出て体重が減ってきて、ついに起き上がれなくなるほどお腹が痛くなって、近くの消化器専門病院を受診してクローン病と診断された。
2か月ほどの入院で、絶食して点滴とステロイドの治療を受け、寛解になって退院したが、その後は保育士を諦めて、通院を考慮して、夕方から夜にかけての電話受付の仕事をした。その頃知り合った夫と28歳の時に結婚し、専業主婦になった。その後も2~3年に1度入院するような状態が続いたが、結婚してから5~6年後くらいに、なかなか食事が満足にとれないことや少量ではあったが続いていたステロイド(*1)を切りたかったことなどから、代替療法や宗教に傾きかけたことがあった。しかし、キャリア・コーチの中野裕弓さんという人の本がきっかけとなり、病院に戻ると同時に、やりたいことをやってみようと思うようになった。そして好きだった編み物を習い始めて、保育士もパートから始めてフルタイムで働くようになった。3年ほど前には編み物の資格もとったので保育士の仕事を少し減らして編み物教室を始めた。
その直後主治医から手術を勧められた。それまで手術はずっと拒否していたが、大腸の狭窄がひどくなり、食事がずっとできない状態が続いていたので、少しでも食べられるようになるんだったらという思いで手術に踏み切った。長年の水様便で肛門の状態が悪くなっていたので大腸を全摘してストーマ(人口肛門)を作った。術後ストーマの近くに腸管皮膚瘻(*2)ができて、腸液がじわじわでてくるようになり、ストーマパウチ(*3)に細工をしなければならず苦労したが、今は免疫調節剤のロイケリン(*4)で良くなっている。
ストーマはやる前は不安だったが、付けてみると漏れもなく、トイレの心配もないのでそれほど不自由は感じていない。保育園でもみんなが気を使ってくれるので支障なく仕事をすることができている。また、なにより食事ができるようになったのがうれしい。
今でもエレンタール(成分栄養剤)で栄養補給しながら、ペンタサ(*5)とロイケリンを飲んでいるが、寛解状態が続いているので、これからも編み物教室を続けて一人でも多くの人、特に病気で苦しんでいる人に編み物の楽しさを伝えていきたい。そのためにもSNSやZOOMなどを勉強して遠隔地の人にも教えられるようにしたいと思っている。
*1 ステロイド:副腎皮質ホルモンの1つで体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われている。副作用も多いため、IBDでは一般的には寛解導入に使われるが寛解維持には使わない。
*2 腸管皮膚瘻:腸管が皮膚の内側に癒着して穴が空き、皮膚から腸液が出てくるもの
*3 ストーマに貼り付ける便をためるための袋
*4 ロイケリン:(一般名メルカプトプリン水和物)核酸合成を阻害することによる免疫調調節薬
*5 ペンタサ:(一般名メサラジン)クローン病の基本薬
2か月ほどの入院で、絶食して点滴とステロイドの治療を受け、寛解になって退院したが、その後は保育士を諦めて、通院を考慮して、夕方から夜にかけての電話受付の仕事をした。その頃知り合った夫と28歳の時に結婚し、専業主婦になった。その後も2~3年に1度入院するような状態が続いたが、結婚してから5~6年後くらいに、なかなか食事が満足にとれないことや少量ではあったが続いていたステロイド(*1)を切りたかったことなどから、代替療法や宗教に傾きかけたことがあった。しかし、キャリア・コーチの中野裕弓さんという人の本がきっかけとなり、病院に戻ると同時に、やりたいことをやってみようと思うようになった。そして好きだった編み物を習い始めて、保育士もパートから始めてフルタイムで働くようになった。3年ほど前には編み物の資格もとったので保育士の仕事を少し減らして編み物教室を始めた。
その直後主治医から手術を勧められた。それまで手術はずっと拒否していたが、大腸の狭窄がひどくなり、食事がずっとできない状態が続いていたので、少しでも食べられるようになるんだったらという思いで手術に踏み切った。長年の水様便で肛門の状態が悪くなっていたので大腸を全摘してストーマ(人口肛門)を作った。術後ストーマの近くに腸管皮膚瘻(*2)ができて、腸液がじわじわでてくるようになり、ストーマパウチ(*3)に細工をしなければならず苦労したが、今は免疫調節剤のロイケリン(*4)で良くなっている。
ストーマはやる前は不安だったが、付けてみると漏れもなく、トイレの心配もないのでそれほど不自由は感じていない。保育園でもみんなが気を使ってくれるので支障なく仕事をすることができている。また、なにより食事ができるようになったのがうれしい。
今でもエレンタール(成分栄養剤)で栄養補給しながら、ペンタサ(*5)とロイケリンを飲んでいるが、寛解状態が続いているので、これからも編み物教室を続けて一人でも多くの人、特に病気で苦しんでいる人に編み物の楽しさを伝えていきたい。そのためにもSNSやZOOMなどを勉強して遠隔地の人にも教えられるようにしたいと思っている。
*1 ステロイド:副腎皮質ホルモンの1つで体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われている。副作用も多いため、IBDでは一般的には寛解導入に使われるが寛解維持には使わない。
*2 腸管皮膚瘻:腸管が皮膚の内側に癒着して穴が空き、皮膚から腸液が出てくるもの
*3 ストーマに貼り付ける便をためるための袋
*4 ロイケリン:(一般名メルカプトプリン水和物)核酸合成を阻害することによる免疫調調節薬
*5 ペンタサ:(一般名メサラジン)クローン病の基本薬
インタビュー34
- 病気になる前は完全に受け身で誰かに言われた通りに生きてきた気がするけれど、病気になって、いろいろな本を読んでから、自分の思い方でどうにでもなるということに気付いた
- 母親は、私には直接何も言わなかったけれど、自分を責めて泣いていたという話を妹から聞いた。父がそういうことを責めるタイプの人だったので、父には病気のことは話していなかったと思う
- 一旦寛解になってから務めた会社の採用面接の時は病気のことは話さなかった。勤務時間が夕方からだったので日中病院に行くことができたし、仕事の上でも問題なかった
- 腸管皮膚ろうという、腸壁が皮膚に癒着して穴が開きそこから腸液がでてくるという合併症がストーマのすぐ横にできてしまい、ストーマの袋を調節するのに苦労した
- 最初にストーマの話を聞いたときは一晩泣いたが、付けている人は世の中にたくさんいるし、何とかなると思ってすぐ受け入れた。経験者の話やビデオを見て納得して手術に臨んだ