診断時:20歳
インタビュー時:55歳(2017年12月)
追加インタビュー時58歳(2020年8月21日)
関西地方在住の男性。妻と子ども一人。高校の修学旅行の最中に激しい腹痛と高熱を出して発症したが、なかなか診断がつかなかった。やっと診断がついても病気を受け入れることができずに、きちんとした治療をしないで過ごしていた。しかし東京の病院でエレンタールを教わり、それからきちんとした治療を始めた。手術も3回やりストーマも造ったが、今では子どもにも恵まれ、仕事も順調で前向きに病気と向き合って生活している。2019年に原因不明の高熱が続いて脳に腫瘍ができていることがわかった。クローン病と同じ自己免疫疾患らしく、薬物療法によって何とか症状が落ち着いたが、その薬のおかげかクローン病の方も症状が治まっている。
プロフィール詳細
中学生のころから軽い腹痛がよく起こっていたが、5分くらいで治っていたのでそのままにしていた。しかしついに高校3年の修学旅行の最中に激しい腹痛と高熱を出した。1日早く帰り、近所の病院をいくつも回って、最後には大学病院でさんざん検査をしたがそれでも診断がつかなかった。その時は両親が必死に調べまわってようやく近くの総合病院でクローン病の診断がついた。しかしその先生はIBD(炎症性腸疾患)の専門医ではなかったので、きちんとした治療はできず病状も改善しなかった。
このような状況の中、病気を受け入れることができず、何とか完治させようと新興宗教に入信したり、民間療法を試したりしたが、病気には効果はなかった。そんな時両親が探してくれた東京の病院に2か月入院し、そこでエレンタール(成分栄養剤)を飲むという治療をしっかり学んだ。また同じ病棟に同世代の同病の患者がたくさん入院していて、その人たちがきちんと病気に向き合って治療していることを見て、自分もちゃんとした治療を始める気持ちになった。
大学時代は入退院を繰り返し休学もしたが、何とか卒業できた。しかし、就職できる状態ではなく、このままでは一般企業に入れないと思い、資格を取るべく猛勉強をして3回目の試験で不動産鑑定士の資格をとり、父親の縁のある不動産鑑定士事務所に就職した。その会社で17年間勤務し、現在は独立して仕事をしている。
病気の方は就職してからも何度か入院し、手術も3回行ったが、3回目の手術の前には排便回数が20回から30回になっていた。頭の中が8割がたトイレのことでいっぱいになり、仕事も手につかない状態だったので、思い切ってストーマ(人工肛門)にしてもらった。ストーマには抵抗もあったがやってみるとトラブルも少なくトイレの心配がなくなってQOLは大きく改善した。さらにそのころレミケード(*1)がでてきたので、これを使って寛解が維持できるようになった。しかし、最近その効果も減弱してきたので、3週間ほど前からヒュミラ(*2)に切り替えているがまだ効果はよくわからない。
<追加インタビュー>
前回のインタビュー後、クローン病に関しては大きな変化はなかったが、2019年になって40度くらいの高熱が何日も続いたことがあった。原因は不明だが脳に腫瘍ができており、クローン病と同じ自己免疫疾患らしいということ、また家族性地中海熱に似ていることなどが分かった。薬としてはがんの治療薬であるエンドキサンと家族性地中海熱の薬であるコルヒチンの他ステロイドや免疫調整剤などの大量投与で症状が治まった。しかし、大量の薬による副作用もでて、体重が激しく増減したり、筋力が極端に落ちて、外出先でちょっと転んだだけで起き上がれなくなり救急搬送されたこともあった。また、白内障にもなり手術も受けた。逆に大量の自己免疫疾患の薬を飲んでいたからか、クローン病の症状は出ていない。
*1 レミケード:(一般名インフリキシマブ)生物学的製剤(抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤)
*2 ヒュミラ:(一般名アダリムマブ)生物学的製剤(ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤)
このような状況の中、病気を受け入れることができず、何とか完治させようと新興宗教に入信したり、民間療法を試したりしたが、病気には効果はなかった。そんな時両親が探してくれた東京の病院に2か月入院し、そこでエレンタール(成分栄養剤)を飲むという治療をしっかり学んだ。また同じ病棟に同世代の同病の患者がたくさん入院していて、その人たちがきちんと病気に向き合って治療していることを見て、自分もちゃんとした治療を始める気持ちになった。
大学時代は入退院を繰り返し休学もしたが、何とか卒業できた。しかし、就職できる状態ではなく、このままでは一般企業に入れないと思い、資格を取るべく猛勉強をして3回目の試験で不動産鑑定士の資格をとり、父親の縁のある不動産鑑定士事務所に就職した。その会社で17年間勤務し、現在は独立して仕事をしている。
病気の方は就職してからも何度か入院し、手術も3回行ったが、3回目の手術の前には排便回数が20回から30回になっていた。頭の中が8割がたトイレのことでいっぱいになり、仕事も手につかない状態だったので、思い切ってストーマ(人工肛門)にしてもらった。ストーマには抵抗もあったがやってみるとトラブルも少なくトイレの心配がなくなってQOLは大きく改善した。さらにそのころレミケード(*1)がでてきたので、これを使って寛解が維持できるようになった。しかし、最近その効果も減弱してきたので、3週間ほど前からヒュミラ(*2)に切り替えているがまだ効果はよくわからない。
<追加インタビュー>
前回のインタビュー後、クローン病に関しては大きな変化はなかったが、2019年になって40度くらいの高熱が何日も続いたことがあった。原因は不明だが脳に腫瘍ができており、クローン病と同じ自己免疫疾患らしいということ、また家族性地中海熱に似ていることなどが分かった。薬としてはがんの治療薬であるエンドキサンと家族性地中海熱の薬であるコルヒチンの他ステロイドや免疫調整剤などの大量投与で症状が治まった。しかし、大量の薬による副作用もでて、体重が激しく増減したり、筋力が極端に落ちて、外出先でちょっと転んだだけで起き上がれなくなり救急搬送されたこともあった。また、白内障にもなり手術も受けた。逆に大量の自己免疫疾患の薬を飲んでいたからか、クローン病の症状は出ていない。
*1 レミケード:(一般名インフリキシマブ)生物学的製剤(抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤)
*2 ヒュミラ:(一般名アダリムマブ)生物学的製剤(ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤)
インタビュー16
- 新興宗教や民間療法に頼り、治すことだけにとらわれていたときはつらかった。結局1人ではどうにもできず、病気に向き合っている人の話を聞いて、初めて受け入れることができた
- 最近はインターネットで情報がとれるので患者会の会員数は減っている。しかし交流会にはたくさん集まるので、やはりネットではわからない生の声を聞きたいという人は多いのだと思う
- サラリーマンになっても飛ばされたら終わりだとの思いがあって、また鑑定士の仕事にも興味があったし、不動産関係では最も上の資格だったので不動産鑑定士の資格を取った
- サラゾピリンを飲んでいた時に精子を測ったら少ないことがわかったので、それからペンタサにきりかえたら精子の数も戻っていて子どもを作ることができた
- 肛門の手術のあとしばらくは勃起不全があったが、数か月で次第に回復した。ストーマが性生活に影響あるかと聞かれれば、確かに最初は気になったが慣れてしまえば問題なかった
- 絶対にストーマにしなくてはならない状況ではないものの、QOLを考えるとしたほうがいい状況で、ストーマにしたら母親が悲しむかもしれないということを言い訳に先送りしていた
- 3回目の手術は小腸を少しと大腸の5分の4を切除して同時にストーマを造った。また、麻酔があまり効かなくて術後も3日くらいは痛くて眠れなかった
- ステロイドに関してはパルス療法といって一度に大量のステロイドを投入することもやったが、副作用はそれほどひどいものは出なかった
- 初期のころはまだ重症ではなかったせいか、難病と言われたら自分はそれに立ち向かうヒーローになったように感じた。数年かかって病名がついて戦う相手がようやくわかった
- 肺や血液の病気ではないので、かかりやすさは変わらないが、かかった時は防御壁(免疫力)が弱いので注意しないといけない。しかしこれも諸説あるので、正しい恐れ方をしないといけない
- クローン病を体験したことによってコロナの問題も客観的に見ることができていると思う。コロナ対策でも100%を目指すのではなく、自分で対処できる事とできないことを見極めることが大事