診断時:32歳
インタビュー時:52歳(2018年1月)
追加インタビュー時:55歳(2020年8月27日、12月6日)
関東地方在住の女性。夫と二人暮らし。米国留学から帰国後、希望の会社に入社し、プライベートも充実、まさに「人生で一番の絶頂期」にクローン病を発症した。仕事も途中で辞めることになるなど多くの辛い体験をしたが、その後結婚もし夫や多くの医師に支えられてきた。最近は、クローン病は落ち着いてきたが、他にも疾患を抱えており、何とか疾患を減らし、仕事に復帰したいと思っている。その後「反応性機能性低血糖」となりクローン病とは相反する食事制限で苦労した。2020年秋に37.3度という微妙な熱が出て近所のかかりつけ医に行ったら、念のためと言われてPCR検査を受けた。
プロフィール詳細
20代の頃に何度かお腹が痛かったことがあったので、後から考えると、それが軽い腸閉塞の始まりだったかもしれない。アメリカの大学院に留学中にまたお腹が痛くなり、何とか卒業して帰国し、日本で就職した。入社前の健康診断のついでに、違和感のあったお尻の検査をしてもらったら、難治性痔ろうだとわかったが、クローン病特有のものだったため、同時にクローン病だということも判明した。
しかし会社には病気を明かさないまま就職した。ところがその会社は、徹夜は当たり前のような大変な激務で、4年間頑張って務めたが、どうしても体が持たずに、休職をはさんでそこを退職して、残業の少ない会社に移った。そして、病状が少し落ち着いてきたころ、以前お付き合いのあった方と再会し結婚した。しばらくしてから夫の仕事でイタリアに2年間滞在した。その間入院するほどの悪化はなかったのでイタリアの病院にかかることはなかったが、3か月ごとに日本に帰国して、イタリアに戻る時はトランクいっぱいのエレンタール(成分栄養剤)を持って帰った。
治療としては、ステロイド(*1)を使っていた時期もあったが、副作用がでたので今は止めて、ペンタサ(*2)と大建中湯(漢方薬)を主に服用し、調子が悪くなると食事を控えてエレンタール等を飲んでいる。また別の意味で、栄養療法として大量の乳酸菌を摂取しているが、それがクローン病にもとても効果があるようだ。今のところ免疫調節剤や生物学的製剤(*3)は使用せずに何とか持ちこたえている。手術も検討したことはあるが、なるべく切らないという、主治医の方針でまだ腸は切っていない。
メインの疾患はクローン病だが、他にもいくつか病気を抱えており、現在6人の医師に診てもらっている。そのうち掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)という皮膚の病気はクローンと同じ自己免疫疾患なので、合併症ではないと言われているが、関係はあるかもしれない。クローンと直接関係ないかもしれないが、職場のトラブルや介護をきっかけに、過労からうつ病も発症している。他にも疾患を抱えているが、それぞれの疾患の治療や薬が他の疾患に影響することもあるだろうということで、今診ていただいている先生たちは他の疾患のことも考えて薬の調整をしてくれているのでとてもありがたいと思っている。また、最終的に見てくれている薬剤師がおり、問題があればすぐに主治医に連絡してくれるようになっている。私は、「セルフチーム医療」と称して、それらの情報を持って6人の医師の間を飛び回っている。
今年の目標は病院の診察の数をひとつでも減らすこと。自分は仕事が好きなので、早く病気を減らして仕事に復帰したいと思っている。
<追加インタビュー>
前回のインタビュー後、血糖値が安定せず、低血糖(*4)で倒れたり、脳の血流が不足して救急搬送されたこともある。一方クローン病では腸閉塞を発症して1週間ほど入院した。低血糖は急激な高血糖の後インシュリンが大量に出て急激な低血糖になるもので対策としては低糖質、高タンパクで繊維質の食事を摂ることが必要。一方でクローン病では繊維質をあまり摂ってはならないし、(治療で使う)エレンタールには大量の糖分がはいっている。こうした相反する食事の規制があるため、両方を綱渡り的に調整していた。その他には掌蹠膿疱症も時々出てきて、相変わらず多くの医師に診てもらっている。ただここ最近は、掌蹠膿疱症と低血糖は自分でかなりコントロールができるようになったため安定している。なおクローン病に関しては、狭窄が激しくなってきたので手術を検討していたが、コロナ騒ぎで延期になっている。
<2度目の追加インタビュー>
37.3度という微妙な熱だったが、倦怠感もあったので近くのかかりつけ医に行った。本来はこの程度ではしないのだが、あなたの場合はクローンをはじめ色々な疾患を抱えているので念のため、と言ってPCR検査をしてくれた。それは鼻から綿棒を入れて検体を取るのではなく唾液を取るものだったが、結果は陰性だった。
*1 ステロイド:副腎皮質ホルモンの1つで体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われている。副作用も多いため、IBDでは一般的には寛解導入に使われるが寛解維持には使わない。
*2 ペンタサ:(一般名メサラジン)クローン病の基本薬
*3 生物学的製剤:レミケード、ヒュミラなどの抗TNFα製剤
*4 低血糖:「反応性機能性低血糖」医師からは長期間のクローン病で腸管が荒れていることが原因と言われている
しかし会社には病気を明かさないまま就職した。ところがその会社は、徹夜は当たり前のような大変な激務で、4年間頑張って務めたが、どうしても体が持たずに、休職をはさんでそこを退職して、残業の少ない会社に移った。そして、病状が少し落ち着いてきたころ、以前お付き合いのあった方と再会し結婚した。しばらくしてから夫の仕事でイタリアに2年間滞在した。その間入院するほどの悪化はなかったのでイタリアの病院にかかることはなかったが、3か月ごとに日本に帰国して、イタリアに戻る時はトランクいっぱいのエレンタール(成分栄養剤)を持って帰った。
治療としては、ステロイド(*1)を使っていた時期もあったが、副作用がでたので今は止めて、ペンタサ(*2)と大建中湯(漢方薬)を主に服用し、調子が悪くなると食事を控えてエレンタール等を飲んでいる。また別の意味で、栄養療法として大量の乳酸菌を摂取しているが、それがクローン病にもとても効果があるようだ。今のところ免疫調節剤や生物学的製剤(*3)は使用せずに何とか持ちこたえている。手術も検討したことはあるが、なるべく切らないという、主治医の方針でまだ腸は切っていない。
メインの疾患はクローン病だが、他にもいくつか病気を抱えており、現在6人の医師に診てもらっている。そのうち掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)という皮膚の病気はクローンと同じ自己免疫疾患なので、合併症ではないと言われているが、関係はあるかもしれない。クローンと直接関係ないかもしれないが、職場のトラブルや介護をきっかけに、過労からうつ病も発症している。他にも疾患を抱えているが、それぞれの疾患の治療や薬が他の疾患に影響することもあるだろうということで、今診ていただいている先生たちは他の疾患のことも考えて薬の調整をしてくれているのでとてもありがたいと思っている。また、最終的に見てくれている薬剤師がおり、問題があればすぐに主治医に連絡してくれるようになっている。私は、「セルフチーム医療」と称して、それらの情報を持って6人の医師の間を飛び回っている。
今年の目標は病院の診察の数をひとつでも減らすこと。自分は仕事が好きなので、早く病気を減らして仕事に復帰したいと思っている。
<追加インタビュー>
前回のインタビュー後、血糖値が安定せず、低血糖(*4)で倒れたり、脳の血流が不足して救急搬送されたこともある。一方クローン病では腸閉塞を発症して1週間ほど入院した。低血糖は急激な高血糖の後インシュリンが大量に出て急激な低血糖になるもので対策としては低糖質、高タンパクで繊維質の食事を摂ることが必要。一方でクローン病では繊維質をあまり摂ってはならないし、(治療で使う)エレンタールには大量の糖分がはいっている。こうした相反する食事の規制があるため、両方を綱渡り的に調整していた。その他には掌蹠膿疱症も時々出てきて、相変わらず多くの医師に診てもらっている。ただここ最近は、掌蹠膿疱症と低血糖は自分でかなりコントロールができるようになったため安定している。なおクローン病に関しては、狭窄が激しくなってきたので手術を検討していたが、コロナ騒ぎで延期になっている。
<2度目の追加インタビュー>
37.3度という微妙な熱だったが、倦怠感もあったので近くのかかりつけ医に行った。本来はこの程度ではしないのだが、あなたの場合はクローンをはじめ色々な疾患を抱えているので念のため、と言ってPCR検査をしてくれた。それは鼻から綿棒を入れて検体を取るのではなく唾液を取るものだったが、結果は陰性だった。
*1 ステロイド:副腎皮質ホルモンの1つで体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われている。副作用も多いため、IBDでは一般的には寛解導入に使われるが寛解維持には使わない。
*2 ペンタサ:(一般名メサラジン)クローン病の基本薬
*3 生物学的製剤:レミケード、ヒュミラなどの抗TNFα製剤
*4 低血糖:「反応性機能性低血糖」医師からは長期間のクローン病で腸管が荒れていることが原因と言われている
インタビュー18
- 最後の職場を辞めたのはうつ病になってしまったことが原因。これはクローン病とは直接関係ないがクローンのために栄養バランスが悪くなったことが原因かもしれない
- 掌蹠膿疱症はクローン病の合併症とは書かれていないが、どちらも免疫に関係する疾患なので、IBDの患者にはよくいるようだ
- 頑張って何とかなることもあるが、だめなときもある。体の声をちゃんと聴いてあげることが必要。病気と友達にはなりたくないが、口うるさいおばさんくらいには思っておけばいい
- 環境の悪い海外へ行こうとしたときや激務の仕事に就こうとしたときに、いつも背中を押してくれた先生にとても助けられた
- 副腎を診てもらっている先生とクローン病の先生がいて複数の医療機関にかかっている。 自分がハブになって先生たちを繋いでいるが、最後の砦は調剤薬局の薬剤師さんだ
- 通院していた病院に、同病で人生に絶望してずーっと泣いているような若い女性が入院していた。彼女に話かけて彼女が笑ってくれた時は自分もとてもうれしかった
- 病気になってから知り合った人には「クローン病の人」と見られることが多いが、昔からの友人は「クローン病になった」と思ってくれる。その見方の違いは大きい
- 手術で結婚式を延期したことがきっかけで、相手の家族が病気のことを調べてノイローゼのようになり、婚約者も理解してくれず別れることになった
- 就職の最終面接では主治医にどういう仕事なら働けるかということを書いてもらって出すようにしている。そうすると自分で「働けます」というよりは信頼性があるので企業も安心できる
- 転職先の会社はそれほど激務ではないので病気のことを言わずに就職した。通院も土曜日に行けたし、個室化したオフィスだったのでトイレに関しても問題なかったので、特に支障はなかった
- 海外で暮らす場合食事には特に気を付けないといけないが、最近はどこでも日本食が手に入るので基本は和食がいい。しかし、和食でも繊維質の多いものがたくさんあるので注意が必要
- 大学院に行き、入りたい会社に入り、結婚を考えていた人生の絶頂期に難病と診断されて、人生終わったと思った。しかし、それからちゃんと20年生きている
- たまたま主治医とは違う先生に診てもらったとき、大建中湯を勧められて使ったらとても良く効いたので今でも使っている
- 微熱と倦怠感でかかりつけ医を受診したらPCR検査を勧められた。複数病気を抱えている事情など考慮の上、詳しく説明してくれ、検査を強く勧められたので納得して受けられた
- コロナ禍になって普通の人は外出が制限されたりして困っているが、私は元々病気で外出できないことなど普通だったので、時代が私に追い付いたと思っている