今回のインタビューでは多くの方が同病の人とのつながりが必要だというお話をされました。また、そのつながりで多くのことを学んだり共感を得ることができてよかった、救われたといわれています。なぜ同じ病気の人とのつながりが大事なのかが語りの中から見えてきます。以前は主として患者会が同病者同士をつなぐ役割を担っていましたが、最近はSNSという方法も出てきました。そのほかの新しい取り組みもあります。ここではそうした患者同士のつながりについての語りを紹介します。
同じ病気の人とつながる
同病の患者同士がお互いの症状や悩みを話し合うことにはどういう効果があるのでしょうか。患者同士であれば人目を気にせずに一緒にエレンタールを飲むことができたり、「自分も子どももおむつをして子育てしてた」と言った赤裸々な体験を分かち合うことができます。直接顔を合わせて、その人の実体験に基づく生の言葉を聞くことで、それまで悩んできたことが、自分ひとりだけの悩みではなかったと知ることができ、病気を受け入れるきっかけにつながるようです。
中には、患者同士の集まりに関わることで病気のことばかり考えるようになってしまうのはよくないとか、傷の舐め合いのようになってしまうのではないか、というようなマイナスイメージを持っている人もいます。しかし、実際に患者同士の交流を体験すると、そのようなイメージは払しょくされるようです。
インターネット時代の患者会
今回インタビューに協力して下さった方の3分の2近くが、診断からの期間が20年以上の方ですが、20年前、1998年当時は、まだ日本におけるインターネットの普及率(総務省発表)は人口比13.4%にすぎず、現在のようにインターネットを介して同じ病気の患者さんとつながることはできませんでしたから、他の患者さんと交流を持ちたいと思ったら、患者会に入るのが一般的でした。しかし、インターネットの普及とともに、患者会に入らなくても病気についての情報を得たり、患者さんと交流できるようになりました。長年患者会活動に関わってきた人たちは、インターネットの普及による変化を強く感じているようです。
このように患者会の存続を危ぶむ声がある一方で、やはり患者会にはネット上のかかわりだけでは得られないものがあるのではないかと考える人たちもいます。
さらに組織として、行政などに制度改善の働きかけをすることも患者会の重要な役割です。
SNSで同病者と繋がっている人たち
この10年の間に診断を受けた、比較的若い世代の人たちにとって、インターネットは情報を得たり、他の患者とつながるための手段として定着しています。この世代の人たちは、ブログやツイッター、フェイスブックなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)を利用して、同じ病気の患者とつながっていく傾向があり、古くからある患者会においては、高齢化した役員との間でジェネレーションギャップを感じる人もいます。
この女性は、SNSは患者会のように何らかの役を振られることがなく、いつでも気軽にやめられるというメリットがある反面、そこで得られる情報は信頼性に欠けると考えていました。
その他のつながりや新しい試み
患者同士のつながりの中には、診断名でつながるのではなく、ストーマ(人工肛門)というキーワードでつながっている組織もあります。また、同じ疾患の中で芸術家(クリエイター)が集まって活動しているプログラムもあります。こうした取り組みは、患者のつながりの新たな広がりを感じさせます。
2019年6月公開
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