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診断時:19歳
インタビュー時:54歳(2018年3月)
九州地方在住の男性。一人暮らし。高校2年の時に痔ろうの手術をし、一旦良くなって復帰したが、19歳の時に大量下血と体重減少で病院に行ったらクローン病と診断された。その後大腸も小腸も半分以上切除したが、病気だからと言ってベッドに逃げ込むのではなく、むしろ普通の人の何倍も努力をしなければいけないという思いで今まで仕事をしてきた。今は老人ホームの園長として働きながら、ライフワークである患者会の活動を精力的に行っている。
語りの内容
えー、多くの患者さんから、(クローン病は)法定雇用率(注)に入らないんですか、なんていう質問も受けます。法定雇用率に入るような人っていうのは重度身体障害者の1級、2級とかね、あの精神疾患であれば1級の方ですよ。そこいくとIBDの患者さんて、歩行はできるし運転はできるし、自分で調理して何か食うこともできるし、家の中で暮らしたら不都合なく全部やれるわけですよ。じゃなんで職場に行ったら何にもできないのかって、僕はね家事ができれば仕事もできると思っています。洗車ができるのに何で会社に行ってね床掃除ができないのかって。まあ、その本人さんの得意なことは得意でいいんだけれども、何かこう不合理っていいますかね、そういうのはやっぱ甘えだと思うんで。もう甘えることからやっぱり僕は卒業しないといけない。病気だから許されるんじゃなくて病気だからここまで努力してるからみんながね助けてあげようと思ってくれるんですよね。それなのに自分は病気だからっていうことを理由にねもう、ベッドに逃げ込むようなことだけはねしてほしくないな。
僕はその、何だろ、自分の限界、ここまでやったら明日寝込んでしまう。ここまでだったら問題なく明日やれる。今日の残業はここまでだったら手伝えるけど、来週は病院に行くし、こう週に3日くらいは残業できないだとか、こう自分の限界点をきちっとですね把握するっていうことは大事と思うんですね。その中で基礎体力があれば先週は1日しかできなかったのが、今日は、今週は二日できるようになったとか、っていうのがねあのー、自分のこうレベルがアップしてることがねわかってくるので、やっぱそういうところがね、治療を続けるっていう意味ではですねポイントして、就労者としてのね責任ですよ。与えられた職務を全うするっていう。そこの責任感を養うため、えー、継続するため、自分の将来を実現させるためにもね、そこは自己管理をきちっとやるっていうのはね、絶対こう手が抜けないとこだと思いますね。
(注)企業等は従業員数の一定比率の障害者を雇用する義務があること、が障害者雇用促進法で定められている。ただし難病患者には適用されない
インタビュー20
- 「病気だから助けて」ではなくて「病気でも努力してるから助けてくれる」わけであり、甘えることからは卒業しないといけない。また、仕事をする上で自分の限界を把握することも大事
- 病気についての情報がほとんどない中、病気が理由で就労していない人でも、自分の経験をもとに、困っている仲間にアドバイスすることで社会に貢献できると考え、2000年に患者会を立ち上げた
- インターネットに情報が溢れ新薬も開発される中で、患者会の必要性が薄れているようにも見えるが、行政や学校や職業団体にお願いをするためには必要な組織だと思う
- 患者会を立ち上げた時に新聞に取り上げられたが、子どもが学校でいじめられて、家内からも「あなたが患者会なんかするから、家族は惨めな思いをする」といわれた
- 高齢化社会の中でこれからますます医療費が増えることは確実で、その中で難病の医療費助成制度も対象疾患を増やしていくためには軽症者がはずれるのはやむを得ないこと
- 努力をすることで会社に対して貯金ができて、体調を崩した時にその貯金が使える。しかし、長期に休むと平に戻ってしまうのはし方ないと思っていたが、最近はいい薬ができて状況は変わった
- 就職する際に、自信をもって仕事ができるのであれば病気のことは言わなくてもいいが、不安がある人は話しておいた方がいい。ただし、10年間も寛解を維持している人が病気の話をする必要はない
- 腸の長さが普通の人の十分の一しかないところで、必要な栄養分を吸収するっていうことは腸にとってもチャレンジだと思う
- 始めのころは、将来像が描けずにポンコツになってしまったようで、死んでしまおうかと思った。しかし「大変な病気だが一緒に治療していこう」という医師の言葉で治療に前向きになれた