インタビュー時:76歳(2020年6月)
関係:妻(夫を介護)
診断時:夫67歳、妻65歳
共働きで夫婦2人暮らし。夫は50歳で1型糖尿病と診断され、56歳で退職した。67歳、糖尿病教育入院時にはアルツハイマー型認知症、翌年、画像診断で前頭側頭型認知症と診断された。血糖値不安定のまま、70歳前後で弄便(ろうべん)や不潔行為、昼夜逆転が始まった。親身になってくれたデイサービス施設が小規模多機能型居宅介護施設になったことを機に、看取りまでをお願いした。腎機能低下により76歳で逝去。
語りの内容
かたくなな性格とかに気付かれたのは、その病状の変化が糖尿病の後からですか。
糖尿病の1型が出た時が50歳だから。それで、(看取るまで)26年、認知症の発病っていう形が20年ぐらいは潜伏期があるっていうことだから。糖尿病にかかってから徐々に徐々にってこう、出てきてたような感じがするんですけども。それは病気のせいだからと思っていました。大学病院に糖尿病の調整で入院して退院する時に、認知症で治療していきましょうって言われた時に、先生に慰められましたもんね。認知症が発症しているようですからって、性格じゃなくてよかったですねって(笑)。
神経内科のほうの先生に、うちは、MRI、頭のそれで見るとやっぱり前頭側頭の空間が、普通よりもやっぱり広く空間ができてるとか。そういうことがやっぱりはっきりしてるから、これは単なる性格が悪いっていう話じゃなくて、確かに前頭側頭型の症状ですって。それはそこからはいえますって言うんですよね。それで、考えも、硬直。それこそ、自分の前しか見えないみたいなね。それこそよそさまが見えないみたいな感じ。同じことは、糖尿病でかかり始めてからすぐ言われましたけどね。
最期に、「うちの人は、認知症じゃなかったんじゃないですか。性格がよくよく悪かったんじゃないですか」って(神経内科の先生に)聞いたら、「いやいや、検査でちゃんと出てますから、認知症ですよ。でもね、性格にたががかぶってて、それが外れてもろに出て暴走するっていうこともありますけどもね」っていう話で、双方納得しました(笑)。
インタビュー家族48
- 糖尿病の教育入院期間中に大声を出して迷惑をかけた。退院後、認知症と糖尿病を地域の病院で診てもらうことになり、2つ目の病院で前頭側頭型認知症だと診断された(テキストのみ)
- 1ヶ月の夫の状態を記録して渡すことで、診察時に状態を詳しく伝えられるばかりではなく、自分の気持ちを落ち着かせるのにも役立った(テキストのみ)
- 子供がおらず先々のことを考えて、成年後見人制度を利用した。弁護士が、なんの報告もなく報酬を口座から引き落としていたことがわかり、申し入れをした(テキストのみ)
- 弄便(ろうべん)という不潔行為が始まり、手は真っ黒。夫は、引き出しやクローク、整理ダンスにも便を丹念に押し込んでいるが、悪びれる様子はない(テキストのみ)
- 要支援の人から要介護5までのご家族が参加して皆が体験談を語り合う、それが先生役となり、安心と自信を得られた(テキストのみ)
- 小規模だとみんなが1人の情報を共有しあってくれて、じゃまなくらい人がウロウロいる。一人ぼっちになることがないのがいい(テキストのみ)
- 夫の場合、認知症により、たがが外れて本来のかたくなな性格が暴走する場合もあるという説明に納得がいった(テキストのみ)
- 朝の洗面で手出しをすると、「うるさい」という感じで、夫の手が至近距離から飛んでくる。本人が無意識だとわかると、相手にできないなと感じた(テキストのみ)
- 夫は、食べたことも忘れてしまい、色々と食料をあさるようになった。冷蔵庫の生肉や、柔軟剤やタワシも口にしてたようだった(テキストのみ)
- 夫は新聞を取りに行くのは自分の仕事と思って、マンション1階の新聞受けを何度も見に行く。汚れた衣服やステテコ姿のままで、目が離せなかった(テキストのみ)
- 夫は自分の失態を指摘されたときなど、部屋にこもって同じ言葉を何度も繰り返し連呼している。忘れちゃいけないことを繰り返しているのだろうか(テキストのみ)