投稿者「dipex-j」のアーカイブ

認知症の語り

認知症になったら初期の段階で、悩む前に仲間とつながってほしい(テキストのみ)

認知症になったからって、例えばMCIとか軽度認知障害です、とか、ま、初期の段階は必ずありますよね。中期も後期もあるんですから。初期の段階で……悩む前に、そういう……グループとつながってもらえたらいいな、と。いいな、と思うし……落ち込むこともしないでほしいし、安心もしてほしくないんです。安心すると、「いいや」になっちゃうんですよ。うん。「いいや」になったときは、絶対進みます。うん。でも、怖がることもないと思うんです。だから、そこですよね。怖がらず、安心しすぎないで、うん。あのー、そういう人たちとつながっていけたら。まずは仲間づくりを考えるといいな、と思います。必ずそういう場所はあります。

認知症の語り

パニック症状のようなものは改善されたが、いまは急に気分が悪くなったり、スポンジを踏んづけて歩いているようなフワフワ感が気持ち悪い(テキストのみ)

―― 今は一時のひどいときから比べると、ずいぶん落ち着かれた感じですか?

パニック障害みたいのはずいぶん改善されましたね。あのー……人とぶつかんのも、前みたいにぶつかんなくなってきたりとか、スーパーにもちゃんと行けるし、買い物もできるようになったし。
幻視、幻聴は……まあ、そ、横ばいかなー……うーん、っていう感じですね。
あと、急に気分悪くなったりとかっていうのが最近出てきたりとか、うん。……トイレから出てきたら汗だくになって動けなくなったりとか、いうようなことも……最近になって出てくるようになって。まあ、季節の変わり目もあるのかもしれないけれども、あとは地面から、こう、ビリビリ感っていうか、電気が走ってるみたいな感じとかっていうのも、うーん……一時期よりは少し良くなったかなー。今はスポンジの方が気になってて。うーん、スポンジ踏んづけてるような感じで、フワフワ感で。あの、意外と、意外と気持ち悪いんですよね。

―― スポンジって、あの、乾いたスポンジですか?

そうです。を、踏んづけてる感じ。うん。……でも、何にもないんですよ。ただ、それを、こう、踏んづけてる感じ。私は指の方に多く感じるんですけど。スポンジを上から踏んづけて、歩ってるような感じっていうのが、ある。うん。他の人からも聞くから、やっぱり、「同じだねー」なんていう話は、してます。はい。

認知症の語り

幻視や幻聴は見たり聞いたりしたが、父がパーキンソンで、幻視のことは知っていたので、怖いというイメージはなかった。疑って見ているので、案外冷静に捉えている(テキストのみ)

―― 幻視の見え方も人それぞれというふうに伺うんですけれども、どんな感じでお見えになったんでしょうか?

私は最初はね、夜だけだったんですよ。だから、あの、夜だから、あの……黒に近い?影みたいな感じに見えて、でも「誰だ」っていうのが分かったりするような。うん、だから、こたつの脇に亡くなった本当のおばあちゃんと両親が3人で座ってる、とかね。うん。あとは全然知らない人が6人も7人もいるとか、そういう感じ。あと、全然知らない男の人が脇に、こう、ここに顔がのぞき込んでるみたいな、とか。まあ、さまざまでしたね。あとは外で声がしたりとか、うん。で、何騒いでんだろう、と思って見ると誰もいない、とか。うん。そんな感じのことはいろいろありましたね。

―― 幻視ということを知らないと「何だろう?」みたいな、そういう思いだと思うんですが。

でもね、あの、父がパーキンソンだったんで、幻視のことはよく言ってたんですよ。だから「一緒だな」って、私は思えた。だからそれが、あのー……怖いとかっていうイメージもなかったですね。それが本当に「ああ、どうしよう!」っていうような感覚ではなかったです。ああ、見えてる、とか、いるー、って感じ、程度で。うん、そんなに怖いとか……「何なの?これ」とかっていうようなあれではなかったですね。
最近は昼間でもあったりとかするんで。この前は道路脇におじいちゃんが横になっ、横っていうか、こんなんなってて。「何で誰も助けないの?」って思って。でも、これだけ交通量があって、誰も止まらないってことはないよね?……待ってー、これは見えてない、みんなは知らないのか?とか思って。特別「あ!助けなきゃ」とも思えないし、っていうか、あの……自分でどっかで疑ってるから、案外……そこらへんは冷静に見てます、はい。

認知症の語り

時間の深さがわからない。夢で見たことも、現実に起きているのと同じように感じる。数も「1」と「10」の違いが分からなくなった(テキストのみ)

―― さっき時間の感覚がないっておっしゃったんですけど、それも1と10が分からないのと似たような感じですか?

うん、そうですね。はい。全く、全く分かんないです。今も。深さが分かんない。うん。だから、「何日前だよ」っていう言葉にしてもらうと、うーん、っていう感じで、うん。あとはもう必ず、手帳にはつけてるんで「ああ、この日だったんだなー」とか、確認するように。もう、手帳ははず、離せないですね。予定表とか、その日の起きたこととか、書いとかないと。うん、全く分かんなくなってしまうんで。

―― あの、今日の日が何日っていうのは、どうやって判断されるんですか?

あ、それは分かるんですよ。でも、その、前に起きたことの……感覚がよく分かんない。っていうか、その、深さが分かんない。だから、夢で見たことも「実際に起きてんのかな?あれ?」とかっていうような、この、不安感っていうのが。
夢も、あの、毎晩、現実の夢なんですよ。ていうか、あの、内容は全く普通の生活と違うんだけど、カラーであって、空気感もにおいも……もう、疲れ、感じから、もう全部が、ある夢なんですよ。だから、普通の生活の中で起きたことか夢かっていうことも、疑うときもあります、自分で。うん。……、なかなか理解してもらえないでしょうけど、毎晩その状態なんで、ほとんど寝てる気はしないですね。うん。 だから、昼寝はね、夢見ないからね、5分、10分はすごく幸せなんですよ。だから、朝ごはん食べた後も……15分でもいいから寝ると、すごいその、充実した睡眠なんですよ、それが。うん。

―― 1と10が分からないっていうのが、具体的にどういうことなのかっていうのが分からないのですが、どういう感覚ですか?

あの……1と10って、1個か10かが、10個の差が分からなかったんですよ。「10」って書いてあるんだけど、頭ん中、「1」にしか分かんないんですよ。そういうことが起き、起き始めて。……うん、ちょっと数を扱う仕事だったんで、ちょっとね、理解しづらいでしょうけど。
「何で10個なのに1つしかないの?」って言われたときに、答えようがなかったんですよ。9個忘れて、「ああ、間違えて、9個足りないんですね」、っていう言葉が、自分には見つからなかった。……そういう、何ていうのかな、うん、何とも言えない感じですね。はい。

認知症の語り

診断をした医師は、病状より生活面での不安に対応することを優先して、次の医師に引き継いでくれた。とてもありがたかった(テキストのみ)

―― 診断をしてくださった先生からは、あのー、どんなふうに進んでいくとか、どんなことに気をつけなさいとか、そういうお話ってあったのですか?

あまりそういう……悩ますようなことを言う先生ではなくて。……今、大変なことを……どっから解決してくか、っていうような見方の先生でしたね。例えば経済面とか、あの、医療費の面とか、あるじゃないですか。その面をどういうふうに……その心配事から、まずはその、やれる心配、いや、心配してることの、その取り除きやすいものから取り除いていこう、っていうような考えの先生だったように、今、思いますね。うん。
だから、本当に、あの、つっこんでくれて。うん。先生らしからぬー、うん、心配の仕方。だからー、あの、病状の心配よりも生活面でどうしていったらいいかっていうか。……「そっちを考える前に、これを考えなさい」みたいなことにもってかれたような気がしますね。うん。だから、自立支援とかすぐに受けさせてくれるような、ことの話にもっていってくれたんで。うん。だから、あのー……症状は、まあ、パーキンソンが出るか、アルツハイマーが出るか、それよりもー……まあ、あの……診断してくれた先生がちょうど3月で……ちょっと大学の方に戻られるということだったんで、次の先生に替わるんで、とにかくやることを先にやってくれて、次の先生に、あの、つないでくれたっていう感じだったんで。うん……うん、そんな感じです。

―― あ、そうなんですね。やっぱり「ありがたい」っていう感じですか?

ありがたかったですね。だって、全然知らない世界ですから。うん。本当に、あの、障害者手帳にしても、そういう、医療費が3割から1割になるとか、大きいじゃないですか。だから、そういう知識が全くない中で、あのー……「すぐに手続き取るように」っていうふうに勧めてくれて。あの、ワーカーさんっていうか、そういう人もすぐつけてくれて。うん、相談して、「すぐやってくれ」っていうような感じでやってくれたんで。あのー、そういう面では……恵まれてたと思います、私は。うん。

認知症の語り

診断後に長年かかっていた地元の医師の「本当に認知症なの?」という一言で主治医を変えることにした。主治医は患者とともに歩んでいく姿勢が大切だと思う

―― あの、ご自身の、その主治医の先生っていうのはー、今の先生は、ずっと昔から?

いや。

―― 同じ先生でいらっしゃった?

あのー、いや最近変わっただけです。はい。

―― 何か理由とかあったんですか?

あの、前の先生、地元の先生は、あの、認知症では、あの、(著名な先生から)認知症の診断を受けて提出してもあるのに、「本当に認知症なの」と言われたから、あのー、変えました。

―― ずいぶん長いことその先生が診てくださってたんですよね。

はい。

―― で、今の主治医の先生は、あの、どうやって探されたんですか?

あのー、認知症の、勉強会で探しました。

―― やはり、あの、認知症の人にとっての主治医選びって、すごく重要だと思われますか?

はい。だから、認知症で、希望が持てるように。認知症であっても、あのー、前向きに生きるように、そういうような、あの、頑張りましょうねという意味ではなくて、一緒に考えていきましょうねというふうに、共に歩んでいくという姿勢が大事じゃないかと思います。

―― そういう先生を他の人が選ばれるときって、何か、こうヒントになるようなことありますかね。

当事者に希望を持てる、よく話をきいてくださる先生が一番、あの、選ぶポイントですね。だから、あのー、えーと、数値ばっかり見たり、あの、目線を合わせないように、家族の方ばっか、視線を合わせて、本人に話しかけられないというのは、全く論外の話です。本人に何でも聞く先生じゃないと駄目なんですね。家族とばっかりお話をして、本人は蚊帳の外に置く医師がいますので、そういう医師はやめた方がいいと思います。

認知症の語り

最初うつ病を疑い、メンタルクリニックに2年半ほど通ったがよくならず、幻視が見え始め、夫がレビー小体型を疑い専門医を探してくれた(テキストのみ)

最初、「うつ」かなと思ったんですよ。あの、パニック障害じゃないけど、スーパー行って、気分悪くなったりとか、汗が出たりとか、人とすれ違うのができなくなったりとか、歩くのに曲がっていってしまったりとか。とにかく、あのー、起きてられないとかで、メンタルクリニックに2年半ぐらい通ってたんですね。で、ちっともよくならず。で、そのうちに幻視が見えたんで、「レビー小体型じゃないか」と主人が言って。で、「専門医に診てもらわないとダメだ」と。で、自分のことなんだからって言って、「自分で電話しろ」と。「インターネットで調べてあげるから、あとは自分でコンタクトを取ってという感じで、うん。もう、悲惨な状態のとき、もう、1人で病院行きましたね。……はい。

―― あの、ご主人がレビー小体型っていうふうに、その、言われたっていうのは、ご主人もずいぶんそういう、こう、方面に詳しくてらっしゃるんですか?

いえ、全くそういう仕事ではありません。……うん。ただ、ちょうど1週間ぐらい前、その、言い出す前に新聞にちょっとそのことが、記事が載ったりとか。私の父親がパーキンソンだったんですよ。でー、その、パーキンソン……のことを調べてたらレビー小体型が出てきてて、それは前から私が引き継ぐんじゃないか、と。遺伝するんじゃないか。遺伝っていうかね*、うん、父親と同じ症状が出てくんじゃないか、というような恐れはいつもあったみたい……なんですね。で、ちょっと足の運びなんかもおかしかったりしてたんで、それをちょっと前から疑ってて。で、それで意外と早く「レビー小体型じゃないか」っていうのが出たんですね、うん。

―― それで、ご主人がその、探してくださった専門医に受診されたわけですね。

はい、そうです。あの、有名な先生です。はい。……で……画像診断とか、スペクトとか……いろんな検査して、すぐに「レビー小体型認知症です」と……いうことを、診断を受けて。

*パーキンソン病の5-10%が家族性で遺伝の関与があると言われている。一方レビー小体型認知症については、現在の研究からは明らかにされていない。

認知症の語り

今まで考えなくても手が勝手に動いてくれたのに、今はなにかをやっていて一瞬立ち止まってしまうことがある。すごく寂しい(音声のみ)

――今まで、こう、普通にできたりということが、だんだん、ちょっとこう段取りが悪くなったりとか、あのー、忘れることが多くなったりっていうふうなことをご自分で気付かれると何かどんなふうな気持ちになるんでしょう。

いやあ、すごい寂しいですね、どうして、今までできていたのにね、そんなに考えなくても、別に考えてなくても手が勝手に動いてくれたりとかね、ありますでしょう。あーと、やっていて一瞬、あって、こう、何ていうの、立ちどまっちゃうこともね、ありますからね。だから、あ、やっぱり、これが、ぼけが進んできたあれなんだろうなとか思うんですけどね。

認知症の語り

公表しよう、堂々と生きていくぞと思った時に、何かぱーっと開けたような感じがした

隠して生きるというのは怯えているんですね、いつもね、知られたらどうしようという…なんかこうビクビクビクビクして、なんかこう硬くなって生きているような、隠すということは…思うんですね。でも、その、いや、…公表しよう、名前も顔も公表しよう…て、レビーは、皆さん思っているような病気とは違うんだということを伝えていこうって……思ったときに、……すかっとしたっていうか、あのー、ま、……あのー、…いいんだって、あのー、わたしはもうこれから堂々と生きていくんだ。……わたしは、もう、怯えて生きていくのは嫌だ。堂々と生きていくぞって思ったときに、あのー、……何ていうかな、……何かぱあーっと…開けたような、…感じがしました。ま、もちろん、怖いのはあるんですよ、あのー、あのー、扉をばーんと開けたときに…向こうに何がいるのかは分からない。こんなネット社会で、もちろん、その誹謗とか中傷とか、…うざいとかきもいとか…いうのは、が、それ、出てこないっていうことはないと思うんです。必ずあると思うんですね。世の中いろんな人がいますから。でも、例え、それがあったとしても、あのー、いいや、…そんなのは気にしない。…あのー、もう、わたしは堂々と生きたい、あのー、そんな、ビクビク怯えながら、…生きるのは嫌だと思いまして。

認知症の語り

虫が見えて怖いのではない。幻視が見える異常な人間になってしまったという怖さ、そして明日は人が見えるかもしれないという怖さだ

幻視も初めは怖かったです、ほんとに。あのー、幻視が怖いっていうのは、その、…そんな、幻視が見える自分が怖い、そん……あのー、そんなに自分が異常な人間になってしまったのかっていう……ように思いましたし。あと、そのー、例えば、ま、虫…毎日見えていたんですけども、で、ある、ある人が、「別に虫が見えていても怖くないじゃない」って言ったんですね。で、それ、虫は怖くないんですけれども、…今、虫が見えるということは、じゃ、あしたは人が見えるかもしれない。……それが毎日になるかもしれない。どんどんひどくなるかもしれない。そう思うと、こう、虫1匹でも、ほんとに、あのー、怖くて……怯えているときがあって、もう、ほんとに怖くてたまらないっていうときがありましたね。あのー、やっぱり、その、いつ出るか分からないっていうのは、…怖い…ですね。何かこの扉を開けたら立っているんじゃないかとか思うと、もうどきどきしちゃいますよね。…でも、…見えなくなったので、あのー、今は平気ですけれども、……はい。