投稿者「dipex-j」のアーカイブ

認知症の語り

前頭側頭型認知症の妻は口は達者だが、家にいるときにもいきなり「出た」と言って失禁するので、周囲はいらっとする(テキストのみ )

○○(次女)が一番面倒見てくれてんのやろ。

(認知症本人:妻)そうか。

炊事、洗濯、掃除、全部してくれて。パンツ汚したら洗ろうてくれて。

(本人)……パンツ? お母さん洗うて、洗濯機に入れとるのやで。

それは違う(笑)…めちゃめちゃにしてあるやんか。

(本人)…ああ、○(施設名)の分とかか。

うん。外寒いときに、外、ほら、神社とか歩いとったら、もう我慢できんときあるやろ。

(本人)うん。

でも、「まあ、しゃあないな」って言うけど、家におっても「出た」とか言うから、かあってなってしまう(笑)。なあ。「ぼけが!」ってなってしまうのやな、やっぱりな…うん。

(長女)そやね。今、口が達者やから周りもこう、ね、ちょっといらっとかするけど、たぶん○さんとこみたいに、しゃべらなくなって大人しくなったら、こっちも腹立たなくはなるかもしれないけど、それはそれでさみしいしね。だからこうして、まだ言いたいこと言えてるうちが華やと思うんですけど。

認知症の語り

父は昼夜逆転していて一晩に20回くらいトイレに起きた。そのため25分に1回のペースで起きて、ポータブルトイレで用を足すのに倒れないように支える必要があった(音声のみ)

えー、そうですね、あとトイレの回数が多いっていうんで。あとは昼夜逆転。夜ほとんど寝なくて…そうですね、それが一番困りましたね。回数が、えーと、多いときだと20回ぐらい。ねえ、トイレに起きちゃうんですね。

―― 夜だけで。

そうです。夜だけで20回。だから20回っていうと、だいたい8時間だとすると、こう、20分から20数分、25〜26分ですかね。30分以内に、えー、その回数で定期的に起きちゃうんで。ええ。だから、一緒に、隣に寝てるんですけど、眠れないっていう。

―― そうですね。

ええ。それがまあ1日ならいいんですけど。というか2、3日続くと、もうあの、本人が病気になっちゃうような感じで。それから、自分で起き上がろうとするんですけど、あの、なかなかトイレまでは歩いていけないですから、近くにポータブルトイレを置いといて、そこでやるんですけど、あのー、設備っていうか、何もないので、つかまる所も何もないから、やっぱり手を添えて、あの、手伝ってやらないと、倒れちゃうんで。えー…それが大変だったんですけど。

認知症の語り

医師に薦められたので、毎晩午後9時半から10時半まで認知症の夫と二人で歩いている。外の風に当たって戻ってお風呂に入って休むとコテン、キュッと熟睡できる

それで、毎日の日課は、家にいるときはお昼、昼食までは、あれです、絵とか写経とか、好きなものを自分で選んで、半日過ごして、そんで昼食するんですね。そして、その後、テレビを楽しんで、あの、3時のおやつをいただいて、その後、ちょっと外回りですかね、2人でね、行くんです。で、私はその後、夕食の支度をして、主人は何か新聞読んだりなんかしてて。で、夕食して、食後にまたテレビを楽しんでるんですけど、あの、夜の9時半から10時半まで、まあほとんどの日、2人で歩きに行くんです。
ええ、そうする、あの、1時間こう歩いてくることによって、体がね、先生はとにかく、あの、大学病院の先生はウォーキングを薦められてるので、自分も「体の気持ちがいい」って言うんですね、外の風に当たって。で、戻ってきて、お風呂に入って休むんですけど、何かこう、熟睡できて、ええ。それで、今年の2月ぐらいからずーっと、お天気のいいかぎりは、9時半から10時半まで。ええ。ほいで、お月様がきれいだったり、風が気持ちよかったり、ええ。

―― それは奥さまの健康にとっても、よろしいですよね。

そうです、はい。あの、私も本当に、足腰鍛えてね、いいもんですから、2人ともいいもんですから。私もそれで嫌々行ってるんじゃないんです、ええ。気持ちがいいもんですから。それで行ってるんです、ええ。
…ああ。そうですね。寝る前の、そのウォーキングは、あの、本当にね、お風呂入ってコテン、キュって感じで、あの、良かったと思います、ええ。

認知症の語り

母は、家族が認知症と気づく前に突然「車の運転が怖いのでもうやめる」と言い出した。これまで車で出かけていろんな楽しみを見つけていたのになぜだろうと思った(音声のみ)

えーとですね、おととしですね、2000…、おととしじゃない、そう2009年の、2009年の12月に先ほども言いましたけれども、母が、それまでやってきた運転を突然「怖い」と言って「もう止めるわ」って言い始めたんですね。それで、あの、自分で、いろんなところに出かけて、いろいろ、こう、活発とまでは言いませんけれども、自分で出かけて、いろんな楽しみを、ねえ、見つけ出してくるような生活をしていたもんですから、どうしてかなとは思っていたんです。

認知症の語り

運転が大好きだった夫にとって、仕事を他人にバトンタッチしていく中で、車は生きる支えであり最後の砦だったが、誕生日が来たのを機に自分から手放すことを決めた

―― あの、M、MCI(軽度認知障害)でしたっけ…って言われて、あの、1年間様子見てる間にガクッと悪くなったっておっしゃられたんですけれど。そのガクッとって、例えば具体的にどんなことですか。

そのガクッとの分かりやすかったのは、パーキンソン症状だったんです。すくみ足、すり足、あ、それと車を運転してるんですけど、あの、駐車ができなくなってきたんです。距離感が分かんないのと、視覚のところで見えない。それから、自分は車道というか(を)、走ってるつもりでも歩道に乗り上げたり。何かこう、すき間でも――すごく車大好きで、縦列駐車もとっても得意で1発でちゃんと入る人が――もう何回、何十回やっても、例えばスーパーの駐車場とかも入れられないです、狭い所とか。で、結果的には、そこの駐車場のお兄さんに言って入れてもらったりとか。そういうことも、「あ、主人らしくないな」っていう1つだったのと。
そういうところでMCIという状況になってからは、数字系のこととか財務系のこととか、営業系のことは、こう、どんどん引く流れに、意識的にね、バトンタッチするわって。最後の最後は、車だったんですけど、去年の1年前の3月、お誕生日までは、ま、最後のとりでというか、自分ができる得意な分野をずっと生きる支えにもしたかったので、様子見て、「気をつけてね」って言われながら、自分では放さなかった1つだったんです。それもついに、自分から、お誕生日来たので終了っていう感じで。

認知症の語り

夫が銀行のATMにキャッシュカードを置き忘れてくるということが3回も続いて、その都度銀行から電話がかかってきたのが、夫の変調に気づく一つのきっかけだった

きっかけは銀行行って、キャッシュカードを使ってお金を下ろす。だけど、キャッシュカードだけ置いてくるって。そういうことが、1度だけじゃなくって、2度、3度続き、要は私の(カードで下ろすこと)を依頼してるので、紛失とか落とし物だと、銀行から本人に電話かかってくるんですよね。だから、私に、あの、「お忘れですよ」とか「落とし物で拾われてますよ」って連絡が、3回ぐらい続いたんですね。そのときに、あれ、おかしいなと思ったんですね。「不注意で、どうしたの」って最初は言ったんだけれども、「あ、ごめん」みたいな。3回もカード作り直ししていると、それでちょっと有名人になるので、同じ銀行の中で。で、あのー…その、段取りが悪くなったりとか、あのー、お金下ろしたくて行ったはずなのに、戸惑っていたりとか、そういうことが頻繁に起きるようになってきた、っていうところが1つのきっかけでしたね。

認知症の語り

リセット入院とは認知症の人が持って来たくなるものがない環境で短期間入院して行動パターンを変えるというものだが、自分たちが住む町ではやっていない(テキストのみ)

―― リセット入院ってどんなことするんでしょうか。

薬をこう微調整しながら、そういったもの(トイレットペーパーなど)を持ってくる環境のないところに入院するということなんですけど、それは、家族会の方のアドバイス。そこに、2~3週間…いると、うまくいった人の例なんですけどもね。あの、そういうことをした結果、問題行動がなくなって、ちょっとした軽作業をしに仕事に行けるようになったという人がいるというので、やってみてもらおうかなと思って。
ただ、悪くなった例も何箇所か聞いているんですね。そこの病院で悪くなったんじゃなくて、よくなったと思ったけども、次のところ、退院したあとグループホームで、何か暴れるようになっちゃって、グループホームの人が「ちょっと悪いけど入院してください」と。で、入院したら、「もうグループホームには戻ってこないでください」みたいなことになっちゃったと。もう1人の人は、入院して一度は良くなったけれども3ヵ月後転院したら、そこで拘束して薬を飲まされて、せっかくよくなっていたのが、やっぱり、悪化しちゃったっていうことで。

―― ああ、なるほど。そのリセット入院というのは、どこでもそういう専門のところだったらやってくださることなんですか。

わたしの町にはないんだそうです。で、今、もっと街中とか、東京のほうにあるかもしれないということで、探していただくようお願いしているんですけども。

認知症の語り

本人が受診拒否していたので、物を持ってくることをやめさせられないと思っていたが、警察に保護されたことをきっかけに受診して、認知症の薬を処方してもらえた(テキストのみ)

それで、やはり、このままじゃやっぱりいけないのかなと。前々から、その、物を持ってくるっていうことについては、お医者さんにも相談はしていたんですけども、家族会の先生からは、じゃ、リセットさせる、そういった行動をなくすリセットの入院っていうのもできますよっていうアドバイスもあったんですが…。それは、まあ、診断をもらった直後もあったんですけども、ま、主人がなにしろ病院に行かないので、地元のその主治医の先生に相談したくても、わたしだけがただコンスタントに通っているだけで、報告に行っているだけで、主人の体をどこかに持って行くことは全然できなかったんですね。だから、今回その警察に保護されて、わたしが車で迎えに行ったことによって、初めて、主人が、地元の主治医の先生のとこにも行けて、で、ほんとに数年ぶりに問診を受けて、メマリーという認知症の薬を処方してもらえたんです。

認知症の語り

夫が持ち出したペーパーをこっそり女子トイレに返していたが、男子トイレの紙が足りなくなるだろうと思い、ショッピングセンターの総務に電話をして事情を説明した(テキストのみ)

そのショッピングセンターにもわたしはやっぱり電話しておこうと思って。というのは、コンビニでも言われたことは、ペーパー自体は単価は安いんだけども、お客さんから「紙がない」というクレームがつくのがまずいので通報しちゃいましたって。ショッピングセンター、大きいとこですけど、それはそれで、やっぱり主人が男性用の個室から持ってくれば空っぽになっちゃっているかなと。わたしも、女性用のトイレには、家から返しに行っていたんですね、こっそり。ほんとに変な作業なんですけども。でも、これはこれで、やはり男性用のが空っぽになって、清掃員さんが何かいろいろ言っているんじゃないかと思って。ショッピングセンターの総務の方に電話しましたら、「そういう報告はあがっていないし、心配しないでいいですよ」と言われたんです。で、そういうショッピングセンターが2社あって、もう2社とも電話をして、で両方とも「いいから、いいですよ」って言ってもらえました。それが、まあ7月ですかね。

認知症の語り

コンビニのトイレからトイレットペーパーを持ち出して警察に通報されたが、店長が映画『明日の記憶』を見ていたので、理解を示してくれた(テキストのみ)

今年(平成24年)の5月の8日に、警察に保護されることがありまして。それは、前々からあるにはあったんですけども、コンビニに行っては、買い物をしてもしなくても、トイレに入ってトイレットペーパーを持ってきちゃうんです。それが、もう、いちばん、今でも困っている問題ごとなんですね。ほかのことは、多少のわがままは仕方がないんですけども。
もう1軒、別のところにも行ったりして、また保護されてしまって、わたしもコンビニに迎えに行ったんですね。それは、6月だったんですけども、息子さんとちょっと年配のお母さんとでやっているコンビニで、わたしがその連絡を受けて、主人を迎えに行ったときに、お母さんのほうがちょっとぴりぴりしてらしたんですね。「病気なら病気と先に言ってくだされば、対応もあったんですけどね」って言って、「通報しちゃいました」っていうふうに言われたんですが。コンビニの奥に入って、わたしが若年性認知症ということを、おまわりさんとか、その息子さんである店長さんに話していましたら、息子さんが、「あ、それ知っている。ピックって言うんじゃないですか」と。で、「映画もあるでしょう」っていうことで解ってくださって。あの『明日の記憶』(※)かな、渡辺謙さんが主役になったもので。で、すごく理解を示してくださって、それで、そのパトロールでかけつけたおまわりさんたちも、「ああ、それは大変なんだね」と。説明をする前は、「認知症って、ご主人あんなにぱりっとしてね」――あの、ジャケット、ネクタイして、しゃんとしているんですね―――「しゃんとしているじゃないですか」って言われたんですけど、「いやあ、実は若年で」って話をしていたら、その店長さんが「知ってる、知ってる」って言ってくださったんで、こう空気がふぁっと変わって。で、お店を出るときには、もうお母さんが、「頑張ってくださいね、しっかりね」って言って励ましてくださって。
で、その後、体験談を介護関係の方達のところで話す機会があり、会の方から「コンビニのそういった、温かい対応っていうのは、非常によかったですね」と言われていたものですから、コンビニの人にちょっと報告をと思って、お電話したんです。「その後、主人が行っていませんでしょうか」と。で「あのときのお礼と、こんな会でこんな体験談を話しました」っていうことで。そしたら、お母さんが「いや、わたしたちも、経営する者としても勉強不足でした」と。「こういったことは、従業員一同、もっと勉強すべきだし、こういう業界でね、広くみんなに知ってほしいことですよね」というようなことを言ってもらって、ありがたいなと思いましたね。
※映画『明日の記憶』の主人公はアルツハイマー型認知症で、ピック病ではありませんが、若年性認知症という点は共通しています。