まず、あの、今までどおり…接してほしいですね。それが一番。同情してほしくないんですね。…あの、かわいそうな人って思われたくない。特別な人とかも思われたくない。今まで通りの、対等っていうか、人間対人間として、普通の人間として接してもらえたら、それで一番いいと思うんですね。
ただ、その、まあ突然、体調が悪くなるとか、そういう……何ていうのかな、…そういう症状があるので、それを理解してもらえたら、もっと、楽ですよね。例えば、まあ、約束しても、その日になったら、ちょっと具合が悪くて行けないかもしれない。で、それ、隠して…行って、あの、わたし何度も何度もキャンセルしてきたんですけども、…そうすると、やっぱり、あきれられるじゃないですか。ま、親しい友達はあれですけれども。こう、例えば、知人とかが、「こういうイベントがあって来て」って言われて、「行く行く」って言っていたのに、何かそのときになったら、何かすごい具合が悪くて、「ちょっとごめんなさい、行けない」って言うと、…「何か、あなた、いつも来ないね」みたいに言われたことがあって、あの、すごく、すごく……まあ、わたし、自分がやっていることなんですけれども、…あの、ぐさっときたんですけども。
だから、そういう体調が不安定で、まあ、キャンセル、ドタキャンすることもあるとか。あの…、ま、一緒にランチで楽しく話していても、…ちょっとしんどくなったら先に帰るとか。そういう、体調のことは分かっていてもらえれば、こちらも安心して、約束もできるし、…気がねなく行ける。そういうこと全く知らない人だと、ちょっと約束もできないですし、行くこともできないですし。だから、まあ、そういうの分かっていてほしいですけどね。あの、もう、特別扱いはしてほしくないですね。あの、……うーん、だから、その体調が悪いって言っても、「じゃ、もう誘わないようにしよう」とか、あのー、「こういう会があるけど、…あ、まあ、声かけるのやめとこう」とか、それは、やめてほしいんですよね。今までどおり、でも、…その、あの、……チョイスは与えてほしい。来る来ない、途中で帰る、そういうチョイスがあって、今までどおりに…してくれたら、…遠慮せずに、その罪悪感を感じずに、…その、キャンセルをするとか、途中で帰るとかって、すごい罪悪感を感じるんですよね。すごいつらいんですよね。だから、そういう罪悪感を感じずにつきあえるといいなと思いますね。
投稿者「dipex-j」のアーカイブ
で、ま、もちろん、あのー、伝える前は不安ではあったんですけれども、…あのー、…そうしましたら、子どもが、まあ、……「別に歩けなくなったって、……別に歩けなくなったって車いすに乗ればいいじゃないか」って「大丈夫だ」って(笑)子どものほうが言いまして。…そういえばすごく、ほんとに、あのー、…ああ、…あ、そうかって、…わたしがこんなに苦しんでいたのは、あのー、失うことを恐れていた。
その、……認知症になったらどうしょう、歩けなくなったらどうしょう…っていうことを、に、ものすごくおびえていた。…でも、確かに、歩けなくなったら車いすに乗ればいい、…記憶が悪くなったらメモをとるなり、…うん、コンピューターもありますし、どうにでも対処ができる。…それを、そうなるんじゃないかっておびえている、…何かそのころ、自分は、あのー、ロシアンルーレットを毎日やっているような気分だったんですね。その、いつ、パーキンソン症状が出るのか。いつ記憶障害がおこるのか。いつ…認知機能が低下しておかしくなってくるのかっていう、その、何か、その弾を、こう、毎日毎日自分で引きがねをひいているような。そういう、あ、きょうは出なかったみたいな。そういう気持ちだったんですけども。そのー、歩けなくなったら車いすに乗ればいいっていうのを聞いたときに、あのー、……何かすごく自分が間違っていたって思いましたね。……何か、……こう、人間の生活って、お天気のようなもので、あのー、必ず雨もあれば台風もあれば梅雨もあれば、いろんなときがあるのに、何かまるで、…雨が降ったらどうしょうって(笑)心配していたような、雨が降ったら傘をさせばいい、傘がなかったら傘を買ってくればいい、……それだけのことなのに、雨が降ったらどうしょう、雨が降ったらどうしょうって、毎日びくびくおびえていた自分は何てばかだったんだろうって、すごく思いました。
あのー、子どもに話すまでには、あのー、結構時間がかかりまして、…ね、やはり、その……絶望とセットで伝えるわけにはいかない。…あのー、希望とセットでないと、伝えることはできないと思ったんですね。で、自分は、ま、医師から、何か絶望とセットで与えられたんですけれども、あのー、……なので、自分でも、あのー、その間すごく調べました。あのー、すごく勉強もしましたし、いろんな論文も読みましたし、調べて。
で、調べていくうちに、あのー、必ずしも、そんな急激に進行して、…駄目になるわけではない。例えば、その、認知症が出ない方がいる。…レビー小体型認知症という名前がついているのに、…全然認知症にならない方、ま、認知症っていうのは、その認知機能が低下して、自立できない状態ですよね。そうはならない方がいらっしゃるっていうことが分かって、それは、すごく、あのー、希望になりました。……で、…あのー、で、進行も、個人個人でかなり違う、急激に悪くなる方もいるけれども、10年進行しない方もいるっていうことも…分かりまして、で、……よし、大丈夫だ(笑)あのー、…これなら、子どもに言えると思いまして、…で、子どもに言いました。ま、もう成人していますけれども。で、あのー、まあ、わたしはこういう病気だけれども、…大丈夫だからと…いうことを伝えました。
――やっぱり、同じ家族でも、そのちょっと言い方気を付けてほしいなとかって、そういうふうに思われることってあるんでしょうか。
それは、ありますね(笑)。そこまで言わなくてもっていう、ま、いつもじゃないんですよね。たまにね、ずきんとくることありますからね。そこまで言わなくてもいいんじゃないかなと思ったりすることもありますけどね。でも、まあ、子どもにしてみればね、親がこんなにぼけてきたらね、ほんとに気が気じゃないだろうなって、そういうふうにもとりますけどね、自分でね。……わたしがそういう立場だったら、やっぱり、ああーと思うだろうなと思うんですけどね。でも、自分は、わす、忘れちゃったことを忘れている(笑)。……。
あとね、こう、思い出そうと思ってゆっくりゆっくり話をしようとするでしょう、そうするとね、相手はね、今までちゃんと話をしていたのがね、もたもたしゃべっているから気が気でないんだと思うんですよね。だから、あの人すぐとか何か言いたくなっちゃって、先回りして何か言おうとするからね、だから、そういうのはね、あのー、分かりますからね、自分でもね。ああ、分かんない、もう、やっぱり、もたもたしているんだなって自分でね、そう思いますもんね。自分でも、言葉がぱっと出てこないときもありますからね。……。
まあね、でも、まだ、わたしの周りで認知症だと言われた人、聞いたことないから、まあ、他人の方は知りませんけどね、家族の中ではねえ、母たちも何か年とってからずいぶんぼけている、ほけていたなと思うんですけどね。認知症なんていう言葉なかったもんですから(笑)。そんなこと思ったこともなかったんですけどね。そして、みんな、「ああ、年寄りになったからぼけたんだわ」とか言って簡単にみんな言っていて、だから、そんなにきつくね、あのー、あれだと思っていなかったんですけどね。だけど、自分がそういう立場になったら、ああ、認知症ってこういうことなんだわと思うとね、すごくずしっとくることもありますからね。だから、前の、昔の人には気の毒なことをやっていたんじゃないのかなとか思うんですけどね。ご本人結構しっかりしているつもりでいろいろ言っているのにね。相手が、もう、「ああ、やっぱり、年寄りだからしょうがないよ」っていう、そういう言葉をよく聞きましたからねえ。……。
――まあ、それで、この春ですか、こちらに移って来られた、その決断って、どういうことで決断されたんですか。
うーんとね、そうね、わたしはね、まあ、そんなにこういうところにね、あわてて来ることないとは自分では思っていたんですね、まだ、自分でいろんなことできるしと思っていたんです。でもね、娘が、心配して、あのー、ここからね、車で50分ぐらいかかるんですよね。それなのに、1週間に2回も3回も来てくれるでしょう。だから、それのほうが大変だろうと思ってね。そうしたらね、もうどっか近いところでいいところがあったら、あのー、で、自分(=長女のこと)でも探してね、ここを、で、なかなかいいところがあるから、そこに来ない?って。そうするとうちから10分ぐらいで来れるからって言うんですからね。だって、それもいいかなと思ってね、でも、そんな、忙しいのにね、かわいそうだからと思って。それもありましたね。で、わたしもやっぱり40年も、そこに住んでいましたからね。だから、もう、ご近所ともみんなね、お知り合い多かったからね、ああ、もう、ね、犬もいましたしね。で、1軒家でしたから。もう、犬もね、ほんとに、あのー、よそのこと気にしなくてね、やっていましたからね。だから、それも、ちょっと窮屈になるから大変かなと思っていたんですけどね。でも、まあ、ここに来たら、犬も飼ってらっしゃる方もいらっしゃいますからね。だから、まあまあいいかなっていう感じですけどね。
そらあ、もう娘に迷惑ばっかかけとるもんで、その認知症のことで。もっとしっかりできるもんならとはそら思うてます。
――今具体的に娘さんにどんな迷惑をかけているってふうご自分で思ってらっしゃるんですか。
忘れることが多いし、することがみんな何か…とんちんかんなことするし…へまばっかしてますから。
――ちょっとその内容について教えていただきたいんですけど。
(笑)……私中途半端な仕方やし、その何でも行動が…人から見たらちょっと…変な(笑)行動とるしっちゅか、もうきちっとすることができないんです。…で…自分ではしたつもりでおるんですけども、もう引き出しなんかもドアなんかもみんな…きちっとこうあの戸棚の…閉めておかんと半開きになって、なんでもこうあのジップの袋のあれでも、キチンと閉められやんと、みんな半開きであったり、あのこう…ふたなんかでもきちっとできないし、自分でもおかしいなと思ってます。
――もともとはそういうところをやっぱりきちっとやりたいっていうタイプだったんですか。
まあ、初めからはもうそういうタイプじゃないけども、それが何かひどなってきて。
――自分できっちりと戸棚が閉まってないとか、ふたを閉めていないっていうのは自分で気付かれるんですか。
気付きません。気付くぐらいならすると思いますけど。
――でも後になって見ると開いていて私がやったのかなって。
教えてもろうてます。みんな。
――あ、娘さんに。そうやって娘さんに教えてもらった時にどういう気持ちになりますか。
あー忘れとったわっていう気持ちです。……みんなそうやって教えてもらった。
――そのことが申し訳ないなあって。
それはもう、それはいつも思っています。