介護サービスの利用

ここでは、認知症になった人を介護していく上でどのような介護サービスを利用していたかについての家族の語りを紹介します。ここで紹介する介護サービスは、主に介護保険制度によるもの(市区町村に申請し、要介護認定を受けてその度合いに応じて受けられるサービスで認知症の場合は40歳以上が対象)です。ただし、人によっては障害者認定を受けていたり、合併するその他の病気で医療保険によるサービスを併用していたり、介護保険外でサービスを利用している場合も含まれています。

介護サービスを利用した経験のある家族の中には、最初どこに相談したらよいかわからなかったと語った人たちがいました。一方でこれまでの介護経験が情報を得るのに役立ったという人や周囲の経験者や医療・介護関係者からのアドバイスでスムーズに導入できた人たちもいました。

褥瘡(じょくそう=床ずれ)と微熱があることで、わずか半年の間に、病院と施設を何回も変わらざるを得なかった母親を介護する女性は、気が動転している中でも負けずに助けを求めることが大切だと語っています。

介護保険による介護サービスを受けるには、市区町村に申請し、要介護(要支援)の認定を受ける必要があります(参照:利用までの流れ)。訪問調査の結果と医師の意見書をもとに判定が行なわれます。介護サービスを利用しようと思ったきっかけは、家族が仕事で家を離れる必要があったこと、日常生活の支援を要する場面が以前よりも増えたこと、認知症の人を支える家族自身が病気や疲労で今までのような介護を続けられなくなったことなどが挙げられていました。医師に勧められて認定を受けたという人もいました。

介護サービスを必要とする人やその家族のニーズに合わせて、適切なサービスが受けられるよう計画(ケアプラン)を作成し、サービス事業者や市区町村とご本人や家族の間の連絡調整の役割を担うのが、ケアマネージャー(介護支援専門員)です。認知症の人が自分に合ったサービスを受けられるかどうかは、ケアマネジャーの姿勢、知識や情報量、調整力、本人や家族との相性に掛かっているので、利用者に寄り添って的確な情報提供をしてほしい、という声が聞かれました。

介護サービスの種類

介護保険で受けられる介護サービスにはさまざまな種類があります(参照:独立行政法人福祉医療機構 WAM NET サービス一覧/サービス紹介)。自宅で利用するサービスには、訪問介護(ホームヘルプ)、訪問入浴介護、訪問看護などがあります。施設に通って利用するサービスには、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)、短期入所生活介護(ショートステイ)などがあります。また、通いを中心に、利用者の希望などに応じて、訪問や宿泊を組み合わせて利用できるサービスとして小規模多機能型居宅介護(小規模多機能)があり、「通い」「訪問」「泊まり」等のサービスを同じスタッフが提供するため、連続性のあるケア、安心感が得られるメリットがあります。(参照:公益財団法人 長寿ネット、小規模多機能型居宅介護とは
デイサービスの中には、認知症専門の施設もあります。その他、生活を整えるためのサービスには車いす・ベッドなどの福祉用具のレンタルや、手すりをつけるなどの住宅改修も含まれます。これらのサービスは認定された要介護度によって、サービスを受けられるかどうか、受けられた場合は負担金がいくらかかるか異なってきます。今回、インタビュー協力者が話していた、デイサービス、デイケア、訪問介護、訪問看護、訪問入浴介護、訪問歯科、ショートステイ、その他訪問診療(医療保険による)、ガイドヘルパー(障害者総合支援法*による)、配食サービス(多くは介護保険外だが市区町村によって異なる)を利用した経験についていくつかご紹介します。

*「障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)」は、これまでの「障害者自立支援法」が、平成25年4月に改正されたものです。そのサービス内容等については経済的負担と公的な経済支援制度 を参照してください。

デイサービスと一口にいっても、その質にばらつきがあります。次の女性の母親は週に6日、2つのデイサービスに通っていますが、事業所ごとの差が大きいと嘆いています。

自宅で受けられるサービスにもいろいろなものがあります。一人暮らしの若年性認知症の女性は、月曜から金曜までヘルパーや作業療法士の訪問を受けながら、自立生活を営んでいると話していました。また、障害者手帳を取得したという、もう一人の若年性認知症の女性は、趣味の外出の際、障害者総合支援法に基づくガイドヘルパーの支援を受けていました。

利用者の気持ち、認知症の人を支える家族の気持ち

このようなサービスを利用する認知症本人や家族の中には、訪問介護などについて最初他人を家に入れることに抵抗があったという人もいました。複数の人たちが、デイサービスやデイケアに行くのを嫌がると話していました。そのような状況で送りだす家族の中には心苦しさのようなものを感じている人もいました。

最初は嫌がっていた母親が、デイサービスの職員のかかわり方で変化したことを話してくれた人もいました。

認知症のタイプと利用者の年齢によるデイサービスの違い

どこの施設(デイサービスやショートステイなど)を利用するかについては、身近なところを選んだという人、実際に本人を連れて複数の施設を見学・体験し、本人が気にいったところを選んだという人などがいました。また、認知症のタイプや認知症本人の年齢によっても適した通所施設は異なるのではないかと話す人たちもいました。父親を介護していた女性は、レビー小体型認知症の場合は小規模グループのデイサービスがよいと医師から勧められたと話していました。他にも前頭側頭型認知症の夫が通う施設の話や若年性認知症の人を専門にしたデイサービスの話をしてくれた家族もいました。

前頭側頭型認知症の男性の家族は、看取りのケアを自らの判断で、それまで根気強く夫に接してくれていたデイサービス施設が小規模多機能施設に移行したことから、訪問看護や訪問診療、糖尿病、診療内科の専門医との関係はそのままに、ケアマネジャーを含めた介護保険サービスを小規模多機能施設に移すことにしました。その理由を家族は次のように話しています。

2021年7月更新

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