インタビュー時:56歳(2012年8月)
関係:妻(夫を介護)
診断時:夫58歳、妻53歳

診断される1年ほど前から夫の異変を感じていたが、2009年に前頭側頭型認知症と診断される。夫と介護者、娘と息子の4人暮らし。その後、夫はコンビニなどのトイレからトイレットペーパーを持ち帰ることが続き、2012年警察に保護されたこともあった。なるべく夫の習慣に合わせて対応を工夫してきた。現在は若年性認知症の人を受け入れるデイサ-ビスに週5日通っており、夫に合った対応をしてくれているので、嬉しく思っている。

語りの内容

主人は方向は絶対間違わないんですけども、夜、遠くまで歩いちゃうことが2度ほどあって、わたしだけじゃちょっと見つからなくって。というのは、あの、携帯はやりとりしますけども――わたしから電話しないとしてこないんですけども――主人自身が立ち止まらないので、「今、どこにいるか分かんないんだよ」という電話があっても、「じゃ、電柱の文字を読んで」って言うと「どこそこ」と読むんですが、昼間なら読めても夜は見えなかったりするということがあって、6月の末に、夜、見当をつけて迎えに行ったんですけど、やっぱり見つからなくて。
もう、しょうがないから、駅前の交番に協力を求めに行ったらパトロール中で留守で、電話番号が書いてあったので、そこに電話したら、大きな警察署にかかってしまったんですね、で、こういうことは嫌だったなと思ったんですけども、「別に、パトロール(捜索)の要請じゃありません」と、「もし、パトロール中にこういう人物がいたら、ご連絡してください」っていうことで電話したんですけども、結局、いっせいに探してくれてしまって(笑)。もう、おおごとになっちゃったんですね。
それで、「奥さんも、ご主人に電話をしてください」と、「われわれもしますよ」ということで、両方から主人に電話して。そしたら、わたしが電話しても、主人は「どこだか分からないよ」と、「家に向かっているよ」って歩くんですけども、警察が電話をすると「今何町の何丁目にいます」とか言っているらしいんですね。で、「セブンイレブンがあります」とか、で、えーっていう感じで、で、最終的には、警察がやっぱり見つけてくれて。
わたしが携帯に電話をすると、何か、よく映画に出てくるような映像が浮かぶんですね。…こう、くるくる赤いランプが回って、あの、わあわあわあっとマイクで言いながら…、そういう光景が浮かぶような音が聞こえていて。「パパ、どこにいるの?」って言ったら、「何か知らないけど、何か花がいっぱい咲いているところだ」とか言って「誰かいる?」と聞くと、「いるよ」とか「警官がいるよ」とか言って「ちょっと替わって」とか言っていたんですけども。あのときは、結局、警察の人が、「奥さんがそこに行っても意味がない」と、「どうせご主人は歩き続けているので、確保したら連れて帰りますから、奥さんは警察署に来てください」って言われて。まあ、警察に行って、主人が来るのを待っていて、ほんとに、もう、嫌な気分で、もう夜が明け始めていて。
で、主人が来たら、上着のこの辺に(トイレット)ペーパーがこうごろごろ入っている(笑)。こんな物を持ったまま、もう10時間以上歩いていたわけですから、夜7時ぐらいから散歩に行って。…そのときも警察の人が、「病気のことを知っている」と、で、「ご主人はこういうケースだが、自分は、これこれこんなケースを知っている」と。「例えば、いつも同じ駅の同じ何番ホームに入りこんで、電車を止めちゃう人がいるんだ」と。で、「ご主人も、いつそういうことがあるかもしれませんよ」みたいなことを言われて、「ま、しっかりね」とか言われたりもしたんですけども。

私は: です。

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