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インタビュー時:55歳(2012年9月)
関係:妻(夫を介護)
診断時:夫61歳、妻53歳
膠原病を15年患った夫は、60歳前に夜中の異常行動や幻視が顕著となり、得意だった計算や縦列駐車もできなくなった。パーキンソン症状も出て、2010年4月レビー小体型認知症と診断される。夫婦2人暮らしで子どもはいない。2011年に要介護3、2012年に要介護4と認定。若年性認知症対応コースのあるデイホームに週1回とショートステイを活用し、自宅介護を続ける。
語りの内容
最初は、あの、虫とか蛇とかでも、「何が、どこ、どこに」って。こっちの視点で、そんなのあるはずないっていう視点でやると、接点がないので、闘って疲れてたんですね。そうだ、と。相手目線だっていうところで、あの、受け入れるとか、受け止めるっていうのももちろんしたんですけど。そのうち、ないものはないし見えないので、受け止めも受け入れも、何かね、それすら不自然になってきちゃったんですね。で、何をやったかっていうと、じゃ、一緒に確認しようって。で、「蛇が」って言ったら、「どこに蛇がいる?」って、「一緒に行って退治しよう」って、一緒に退治することもしたし。そばに行って、「じゃ、触ってみましょう」って。
で、彼が触ったり、私が触ったり、「危ないから、かまれるから」とか言うと、「じゃ、私が触ってみるね」って手を出すと、「あれ、いなくなった」って。確認をすると、「あ、それってじゃあ、僕だけだったのね」ってこと、何度も繰り返すうちに、動揺しなくなってきたので。「じゃあ、気持ち悪いの消しましょう」で、わが家では「すっきり、さわやか、元に戻った。せーの、ポーン」って。この音と一緒に消すんですね。今のなし、みたいな。今までの不安も心配も、見えてたと思った虫や蛇もなし。で、すっきり、さわやか、元に戻って、平常心に戻りましょうっていう。潜在意識の活用でもあるんですけど、やっぱり気持ちが「ない」と思えば「ない」。思いが形になるっていう言葉があると、思いの中のものが消えると、現実は消えるっていうことの応用ではあるんですけど。「すっきり、さわやか」って言ってるうちに、「あ、消えた」っていうことが増えてきて。そのうち、「ポーン」て言うだけで「元に戻った」って言うし、反復って、わが家でのおまじないは結構、いいですね。だから、そうそう、何か最近、あれ、ポンと音がしたなって思うと、自分で、あの、ベッドの、このシーツのしわとかがウジャウジャいるって、一時期大騒ぎしてたのが、何回もポン、ポン、たたいて「消えた、消えた」とかってやってましたから。
お皿の上のパンくずも、フレンチトーストに切り替えたんですね。そうすると、パラパラ落ちないので、しっとりしたまま口に入れるわけですよ。だんだんおまじないと、おまじないは、あの、いろいろなところに応用し、食べ物に関してはカサカサしたものじゃなくて、しっとりしたものに変えるだけで、ずいぶんと改善できました。そのうち、経験値で動揺しなくなり、そして、まあ、あの、抑肝散っていうお薬も、主人の場合は3週間目くらいから、穏やかになってきたので、それも味方だねって。いろんな味方が増えてよかったね、よかったね、よかったねを繰り返す中で、動じない、あの、気構えが本人の中にも出てきたって感じですかね。
インタビュー家族33
- 夫はよく夜中に寝言を言って暴れていた。企業戦士でストレスがたまっていているからだろうと思っていたが、レム睡眠障害(※)と思えばつじつまが合う
- 最初に幻視で猫がいると言ってやさしくなでているのをみたときは、まさか動物霊ではないかとお祓いをしてもらった
- 最初、夫の様子から気が狂ったと思い、どこを受診したらいいかわからなかった。院内紹介で老年科から神経内科に行き、検査を受けたが、診断がつくまで1年間あった
- 診断のための検査で歩き方を見るときは普通に歩けたが、SPECTやシンチテストを受けて、レビー小体型認知症の診断が出た
- アリセプトは以前に具合が悪くなった経験があり、レビー小体型認知症ならアリセプトと言われて受け入れられなかったが、経験者の話を聞いて第2選択の薬を試してみることにした
- アリセプトでもメマリーでもリバスタッチでもレミニールでも、必ず歩行障害につながる。この夏は転んで3回救急車で運ばれた。量を減らし、最後には薬を抜いたら、だいぶ良くなった
- 薬では不具合がいっぱい出続けたが、フェルラ酸のサプリメントではカプグラ症候群(※)や嚥下障害などの周辺症状が和らいだ。選べる選択肢は幅広くあったほうがいい(テキストのみ)
- 夫が銀行のATMにキャッシュカードを置き忘れてくるということが3回も続いて、その都度銀行から電話がかかってきたのが、夫の変調に気づく一つのきっかけだった
- 運転が大好きだった夫にとって、仕事を他人にバトンタッチしていく中で、車は生きる支えであり最後の砦だったが、誕生日が来たのを機に自分から手放すことを決めた
- 夫は、誰もいないソファに向かって話しかけたり、今日は15人来ているがおかずは足りるかと聞いたりする。こぼれたパンくずが虫のように動いて見えてトーストを食べられない
- 夫はカプグラ症候群が出ると、私を偽者だと思って「うちのやつの洋服を勝手に着て」と言って大声を出したり、大股で歩いて追いかけてきたりする
- 最初は幻視を否定して闘って疲れていたが、夫婦で一緒に確認して「ぽん」と手を叩くおまじないで幻視を消せるようになり、本人にも動じない気構えができてきた
- 自分たちと同世代の、伴侶を介護している人とつながりたいと若年性レビー小体型認知症の家族会をスタートさせた。親の介護ではなく夫婦だからこその機微があると思う
- 高齢者の多い施設だと動けない人が多く、大昔の歌を歌ったりして、夫は「居場所がない」と言っていた。今のところは若年性専門のデイサービスでとても気に入っている
- 夫がはっきりレビ-小体型認知症と診断を受けた日、「なんで俺が…」と一言だけ言って肩を落とした。受け止められない悔しさや苦悩を感じ、切なかった
- レビー小体型と診断されて原因がわかり一瞬ほっとしたが、夫も私も先の見えない不安があった。しかし結婚時の約束を思いだし、夫を支える最高の脇役になろうと決意した
- 親の介護と違い、夫婦だと遠慮がないので、失禁したときに「いい加減にしろ」とキレてしまう。年だからと割り切れず、「まだできるはず」と可能性に対して貪欲になる
- 不安や恐れ、怯えといった領域にどこまでも落ちていきそうなのを、必死で踏みとどまっている。医療2割・介護8割といわれる病気なので、介護者が明るい希望を持つことが大切