インタビュー時:76歳(2020年6月)
関係:妻(夫を介護)
診断時:夫67歳、妻65歳
共働きで夫婦2人暮らし。夫は50歳で1型糖尿病と診断され、56歳で退職した。67歳、糖尿病教育入院時にはアルツハイマー型認知症、翌年、画像診断で前頭側頭型認知症と診断された。血糖値不安定のまま、70歳前後で弄便(ろうべん)や不潔行為、昼夜逆転が始まった。親身になってくれたデイサービス施設が小規模多機能型居宅介護施設になったことを機に、看取りまでをお願いした。腎機能低下により76歳で逝去。
語りの内容
(平成)27年から、成年後見の申請をしたんですよね。その時に私も、登録はしてたんで、できたら私にっていうつもりで裁判所に行ったんですけども、「家族の人は駄目」*ってもう頭ごなしなんですよね。それで、弁護士に、させるっていう話で。不服なんですが取り下げはできないっていう話で、それっきりになってそれで、やったんですが。成年後見ではその1年、自分がうちの家計を全部きれいにして報告をして。通帳も全部出しますから通帳の写しで、送ってもらって。それで、家計簿を集計して送ってたんですよね。それは、弁護士さんがそれを集計して、1年間集計して裁判所に報告。1年目の時に、通帳から引かれてたんですよね。何十万かがね、勝手に。それを見て、私が怒って弁護士に「何ですか、これは」っていう話。本人に勝手にっていうことは、本人は分からないからどうしょうもないかもしれないけど、家族です。家族がいるのになぜ一言も、断らないんですか。
これは、通帳を見れば、通帳の名義は、いっときでも弁護士の名義になってるんですよね。それだからどうにでもなるんですよね。それ自体は、ま、仕方がないことかもしれませんけども。だからといって家族がいるのに、分かってるのに勝手に、下ろしていいものですか。それ、一般の人の、常識じゃ考えられないことだって30分以上話をして。で、じゃあ本人に断りますかっていうから、本人に断って分かるんだったら成年後見いらないつって。わけの分かんないことを言う。それで、私は引き下がらなかったら、結局はその裁判所の、決定通知っていうのがあるんですよね。それで、手当は幾らでいいというような裁定が出るんですよね。それのコピーを送ってきたんです。で、実費運賃もやりますかって言うから、切手とか足代はそれはかかったもんだから、私のほうでも大体分かるからそれはいらないですけど。通帳から勝手に下ろさないでください。ほんとに頭へ来たんですよね。そういうことをされてみんな我慢してるっていうことがあるんじゃないかと思うんですよね。たいしたことされてないのにね。財産管理をしてるっていうことなんですけど。財産管理は、全部送ってますけども、日常の生活費の、計算は全部私がやってるし。それで、出してはいる。
なぜ成年後見やったかっていうと、そういうことも見込まれてはいたんですけども私は子どもがいないんで、もし仮に相続が発生すると、向こうの本人のきょうだいに行くんですよね、ちょっと公にしておいたほうがいいかなっていう感じがあったんで。ちょっと手ごわい人たちだったんで。それをやっといたんです。そういう意味でね。だけどまあそういう、毎年毎年、手当が引かれてるっていうことが、そういうことがあって。一つありましたけども。まあ、それはそれで成年後見は立てた、意味は一応ありました。
*家庭裁判所では、申立書に記載された成年後見人等候補者が適任であるかどうかを審理します。その結果、候補者が選任されない場合があるとされています。(参考:裁判所 裁判手続き 家事事件Q&A 第11 成年後見人には必ず候補者が選ばれるのですか。 ) この女性の場合、被後見人と後見人候補者の生活費がもともとはっきり分離されていないような場合に該当する可能性が考えられます(参考: 家族信托と相続「親族が後見人になれない13の例」 )
インタビュー家族48
- 糖尿病の教育入院期間中に大声を出して迷惑をかけた。退院後、認知症と糖尿病を地域の病院で診てもらうことになり、2つ目の病院で前頭側頭型認知症だと診断された(テキストのみ)
- 1ヶ月の夫の状態を記録して渡すことで、診察時に状態を詳しく伝えられるばかりではなく、自分の気持ちを落ち着かせるのにも役立った(テキストのみ)
- 子供がおらず先々のことを考えて、成年後見人制度を利用した。弁護士が、なんの報告もなく報酬を口座から引き落としていたことがわかり、申し入れをした(テキストのみ)
- 弄便(ろうべん)という不潔行為が始まり、手は真っ黒。夫は、引き出しやクローク、整理ダンスにも便を丹念に押し込んでいるが、悪びれる様子はない(テキストのみ)
- 要支援の人から要介護5までのご家族が参加して皆が体験談を語り合う、それが先生役となり、安心と自信を得られた(テキストのみ)
- 小規模だとみんなが1人の情報を共有しあってくれて、じゃまなくらい人がウロウロいる。一人ぼっちになることがないのがいい(テキストのみ)
- 夫の場合、認知症により、たがが外れて本来のかたくなな性格が暴走する場合もあるという説明に納得がいった(テキストのみ)
- 朝の洗面で手出しをすると、「うるさい」という感じで、夫の手が至近距離から飛んでくる。本人が無意識だとわかると、相手にできないなと感じた(テキストのみ)
- 夫は、食べたことも忘れてしまい、色々と食料をあさるようになった。冷蔵庫の生肉や、柔軟剤やタワシも口にしてたようだった(テキストのみ)
- 夫は新聞を取りに行くのは自分の仕事と思って、マンション1階の新聞受けを何度も見に行く。汚れた衣服やステテコ姿のままで、目が離せなかった(テキストのみ)
- 夫は自分の失態を指摘されたときなど、部屋にこもって同じ言葉を何度も繰り返し連呼している。忘れちゃいけないことを繰り返しているのだろうか(テキストのみ)