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診断時:60歳
インタビュー時:67歳(2016年7月)
インタビュー家族38 の夫
青果店に勤務していた2009年頃、計算を間違えたり、文字がうまく書けなくなったりするようになり、妻の勧めで受診して、若年性認知症の診断を受けた。診断後は、他人に病気を知られることが嫌で、9か月間家の中に引きこもっていたが、和菓子屋でアルバイトを始め、現在は週3日デイサービスにも通っている。診断前からの趣味であるインディアカ(球技)は今も続けており、気心の知れた仲間と過ごす時間を楽しんでいる。現在は妻と二人暮らし。
語りの内容
――その、うーん、周りの人に自分が認知症だっていうのを、こう、知られることっていうのは嫌ですか。
嫌でしたね、ええ。
――で、今は嫌じゃなくなった。
いや、もう慣れちゃったというか、ええ、ですね。
――そこの転換点っていうか、何だったんだろう。
えー、ずうずうしくなったんじゃないかな。
――なるほど、やっぱ、初めのうちは隠していたいという気持ちがあった。
そうですね、ええ。
――そういうときには、やっぱり、こう、その相手に、何かね、こう、その辺を、その自分が認知症だということが分からないわけだから、相手は。まあ、何か言いたい放題のことを言ったりしますよね。
ええ。
――だから、そういう意味では、自分が認知症だっていうことがある程度分かってもらったほうが。
いいよね、本当は。
――隠さないほうが……
本当はね。うーん……でも、ね、やっぱり、どうだろうな、よく分かんない。
――まだほら言っていない方もいらっしゃると思うんですよ。認知症の診断を受けたけど、周りの人には。
そういう人に何かアドバイスの言葉ありませんか。図々しくなればいいのかな。
それこそ図々しくなれ(笑)。ま、それか仲良しになるか。ええ。
――相手と。
そうそう、うん、と、思うんですけど。
――心を開いていかないと駄目ですよね。
そう、それはもうなかなか開かないんですよ、ええ……ねえ。言いたいこともいっぱいあるんだけど、なかなか……。
――でも、ご自身は、開く努力をしてきたっていう感じがしますか、ご自身は。
(笑)どうだろう、まあまあ、あんまりそんなにはしていないような気がしているんだけど、うん。
――でも仲良しの人はたくさんいる。
うーん、仲良しにはしてもらっているからね。ま……やっぱり……仲良くしようっていうような気持ちが…あるんだけど、なかなかそこへ飛び込めないんだよね、なかなか。入っちゃえばもうそれで、ずうっと、今、僕ら、僕とか、うちの嫁、嫁でもそう一緒にやってくれているんだけど、やっぱり一緒にやってくれると、また、それもしっかりやれるようになるんだけど。……なかなか、難しいですよね、それ、うん……。
――周りの人が優しく接してくれれば入っていきやすいですよね、そういうの、最初のところが。
ええ、そうです、最初はね、ええ。それが、ちょっと一歩でも入れれば、そういう認知症の人でもだんだん分かってくれればね、いいんだけど。なかなかそれがうまくいかないというか、と思いますけど。
インタビュー本人15
- 日頃インディアカという球技を楽しんでいる。診断を受ける前からやっているので、チームの人たちは気心が知れている。それほどハードではないので長く続けられそうだ
- 診断当時のことはもう忘れかけているが、嫌なことは嫌だったし、悔しかったこともあった。昔からの友達は今も遊びに誘ってくれるので、今はこういうものだと受け止めている
- 一人で出掛けて迷ったことがあるので、今は必ずかわいいお母ちゃんと出掛けるようにしている。文字も読むことはできるが書くのは苦手になってきた
- 認知症になるのは本当に苦しく、自分に対して怒(おこ)れてくる*こともある。ただ、最近はそういうことが減ってきた。同じ立場の仲間と話す機会が増えたからかもしれない
- 初めのうちは言いたいことはいっぱいあっても、外に心を開くことが難しかった。でもいったん外に出て周りの人と仲良くなれたら、認知症になっても人生が楽しくなる