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聖路加国際大学小児看護学教室教授
家族看護、小児看護を専門として、臨床では小児がんや医療的ケアなどの疾患のあるお子さんと家族に出会ってきた。研究では、慢性疾患を持つお子さんと家族が子どもから大人へと移行することへの支援をテーマにしている。現在は大学での講義や研究のほか、小児科クリニックでの臨床にも携わっている。
語りの内容
ーー家の中で医療的ケアを行うには、どういうことがあるんでしょうか。
家庭で(医療的ケアを)するというのは、病院や施設で(医療者に囲まれて)やるのとは違いますよね。生活全体(を家族が担うこと)になると思います。
例えば経管栄養をするっていうふうになった時に、経管栄養のボトル作ってつなげばいいのかっていうと、そうではないですよね。
経管栄養をする時のお子さんの体位を、ご家族は考えながら、経管栄養をする前の3時間は反対側の体位で休ませてあげたいなと(考えながら)してるわけなので。
つなぐ3分、5分だけでなく、ずっと生活がつながる中で医療的ケアがあるということを、支援する側(である医療者や相談員)もよく分かって医療的ケアを生活に取り入れていかないといけないのかなと思います。
おむつ交換でもそうですし、痰の吸引、経管栄養、全てが生活と共にどういうふうにあるのかっていうことが、家の中で医療的ケアをするっていうことなんだと思います。
ーー家の中 で医療的ケアを、医療の素人である自分が行うことに、多くのお父さんお母さんが不安を持っていると聞くんですけれども、その点についてはどうでしょうか。
本当にそうですね。負担という言葉が合うかと思うんですけれども、大変なことだと思います。
これをどうしたらいいかということはすごく大きな課題で、すぐに答え出ないんです。
一方で、お子さんの生活、それからご家族の生活を、ご家族らしく過ごしていくっていう中に、医療的ケアを組み込むことができれば、それはすごくいいのかなと思います。
けれども、今のところ生活に組み込みたいといっても、他のことを犠牲にしなきゃいけない、あるいはサポートがない、自分1人でやってる、どこに相談すればいいのか分からない、そういう状態がある。
ご家族が安心して自分たちらしく生活するために何が必要なのかっていうのは、このプロジェクトのインタビューの中でもいっぱい出てきてますし、そこに耳を傾けることがこれから重要になると思います。
ーー医療的ケアがなくなるタイミングっていうのもあるんでしょうか。
医療的ケアを始めたときの理由がなくなれば、医療的ケアは必要なくなります。今は飲み込みが上手にいかないお子さんが、嚥下、飲み込みの機能が上手になったら経管栄養はやらなくなるかもしれませんし、空気の通り道が成長とともに丈夫になって強くなって、もう(呼吸が)できるよとなれば、人工呼吸は必要なくなることもあります。
一方で、その状態を長く持ちながら医療的ケアと共にお暮らしになるお子さんもいます。
どんな場合があるかは、そのお子さんお子さんで変わってくると思うんですけれども、時々に相談したり、もう要らないのかな、(まだ)要るのかな、を検討しながら、医療的ケアと共に暮らす形を作っていけるといいのかなと思います。
小児看護学・小林京子さん
- 尿道から膀胱に直接管を通す導尿には、清潔な操作が必要である。訓練して中学生くらいから自力で導尿をできる子どももいる
- 腸に穴をあけ袋(パウチ)をつけて便を排出するストーマは、子どもでは素早いパウチ交換、ずれない工夫を行う必要がある
- 経口で栄養を摂取することが難しい場合に、鼻から胃や腸にチューブを通したり、胃に直接穴をあけて胃ろうを作ったりする
- 肺に酸素の供給が十分にいかない場合に人工呼吸器が必要となる。酸素が届いているか、血中酸素濃度を気にしながらの生活となる
- なんらかの事情で気管内を空気がうまく通らず呼吸困難となる場合に、気管を切開する。切開後は気管内のたんの吸引をし、空気の通り道を確保する必要がある
- 在宅で医療的ケアを行う家族は、生活の中で様々なケアがスムーズにできるよう気を配る。親たちの負担を軽減するサポートが必要だ
- 人工呼吸器、胃ろう、経鼻経管栄養、痰の吸引のような通常病院で行われるようなケアを日常生活でも必要とするお子さんのことです