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聖路加国際大学小児看護学教室教授

家族看護、小児看護を専門として、臨床では小児がんや医療的ケアなどの疾患のあるお子さんと家族に出会ってきた。研究では、慢性疾患を持つお子さんと家族が子どもから大人へと移行することへの支援をテーマにしている。現在は大学での講義や研究のほか、小児科クリニックでの臨床にも携わっている。

語りの内容

ーー気管切開はどういうもので、どんな種類があるのか教えてください。

気管切開って、文字どおり気管を切開するっていう、そういう術式、手技のことを指します。
気管切開をなぜするか、それから(その)種類なんですけれども。

ここ、喉を見ますと、喉仏がある、ちょっと固いところ、ここが気管に当たっています。
人間の体は、この気管の後ろに食道があるわけなんです。
気管というのは空気の通り道で、その後ろにあるのが食べ物の通り道、お水とか唾液とか、お鼻がいっぱい出た時にもお鼻がそちらのほうに行ったりします。

気管切開は、気道が通りにくい(場合にします)。
赤ちゃんだったり、障害があったりする時に、気管がすごく柔らかく、空気を通そうとすると、ぺちゃって、ゴムのチューブみたいになっているの(気管)が閉じてしまって、酸素がうまく通っていかない。
そういった時に、ここを切ってチューブを入れると通り道ができる、ということだと思っていただけるとよいかなと思います。

気管切開の中にも、チューブを留置する、置いておくと意味なんですけれども、留置しておくタイプと、あるいは、しばらくの間入れるんだけれども、その後必要なくなったら取りましょうという気管切開もあります。
手術だったり、事故(にあって重篤な状況だったり)で、一時的に(気管を)切って(呼吸を確保し)、呼吸が治ってきたら閉じる場合もあるということです。

ーー気管切開に関する医療的ケアはどういうものがあるんですか。

1つには、空気の通り道を作っているものですので、そこがうまく通るようにケアするのが一番の大きな目標になると思います。
例えば人工呼吸器を使っているなら、ここ(喉)に空けた穴に入っているチューブと人工呼吸器という機械のチューブとをつなげて、空気がうまく入っていくのを助けるために、人工呼吸器の管理をする。
(人工呼吸器につながる)チューブの中に水が(入って)ないかなとか、通り道がうまくいってるかなとか、そこを管理する必要があります。

もう1つは、通り道を塞いじゃうものがどうしても人間にはあって、それが痰や唾液です。私たちだって風邪ひいた時に、痰がいっぱいだと息がしにくいなと感じると思うんです。
その痰を取ってあげる吸引が、定期的、あるいは不定期に必要になります。
気管切開をしてチューブを入れていますと、異物が入っているので、それによって喉の中、気管の中が刺激されて痰が作られやすいこともあるんです。
ですから吸引が割と頻回に生じることがあります。

ーー医療的ケアを、医療者ではない人が行うことで、一番怖いこと、注意しなければいけないことはなんですか。

空気の通り道が詰まらないようにして、うまく酸素がいき、呼吸が楽であるっていうことを目指したいわけなんですね。
医療者が例えば人工呼吸器で気管切開されている患者さんを診る時にも、やっぱりすごく緊張します。外れてて酸素がうまく(肺に)行かなかったらどうしようということもあります。
吸引をする行為、技術そのものも緊張するところかなと思います。

チューブを喉の中に入れて、吸っていくわけですので、体の中にチューブを入れるって普通はやらないことですよね。そこはすごく緊張します。
人工呼吸器とつながっている場合には、それを外して吸引するとなると、その間、酸素、空気が行かないことになりますね。
酸素の途絶えた時間の中で素早くやりたいので、かなり緊張するところになります。

ーー気管切開をしていると声が出せなくなると聞いたんですけれども、それはどういうことなんでしょうか。

気管切開したりチューブを入れたりすると声が出なくなることがあります。
違う場合もあるので後でご説明しますけれども、気管の通り道と食べ物の通り道っていう話を先ほどしました。
気管があって空気が入る、その後ろに食道があって食べ物が通じるっていうふうになっています。入り口は1つで、お口を開けると穴は1つになっています。

じゃあ空気の通り道と食べ物の通り道、どういうふうに分けてるかというと、物を飲み込む時に喉の付け根にある喉頭蓋(こうとうがい)っていう蓋があって、ごくんと飲み込むとそれがぴたっと閉じて、気管のほうには食べ物が行かないようになってるんです。

そういういい仕組みがあるんですけれども、それと同じように喉の付け根に、声帯が付いています。それで声帯を震わせると、(空気が)声として出ていくっていうふうになるんです。
ところが気管を切開してここ(喉)にチューブを入れると、気管切開からこの口までの間は、実質、空気がツーツーと通らない。

声を出す時には、下から空気を吐く時にそれが声帯を震わせて声になるわけなんですけど、ここ(気管切開したところ)でその出していくもの(空気)が止まっちゃって、ここ(チューブ)から空気が出ていくので、声帯を震わせることができないんです。
なので、声にならないというふうになってます。

今、いろんなものが開発されていて、チューブの中でも、おしゃべりができるように上がちょっと開いてるっていうものもあるんです。そういうチューブを使いますと、喉の外の空気の出口にはバルブという蓋をして、そして喉の中のチューブの上のほうには穴が開いていて、空気が出た時に声帯を震わすことができるのでお声が出るという仕組みのチューブもあります(スピーチカニューレという)。

どのチューブを使うのがいいのかは、そのお子さんごとの呼吸の状態、全体の状態によっても変わりますので、これをしたいと言ってもそうできない場合もあります。
ですが、仕組みは、そういうことになっています。

私は: です。

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