発話でのコミュニケーションが困難な重症心身障害児も、目や舌、指先などわずかな動きでその気持ちを発し、親や周囲のケアにあたる人はそのわずかな動きから気持ちを汲み取ってコミュニケーションをとろうとしていると言います。
声が出せない子の中には、音の出るベルや機器を使って誰かを呼んだり、手話によって気持ちを伝えたりすることができる子もいます。
さらに、視線入力装置やハンズフリー人工喉頭などの技術の進展によって、より高度な表現が可能になっています。それらの技術を使うことで社会参加の可能性を拡げ、将来的に親から離れて生活することを見据えたコミュニケーション方法に挑戦する子たちもいます。
表情や指先から感じ取る
この方のお子さんは嬉しいときは笑い、嫌なことがあれば顔をしかめ、表情で気持ちを伝えてくるそうです。
発話や手話による返答はなくても、親からとにかくたくさん話しかけるようにしているといいます。
次の方のお子さんは事故で重症心身障害を負い、退院当初は意識もない状態でしたが、現在は表情が出てきて気持ちを表現してくれると言います。
手や指先のわずかな動きから意思や気持ちを読み取るコミュニケーション法を練習して、お子さんの気持ちを読み取っているという方もいました。コミュニケーションが少しでもとれるようになったことでお子さんの気持ちが安定したように感じると言います。
次の方のお子さんは、親を驚かせるようないたずらをしてくるそうです。
ケアについての伝え方
医療的ケアが日常生活で必要であることについて子どもたちはどのように受け止めているのか。ケアのタイミングや必要性について、親やケアにあたる専門家がお子さんに対し、どのように伝えているのかについて伺いました。
この方のお子さんは1歳とまだ幼く、言葉の理解は十分ではないため、ケアについて本人にわかる言葉で、大事なことだと優しく伝えていると言います。
普段、栄養は胃ろうから注入しており、今のところ食べる経験が少ないのですが、近く口から食べられるように手術をする予定で、食べることへの興味を持つよう働きかけているそうです。
次の方のお子さんは、目が見えず難聴もあるため、ケアを行う際にはその部分に手を触れて合図する形でコミュニケーションをとっています。
手話や絵カードの利用
お子さんが小さくてデジタル機器をまだ使えない段階では、日常生活の中でマカトン(注1)と呼ばれるかんたんな手話を使って会話したり、自作の絵カードなどを使ってコミュニケーションをとったりしたというお話もありました。
もっと小さいお子さんだと、指さしや手をパチパチするという合図も使っています。
注1)会話、言語、学習上の障害がある人々によって使用される手話のコミュニケーションのシステム
次の方のお子さんは小さい頃から声を出すことが困難なため、家の中で音で合図したり、指差しでコミュニケーションをとったりする工夫をしたそうです。
次の方のお子さんはマカトンと呼ばれる簡単な手話を使ってお話ができます。
コミュニケーション支援機器の活用
音声を録音しボタンを押すと再生するスイッチや、iPadにアイコンが並んでいて、そのアイコンを指や視線で選択することで相手に意思を伝える方法があります。
学校で取り組んでいたり、家でも取り入れているご家庭があるようです。
次の方は、本人の声や好みの声を出せるハンズフリーの人工喉頭が開発中であることを新聞で知り、息子に使わせたいと開発者に問い合わせてプロジェクトに参加したそうです。
iPadにパワーポイントと原稿を打ち込み、人工呼吸器ユーザーのスピーチコンテストに出場したお子さんもいました。
2023年7月公開
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